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第一話 そんな話は聞いてない!

初投稿ですが、暖かい目で見ていただけると幸いです。


「ハルト、いつか迎えにきて……!」


「あぁ、必ず助けてやるよ!」




----------




「懐かしい夢だな…。」




俺の名前はハルト。


名字なんてものはない、至って普通のハルトだ。


一応前世の記憶というものも存在するが、特に有用な知識は覚えていなかったようだ。


至って普通の村の農家の家に生まれ、15になってから街に出てきた一般人だ。


特に逸脱したところもなく、いわゆる村人Aといったところだろう。


いや、ある意味普通じゃないものもあるのだが……




「……っと、もうこんな時間か!そろそろ仕込みをしないとな!」




----------




「おぅ!遅かったじゃねぇか。寝坊か?」


「ははは……お恥ずかしながら」


「どうせまた深夜のバイトだろ?ほら、お前もさっさと仕込みを手伝え」




階段を降りると、そこには熊___もとい、亭主のグレゴリウス。またの名を、おやっさんがいた。


ここは「黄の蜜熊亭」。


宿屋であり、食堂。そして俺の職場でもある。




「ハル坊、ハニーエール3つ!」


「はい!エール3つ!」


「ハルト、こっちは野菜炒め2人前ね!」


「はい!野菜炒め2つ!」




ここは、宿屋であると同時に食堂も兼ねている。


夜にはタダ同然の値段で提供される日替わり定食があることから、駆け出しの冒険者に人気だ。




だが、肝心の料理人であるおやっさんは料理が壊滅的に下手だった。


元々は奥さんが料理を作ってたらしいが、七年前に離婚。


結局、宿は続けることにしたものの、食堂の方はもはや営業停止にまで追い込まれる羽目になっていた。


もっとも、こんな捨て値で料理を提供していることもあって、過去の料理は大雑把なものが多かった。


だが間違ってもステーキなど焼こうものなら、建物ごと燃やし尽くしかねないこの亭主は、碌に料理ができない。否、作らせてはならない。食えるものを作れれば万々歳である。


そこで、俺の出番だ。




「ハルト!そろそろ頼む!」


「えぇ!?おやっさん、早くないか!?」


「俺には荷が重い。後は託したぜ!」




そう言うとおやっさんはオーク肉を切りに調理場に向かった。


調理はできないのに、肉の解体はできるのである。不思議なものだ。




「まったく、困ったもんだ。」




そして俺は調理場へ立つ。


しかし、いかにおやっさんが料理下手であったとしても、俺の料理の腕は人並みだ。


ならばどうするか___




(今日も頼むよ?)

〔了解___データベースより【宮廷料理人 ペデロ】のデータを引用___ 〕




自分より料理が上手い相手を()()る事で、絶品の料理を作る!




〔完了しました。スキル《ものまね》を使用します。〕




そして、俺は()になった。




----------




「ハル坊!炒飯2つ!」

「あいよ、炒飯2つ。おまちど」


「早っ!?」




当然だ。


料理を頼まれて作り始めるような奴は精々二流がいいとこさ。


かつては宮廷料理人にまで上り詰めたこの俺が、そんな間抜け晒すわけがねぇ。




〔データベースより参照。

【宮廷料理人 ペデロ】

かつて王国の宮廷料理長にまで上り詰めた、料理の鉄人。しかしスラム出身であったことから宮廷内で圧力をうけ、自主退職。現在はスラムで食堂を開いている。彼の料理に惚れた貴族は数知れず、彼の食堂はスラムにありながら行列の絶えない人気店である。

また、彼は提供すべき料理を見抜くスキル《読心》を持っており、料理の提供スピードは常軌を逸脱している。〕


(……スープ、フライ、ロールキャベツ、ステーキ、サラダ…… )




「ハルト、コーンポタージュ 」

「はいよ」


「こっちはアジフライ」

「できてるよ」


「ロールキャベツ!」

「ほいロールキャベツ」




「なぁ、あいつヤバくね?」

「あぁ。まるでペデロみてーだ」

「おい見てみろよ。あそこに座ってるの、領主様だぜ?」




その後も、俺は料理を作り続けた。




「ハルト、会計頼む!」

「ほらよ、釣り銭の銅貨3枚だ」




----------



「ふぅ、今日もひとまずは乗り切れたか……」

「いや、おやっさんは何もしてないでしょ」




その後、俺は“ペデロ”から“ハルト”へ戻った。


3年前に拾ってもらった恩はあるからいいが、おやっさんも大概ダメな大人である。




「それにしても、お前のスキルってホント凄いよな」


「ははは……」




そう、これが俺のスキル《ものまね》。


見た相手の動きをトレースし、相手の技術を模倣するスキルだ。


だがその特性上、オリジナルのスキルには及ぶことがなく、おまけに一人しかトレースすることができない。


俗に言う、器用貧乏に近いスキルだ。




「……じゃあ、今日のバイトに行ってきます。」


「おぅ、気をつけてな」




そう言って、俺は「黄の蜜熊亭」を出た。


まぁおやっさんにはバイトと言ったものの、用は別の所にある。


そして俺は街の外に出た。




そして着いたのは、木が一本生えた小高い丘。


用とは言ったものの、この木の下で瞑想をするだけ。


つまりは普段の習慣である。




迷信ではあるが、瞑想を繰り返せば、魔力値が向上することがあるらしい。


こんな事を繰り返すようになったのも、3年前のあの日からだ。




( ……モナ……!)




----------




3年前の選定の日、幼馴染のモナは神官に連れて行かれた。


大人たちは栄誉な事だ、誇らしい限りだと口々に言った。


でも、俺は知っていた。


あいつは一人泣いていた。


誰もいない木陰の下で、一人泣いていた。


違うだろ。


お前らが誇っているその光の影で、一人の女の子が泣いている


栄誉がなんだ、誇りがなんだ。


その重圧で一人の女の子が傷ついてる。


そのことに、誰も気づいていない。




その後モナは、神官に連れられて何処かに行ってしまった。


俺は、何もすることができなかった。


神官に連れていかれるモナを見ながら、俺はただ、その様子を眺めることしかできなかった。


けれど、俺の前を去る前にモナは言った。


『ハルト、いつか迎えにきて……!』


それは、モナと俺の、最後の約束。


どこにいるか、生きているかもわからないあいつとの、たった一つの約束だった。


『あぁ、必ず助けてやるよ!』




(あぁ、そうだ。たとえ何年かかったとしても、俺はモナを助ける。それがあいつとの……モナとの……


「約束だ!」


その時。


〔条件の達成を確認しました。スキル《ものまね》はスキル《模倣》に変化しました。〕


頭の中に、声が響いた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

???の異世界常識コーナー


この世界の硬貨は10進法で表される。

日本円に換算すると

  石貨1枚  0.01円

 青銅貨1枚  0.1円

大青銅貨1枚  1円

  銅貨1枚  10円

 大銅貨1枚  100円

  銀貨1枚  1000円

 大銀貨1枚  1万円

  金貨1枚  10万円

 大金貨1枚  100万円

 魔銀貨1枚  1000万円

大魔銀貨1枚  1億円

 神金貨1枚  10億円

大神金貨1枚  100億円

となる。

これらの硬貨はは“ゴルド“という単位で統一されているが、庶民の間ではあまり知られていない。

銅貨1枚=1ゴルド。つまり1ゴルド=10円である。

またこの世界の硬貨は、“商売の神”が広めたものであり、鋳造、廃棄は全て教会が行っている。

違法に鋳造した硬貨は天罰と破産を招くとして、商売人から忌み嫌われている。

そのため、ゴルド硬貨は全ての国で使うことができ、世界で最も信頼されている硬貨であるとされている。




毎日更新できるよう頑張ります。

また今回のように、本文の最後の方に世界観設定のようなものがついている場合もありますので、ぜひ参考にしてください。

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