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プロローグ 隣国へのスパイ命令

新たに連載を始めました。

よろしくお願いします。


(ああ、終わったな……)


俺はこの後訪れる修羅場を悟り、天を仰いだ。

今から逃げ出すことなど出来るはずも無い。

数瞬の後にその瞬間は訪れた。

別々の俺に触れる三つの感覚がビクリと反応したのが分かった。


「え? シドさんが三人?」


「むむ? これはボクも予想外だね」


「なぁ、シド。当然私達に納得のいく説明をしてくれるんだろうなぁ、えぇ?」


俺はみんなの顔を見て、もうどうしようも無い状況まで来てしまったことを悟る。

納得の行く説明など到底出来るはずもない。

俺は彼女達を騙した。その事実に全く言い訳の余地は無い。


何処か諦めにも似た感情を抱いた俺は現実逃避気味に、何故このようなことになったのか、少し記憶を遡ってみることにした。



◇◆◇


「ネルエ陛下。お呼びに預かり参上いたしました」


「シド。よく来てくれた。顔を上げてくれ」


「はっ」


俺はセントエル王国の玉座の前で傅いていた。

目の前の玉座に座っているのはこのセントエル王国の王様であるネルエ陛下だ。

ネルエ陛下は言葉こそ落ち着いているものの、その表情を見る限りどうやら穏やかな状態では無いらしい。

俺は額に巻いたハチマキ越しにネルエ陛下を見上げる。


「シド、お主を呼んだのは他でもない。お主の力を借りなければならない事態になった」


「はっ。なんなりとお申し付けください」


余程マズイ事態なのだろう。

その事実を認めたくないという風に視線を彷徨わせている。


「実は隣国が攻めて来るかもしれないという噂が立っておる」


このセントエル王国は三つの国と隣接している。

そのどれもがこの国よりも大きい。

仮にどこから攻められても危険だと言わざるを得ない。


「その隣国、というのは……」


俺が頭の中に三つの候補を浮かべながら尋ねる。


「全部だ」


「ぜ、全部ですか!?」


俺は驚きの声をあげながら、この国の現状を顧みる。

確かにこのセントエル王国には狙われる理由がないわけでは無い。

この国にある、「とあるモノ」が目的なのだとしたら、納得は出来る。

だが隣国との関係は良好なはずだ。


「我とて嘘だと信じたい。だが、その噂の真実は確かめなければならん」


なるほど。

ここに来て何故俺が呼ばれたのか理解した。


「それでは私の役割は隣国へのスパイということですね」


「話が早くて助かる」


この話が俺に持ちかけられたのは俺が持っている能力によるところが大きい。


──分身能力。

俺は自身の分身を生み出すことが出来る。

生み出せる分身は四体。

本体を合わせると五体動かせることになる。

この分身能力を使って、他国の状況を把握しろということだろう。


離れた場所のことを伝える技術は今の所開発されていない。

それを思えば、分身を通じて疑似的に長距離の連絡を可能とする俺の能力は諜報などには適しているという訳だ。


ネルエ陛下は慎重なところがあるからな。

噂が立ったのであれば、確かめなければ安心できないだろう。


今回の任務は間違いなく大きな危険を伴う。

他国の情報を握るためには出来るだけ国の奥深くへと潜っていかなければならない。

もしスパイであることがバレたら当然タダではすまないだろう。


だが、この話が俺に来たということはそれだけネルエ陛下に信頼され始めているということでもある。

まだ、数年しかネルエ陛下には仕えていないが、一定以上の信頼は得られ始めたと考えて良い。

俺は頭を垂れると恭しく告げる。


「万事、了解いたしました。必ずやネルエ陛下に納得のいく情報を持ち帰って参りましょう」



俺はそこから幾つか作戦に必要なモノをネルエ陛下に告げ、それを頂いてから行動を開始した。




隣国へのスパイを命じられたシド。

シドはネルエ陛下の望みを満たすため、隣国へと旅立つ。


次回、隣国への潜入。お楽しみに。

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