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JUMA  作者: 采間光
2/2

受魔開印

 こんばんは。今週末に投稿すると言っておきながら、筆が進んでしまい投稿を早めました。

 皆さんも思っていたよりも、あらすんなり進んだわ!って言うこれでもかって言う絶好調の時ありませんか?

 次の日に響くんですよね案外。

話が脱線してしまいましたが、『JUMA』をお読み頂きありがとうございます。

 早め早めの投稿を頑張りますので、初芽君の応援を宜しくお願いします。

  第一章 降界篇  受魔開印




 全ての始まりはあの夏。


 「…今年の夏は梅雨が長続きしそうという事で、今週末までがお天気日和になりそうです。但し局地的な雨には注意して下さい!ではまた来週!」


ウィーーーーン ウィーーン


「……。 ッバリ… ボリッ…。」


「ちょっと!!あんたそこ邪魔! 掃除機かけてるの見えないわけ?」


「あ…。うっせー。」


「あんた!親に向かってうっせーは無いでしょ!いい加減反抗期は卒業しなさいよ! 仏様の前でよくそんな事言えるわね! 明日から学校なんだから課題でもやったらどうなのよ!」



綺麗好きの母親は一日中掃除機片手に歩いている。お掃除ロボットっでも買ったらいいと思う。


「んったく! うっせー。部屋行きゃいいんだろいや行きゃ…。」


「これだからいつまでもガキなのよ。あーやだやだ。忙しいのに!」


ウィーーーーンウィーーン


ドスッドスッドスッ……バタンッ!

 

 そうここは俺ん家。 まー所謂、寺です。 地元では違った意味で有名な別名。蚊取の寺。珠安寺(じゅあんじ)

 坊主ぼろ儲けなんかしてる様な寺じゃ無いんで、忙しいとか言う母親の言葉が信じられません。

 お掃除ロボットだって機能しないくらいに暇なんです。


 そして俺、珠倉初芽(すずくらはじめ)

高校2年は一様、跡取りです。

 でもやりたい事も夢も特に無いから継いでやってもいいかなって思ってるけど、問題があって。

 うちのじーちゃん。珠倉千秋(すずくらせんしゅう)、現住職。こいつが癖者で……。


 「寺の仕事はやりたい事がないからやるとか言う、生半可な気合いで務まる仕事ではない!お前になんぞ継がせん!」

ってまー俺には継がせる気はまず無い。

 

「まっこんなボロ寺潰れたところで困る人間なんか居ねーけど。」

 とりあえず将来的にはサラリーマンになると思ってる。


「暇だからマッキーんとこ行くか〜」

 

 男は財布、スマホと家鍵だけ。余計なもん持つのはダサいと思う。 


「な〜!おかー!マッキーんとこ行ってくるわ!」


「………え!?…何だって〜?よく聞こえなーい!」


「マッキーのとこ行くわ!」


「分かったけど、夕飯には帰ってきてよね!?今日はカレーだからね!」


「あーい!!」


ッバタン…。


 扉がしまる。



 俺の家は坂の中腹にあって、下った先の公園を曲がった2軒目がマッキーの家。

 マッキー。こいつは牧直春(マキナオハル)。幼稚園の頃からの付き合いだ。高校まで同じで腐れ縁ってところ。


 ピンポーーーン………。


 ピンピンポーーーーン。


 ガチャッ!


「よっ! マッキー! 早く起きろよ! 釣り行くぞ!釣り!」


「初芽。マジで… 起こすなよ。日曜だぞ。」

スウェットにボサ髪メガネ。

悔しいけど何してもイケて見えるこいつは、連れてるだけでセレブ犬を連れ回す感覚に陥る。

っと言うのは冗談で。


 「マジここだけの話。じーちゃんが新しいの隠してたから、俺!仕入れてきたわ! 見ろよこれ!使いたいやつは後1分で準備しろ!!!」


「おい!マジかよ!それどう見ても!高いやつじゃん! 今言ったからな? マジで貸せよな!!!」


バタバタバタバタッ………。


 「ははは!マッキーちょろ過ぎだろ!」


………


 直春の愛車のレッドアイアン(ママチャリ)を飛ばして10分くらいの所にある地元の川。鴉川(あがわ)がもっぱら俺らの釣り場だ。

 




…ピロン。


 「なー初芽! 全然使えねーじゃんそれ。5時間粘ってこれかよー。 俺そろそろ帰るわー。今日オヤジの誕生日だから、うららがケーキ用意してるらしいわ。」


「おい!マジかよ!!やっぱお前シスコンかよ!」


 うららは直春の3つ下の妹だ。

シスコン呼ばわりは嫌だと言いながらも、満更でもないのだから面白い。


「ちげーよ。でもわりぃ。うららの機嫌損ねたらマジでどうなるか知りたくもねーよ。」

 

 「あぁ分かったから、早く行けよ!」


「…にしても初芽、お前また蚊に刺されすぎだろ。蚊を祀ってる寺なのになっ!!!」


「知るかよ!! もう早く帰れよ!」

 そうして俺は、直春が帰った後も釣りをしていた。


 2時間は経っただろうか。


 ちょっと寝てたっぽい…。 待てよ…。

おい。竿ごと無くなってる! どういうことだよ!


 「やべーよ!じーちゃんの特級品もねーじゃんか! 殺されちまう!!!」


  俺は探し続けた。

ひたすら闇雲に、何か別のものを探すかの様に。


 「あーあ。 とーさんが生きてたらなんて言ったかな……。」


[初芽回想]


「おい。初芽。お前、馬鹿みたいに濡れてるじゃないか! 風邪引くぞ! 川に引き摺り込まれるなんてカッパにでも持ってかれたんだな! はっはっはっ!」


[現実]


 豪快な人だった。

この人は世界一笑顔が似合う、太陽みたいなだった。


「とーさん…。」


俺のオヤジ。明日が命日。すっかり忘れてた。


 俺が小2の時に死んだ。死因は水死だった。 

 釣り好きのオヤジが夜の堤防から足を滑らせたのが原因だと警察は言ったけど、ガキだった俺には納得がいかなくて、泣いて訴えることしかこの現実を否定する方法が見つからなかった。


 俺はだからあの日以来、海には行かない。行けなくなった。 

 またオヤジに会いたくなってしまうから。


「あーもう諦めだ!! じーちゃんには謝るとして、帰りにでもとーさんの墓参りでもして帰るかなっと…。」

  人は近くにあった物が一度離れてしまうと、忘れやすくなる物だ。 初芽は虚空を見つめる。




「はぁーはぁ……。やっと着いた。」

寺より少し上がったところにある墓地に着く。

空の闇が近づく夕刻6時前。 

墓石を鼠色に染め始める。

 俺はスタスタと道を行く。そこには『珠倉家』と書かれた一際黒光りする墓石が立つ。

 側にある寂れたビスケット缶から線香とマッチを取り出す。


「久しぶりに来るとこんなに湿気ってるもんなんかよ…。 ごめん申し訳ないないわ。おとー。とりあえず火は点かないけど線香だけはせめて…。」

瞼に波が浮かぶ。



 命日は親戚が知人達が来る。そういう時に限って故人の思い出話を俺らにするが、そんな時が俺は辛い。


 悲しいのに相手が思い出話で笑顔を垣間見せるからだ。その笑顔に応えなければいけなくなる。

 (いやだ。いやだ。辛い。どれだけの時間が流れたって整理できないこの頭をどうすりゃいいんだ? 明日どんな顔を作ればいいんだ? 地獄の底で俺に与えるこの罰について教えてくれよ!今すぐ理解させてくれよ!!!)


【ククッ…。 シリタイカァ?】


初芽ら静寂を纏う辺りを見回す。


「誰だよ…。 出てこいよ。またじーちゃんだな。釣り道具の件は悪かったって…。」


【ジーチャン…。 アァ…。センシュウノコトカァ…ククッ。ツマラントシヨリニナッチマッタモンダ。 アイツモモウスコシツカエタノニナァ…。】


轟く声の主は見当たらない。


「何のことだよ!いい加減にしろよ!俺は帰るからな! 墓にイタズラでもしてみろ! あそこのカメラに映ってんだからな!じゃあな!」

 

 うちの寺は墓への近頃の墓への悪戯防止に、ダミーカメラを置いている。


 【ナラバ、オシエテヤロウカァ…ククッ。 ソノタメニ、オマエハナニヲサシダス? シンジツヲシリタインダロゥ? チチオヤノシノシンソウヲナァ…クククッ。 】


「馬鹿にするのも大概にしろよ! 息子の俺が知らないのをなぜお前が知ってるっていうんだよ! 真実を知るためなら俺の全てだって掛けられるさ!!! コソコソしてないで出てこいよっ!!」


 そして先程までの声が静まった。

と同時に声の主が閑寂に話す


 【ナラバユビキリヲシヨウ…。ヤクソクダモンナァ。 ウソツイタラ、ハリセンボンノマス……ダロゥ?ククククッ…。】


 「分かったよ。何なんだよ急に幼稚な事言い出すし。 ほら。いい加減、面出せよ!」


 【ハイヨォ…。ジャアオマエガシタニコイ…ククッ…。 ホラシタダヨォ。シタァ……ククククッ…。】


初芽は下を見る、そこには謎の男が手と首から上を出して足を掴んでいた。

 男がにやりとした瞬間に足元から地面の暗黒に吸い込まれた。 


 


 冷たい。背中や頭が冷たい。手足の感覚が無い。ふと目を覚ます。

薄暗く先が見えないこの空間はどこなのだろうかという気持ちと、行き場の失った怒りに駆られる。


「ったく……何なんだよ。」


「ここ…何処だよ…何も見えねぇーし…。」


「おーい…誰か居るかー? 助けてくれ!」


 『………………。』


「待てよ。……この鎖なんだよ! 動けねぇっ!」


【クククッ……イマノオマエノチカラジャ、ハズセナイ…。】


この声は!!!


暗闇から出てくるその姿は最早、闇との境がないように思えた。

 長い手足に青白く、切長の目をしている。

人と変わらぬ風貌をしてはいるが、はっきりと分かるのは全身から妖気なのだろうか。何か紫のかかった物を出している。



 【ドウモ。 コノスガタデハ、ハジメマシテ。オレハヴィカ。 オマエノオヤジニツイテイタ、アクマダァ………。】

 

 明らかに好意という仮面を被って話しかけてくる。

 

 どうして俺の父親を知っているんだ?

憑いていたとはどう言う事だ!?

 微塵も人を寄せ付けぬその涼しげな表情は、この世のものではないくらい近寄りがたい。 

 身体から出る恐怖を感じ取るかのように、余裕そうな態度でこちらを見下ろす。


 「早くこの鎖を外せ! お前のお遊びに付き合ってられないからな!」


 

 【ククククッ…ハズセルモノカ。 トキスデニオソシダァ。 オマエノノロイハ、モウハツドウシテイルンダヨォ…ククッ。】


【ノロイハナァ、シンショクヲシツヅケルンダァ…ククッ。 アットイウマニオマエナンゾ、オヤジニアエルゾォ…ククククッ!】


 ヴィカは恰も俺には洗濯の余地がないとでも言うかのように話を続ける。


 【ナゼ、ソノクサリガアカクヒカッテイルトオモゥ…? ククククッ。】


俺は今の今まで気がつかなかった!

何なんだこの色は!そして身体に焼き付くように痛い! 何なんだこの鎖は!


 【クク…コエモデヌダロゥ? コノノロイハオマエガハツドウサセタンダァ…クク。 コノクサリハナァオレノモノダァ。 ノロイノシンショクヲオサエテイル。 コイツガナケレバナァ、コノイタミハナンビャクバイニナルカナァ……ククククッ】


 完全にイカれてる! こいつ俺を見て楽しんでやがる! でも既に味わったことの無い、死を隣に感じる痛さだ! もう限界だ!!!


 「…じゃあさ。俺を助けるお前は俺の何なんだ。俺は信用できる相手じゃなけりゃ付き合わねぇ主義なんだ。こんなことして……俺になにを求めている!」


 悪魔はにやりとすると話し始めた。


 【ククククッ! イタイダロウカラ、テミジカニハナスゾォ。」



ヤツの話によると、昔に比べ平均寿命が高くなり、平和な世の中で死ぬ人間が減ったと言う。

 それにより天城界(てんじょうかい)に死者を送る機会が減った堕天師たちは、退屈しのぎに人間界へ試練と言う名の、事故、天災、病等を送り込むようになった。

 元々そんな物を送り込む能力など無い堕天師が、このように働くようになったのにはきっかけがあった。

 

 そもそも人間界へ試練を送る仕事は獄底界の主である葬鬼(そうき)という者であった。

 しかしある時、数百年に一度。俺ん家である珠安寺(じゅあんじ)の宴に参加していたところ、葬鬼が持っている『送悲の数珠(そうひのじゅず)』が何者かに弾かれ、世に飛び散った。

 その一部を葬鬼へ返さずに隠し持った天城界の主は、そのまま天城界へ珠を持ち帰り、珠の力を利用し始めた。 

 

 宴が明けた日、俺の先祖は片付けの為に宴の席があった部屋へと入る。

 すると、足元に青みがかった黒の珠が落ちていることに気がついた。 

 拾い上げるとその珠は急に浮かび、俺の先祖の心臓に吸い込まれていった。

 

 ただその後に、その先祖は葬鬼の代理を勤められる身体では無いことが分かった。

 彼は生まれつき病弱であった為、葬鬼の妖力が混じる珠の威力に耐えられず亡くなった。

 しかし彼がこの世を去った後も、血を受け継ぐ男子は時がくると代々譲り受けていくようになった。

 

 珠を受け継ぐと妖力の保持と威力向上、そしてその他の『送悲の数珠』を探す為に、葬鬼の(しもべ)であり、蚊の化身であるヴィカの家系が俺の先祖を代々守ってきたのだと。

 そして何よりこの血には、世の魂のバランスを保つ使命がある。 

今を生きる人々が無条件で堕天師に魂を奪われてはならない。

それを守る為に立ち向かわなければない。

この血に刻まれた呪いに。


 「いや。でもいつ俺が受け継いだんだ…?! 訳わかんねぇよ…!」


 【ナンデダロゥナァ…ククッ。 オマエノオヤジ、シンデルンダヨナァ?……ククククッ】


「……!?」


つづく

 まだまだ話が進んでおりませんが、ごゆるりとお楽しみ頂ければ幸いです。

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