21 その名は、名探偵エリちゃん!
エヴァートン家の降爵からひと月。
貴族界隈が大分ざわついたようだが、それも落ち着いた。
侯爵から子爵への降爵というかなり厳しい沙汰があったのだが、かの家は蓋を開けてみれば『然もありなん』と納得の惨状だったのだ。
ただこれらを主導していたのが王太子殿下であったので、殿下の治世は苛烈なものになるのでは……と恐れる声があったようだ。
後ろ暗い事、しなきゃいいだけなんだがな!
そしてロリコン疑惑のあった殿下だが、現在では『婚約者を溺愛されている』という噂に変わっている。
因みに、ロリコン疑惑は払拭しきれていない。
できあい……。出来合いではなく、溺愛。
前者にしか馴染みのない私にしては戸惑うばかりだが、殿下は溺れて流されるような方ではないと信じている。
……アフォガートは好きなんだけどな。溺れんなら、愛情じゃなくて、美味しいものに溺れたいな。殿下の愛情が嫌とかじゃないけども。溺れる程は要りませんからね、殿下。
* * *
王都の邸に押し込められ、ガッツリ監視がつけられているエヴァートン家の面々だが、すでに夫人がやらかして収監された。
それまでの浪費癖が抜けず、高級宝飾店へ出向き買い物をしようとしたのだが、その店の信用販売の額が既に上限だったらしい。
店ごとに顧客への売掛上限は変わるのだが、それは顧客の爵位でも大きく変わる。侯爵の時に利用できた額と、子爵で利用できる額では雲泥の差がある。
しかも、それまでの掛代金を、殆ど支払ってすらいなかったようだ。その額は、領地もない子爵には払いきれるようなものではなかったらしい。店としては、貸倒損失確定だ。
そりゃ、店もそんな客に売りたくない。
お売りできません、と夫人の買い物を拒んだ店員相手に、「今まで散々贔屓にしてきたでしょう!?」と暴れた。
……夫人も、ストレスが溜まってたんだろうなあ。自業自得だけど。
店内でヒスってるところを騎士に拘束され、店側が損害賠償を訴えてきた為、一時的に拘束された。しかしその後、夫人の衣服から、店の売り物であった筈の宝飾品がぽろぽろと出てきた。
万引きとか! クソしょぼい真似してんなよ! 元侯爵夫人だろうに!
しかして、無事に『窃盗』が追加され、沙汰が決まるまで収監となったのだ。
次に息子が、貴族子息が集まるクラブでやらかした。
高位貴族の集まっていたテーブルで「お前の席、ねーから」と言われ、ブチ切れた。いや、切れる筋合いねぇからな?
……つーか、ここんちの人間、すっげぇ人望ねぇわ……。
誰も手を差し伸べねえ。
むしろ泥舟と沈没はご免とばかりに、周囲から人が引いて行ってる。
逆に、良く今まで侯爵やってたな!?と驚くレベルだ。
夫人がやらかし、息子がやらかし、王都でも肩身が狭くなり過ぎた彼らは、王都の邸を手放してどこかの田舎に引っ込んだらしい。
当然、監視はついたままだ。
彼らの我がマクナガン家に対する逆恨みが凄まじく、彼らはマクナガン領への侵入禁止となっている。その辺は、監視の人たちが見ていてくれるらしい。
……ちゅうかウチ、何もしとらんですけど……。
ウチが利益を巻き上げた、とかって言ってたらしいけど、税収報告書を見た限り、そもそも『利益』が出てないじゃん、君んち。
もっと上手いやりようあんのに、人も土地も鉱山も、全部ほぼ放置じゃん!
なんかもう、関わっちゃヤバい人らだってのは、良く分かった。
殿下も「多分もう顔を見る事もないだろうから、彼らの事は忘れて大丈夫だよ」と仰ったので、有難くそうさせていただこう。
やらかし方が酷すぎたので、現在、爵位の剥奪の話も出ているらしい。
勝手にどんどん落ちてってるわ。怖いわ。
「エリザベス様ー! 返事が来ましたー!!」
朝、学校へ行くと、教室へ入るなりマリーさんが言った。
その手に手紙らしきものを持って、ぶんぶんと頭の上で大きく振り回している。
「おはようございます、マリーさん」
「あ! おはようございます! 殿下もおはようございます」
殿下相手には一応気を遣っているようで、しずしずと頭を下げている。
しかし君の大雑把さは、既に殿下もご存じだ! 遠慮なく、大雑把に生きてくれたまえ!
エヴァートン家の監視員からは、定期的に報告が上がって来る。
その報告の中に、一つ気になるものがあったのだ。
イングリッド嬢が、意味不明な呟きを漏らしている、と。
監視員はどうやら聞き取れなかったようなので、私はこっそりと、マクナガン公爵家自慢の謎経歴と謎特技を持つ使用人を派遣した。
彼は元他国の諜報員だ。人使い荒いし、給料安いし、やってらんねえ!と、侵入した我が家の庭の木の上で腐っていたので、「You、ウチで働きなよ」と雇ったのだ。今では毎日、美味しいパンを焼いてくれている。
パン職人が俺の天職だった!と言っているが、本人が幸せならそれでいいだろう。確かに、パン窯を手入れする彼の眼は、いつも生き生きしている。
彼の特徴は、とても耳が良い事。そして特技は読唇術。
目で見て、耳で聞いて、対象が何を話しているのかを正確に記録する。
……諜報員として、優秀なんだけどな。いや、パンも美味しいよ。でも、訳わからん具材を中に入れるのはやめてね。
その彼に、とりあえず何を言っているか分からなくても、音だけでも拾ってきてくれ、とお願いしてみた。
三日後、「こんな感じっすねー」と彼が持ってきてくれた報告書を、慌ててマリーさんにも見せたのだ。
数か国語を余裕で操る彼をしても『聞いた事のない言語。意味のある言語なのかも不明』と但し書きされているそれは、この世界では使用する者のない日本語だった。
発音を正確に拾ってくれたようだ。アクセントなども、細かく記号で書き入れられている。
ウチの使用人、マジで無駄に有能だな!
『なんでわたしがこんなめにあうのよ』
『げぇむじゃこんなえんでぃんぐなかったじゃない』
『なんでいべんとがおこらなかったの』
……などなど。
使用人には、これ以上の調査は不要として、礼を言って邸へ戻した。
他に何か気になる点はなかったか尋ねてみたのだが、彼は「あそこんち、パン窯の手入れがなってねーんすよ! あんなの、パンへの冒涜っすよ! 俺、喧嘩売られてんのかと思って、耐えんの大変だったんすよ!」と憤慨していた。
……うん。君はどこへ出しても恥ずかしくないパン職人だ。さあ、邸へ帰って思う存分パンを焼いてくれ。
グッバイ、パン職人。フォーエバー、パン職人。
報告書を見たマリーさんは、「イングリッド様も、転生者だったんですね……」と呆然と呟いていた。
そして私を見ると、我が意を得たりとでもいいたげな、えらく得意げな顔で笑った。
「ほらぁ! やっぱイングリッド様、ヒロインムーブしてたんじゃないですか!」
……いや、今もう、それいいから。
「でもそしたら私、ちょっとイングリッド様に訊いてみたい事があるんですけど……」
訊いてみたい事?
それはまあ、私もあるっちゃあるけど。でももう終わった事だから、どうでもいいけど。
何かね?と首を傾げると、マリーさんはえらく真剣な顔で言った。
「あのゲーム、何てタイトルだったかな……って」
そういや、君、前になんか言ってたね。何だっけ、えっと……。
「確か、漢字とカタカナのタイトルなんでしたっけ?」
「そうです、多分。……我ながら、何の中身もない情報ですよね?」
今更、そこ!?
「どうしてタイトルが気になるんですか?」
何かタイトルが、ゲームの鍵にでもなってるとか? 世界の秘密的な事が書かれてたとか?
「なんていうか、タイトルが全然ゲーム本編と関係なくて……。『タイトル詐欺か!?』て思った事だけ覚えてるんです。だから、逆に気になって気になって……」
薄々そうかなって思ってたけど、クッソ下らねえ理由だな!
マリーさん、『埋没系ヒロイン』じゃなくて、『脱力系ヒロイン』に改名しといて。
手紙とか書いても大丈夫ですかね?と言うので、恐らく問題ないはずだ、と返した。検閲される可能性もあるので、日本語などは使わない方がいいだろうとも伝えた。
お返事来たら、エリザベス様にもお教えしますね!とその日は別れたのだ。
そして、返事である。
ねえ、マリーさん……。出来れば、殿下居ないとこで、こっそり教えて欲しかったなぁぁ……。
返事とは何なのか、と質問しまくる殿下を何とかかわし、マリーさんからお借りした手紙を開いた。
人前で開くのは少し抵抗があったので、現在は城の自室である。マリナとエルザに頼んで人払いもしてもらってある。恐らく、暗部の人々も追っ払われている事だろう。
手紙の内容は、マリーさん曰く『八割がエリザベス様に対する恨み言』だそうだ。
開いて読んでみて、本当にその通りで溜息が出る。
『重要なとこだけ、赤マルしときましたから!』と得意げに言っていたが、三枚もある便箋の二枚目に、中々雑な赤マルで囲ってある箇所があった。『←ココ! 重要!』などとマリーさんの字で書かれている。
参考書か何かかな?
赤マルの中身は、タイトルと全攻略対象者の名前だった。
タイトルは『夢幻のフラワーガーデン』。
攻略対象は、以前にマリーさんから聞いていた六人に、現在殿下の側近をされているヘンドリック様を加えた七人だ。
成程。
以前にマリーさんからゲームの話を聞いた際の違和感。そして、このタイトル。
恐らくだが、何がどうなっているのかが、分かった。
それはゲーム通りの展開になどならない筈だ。
登場人物の性格も違う筈だ。
手紙を読む限り、イングリッド様はまだ、この世界を『ゲームの世界』と信じて疑っていない。
けれど既に、彼女にとって現実は相当厳しい。
夢の中に浸っている方が、幸せなのかもしれない。
* * *
殿下がお休みの日を狙って、私はマリーさんと話をする事にした。
我が家が一番安心なのだが、今日はそんな時間がないので、寮のマリーさんのお部屋にお邪魔する事にした。
「どうぞ、どうぞ! 昨日のうちに、お掃除しといたんです!」
えへへ、と笑いつつ、マリーさんは私を招き入れてくれた。
予想外にきちんと片付いた部屋で、窓のカーテンは淡い水色のチェック柄、ベッドカバーは花柄のパッチワークと女の子らしい。
実用重視な小物に溢れる私の部屋とは、相当な違いだ。
小物のセンスなんかには、女子力溢れてんのにな……。
なんて残念な子なのか、マリーさん……。
マリーさんは私に勉強机の椅子を薦めてくれ、自分はベッドに腰かけた。
「まずはこれ、ありがとうございました。読ませていただきました」
イングリッド様からの手紙を差し出すと、マリーさんはそれを受け取って自分の脇においた。
「どーでした? 何か気になる事、書いてありました?」
「ゲームのタイトルが『タイトル詐欺』と言ってましたよね? その話、詳しく聞かせてもらえますか?」
タイトルだけ見ると、ありふれたもののように見えるのだが。
イケメンとのキラキラ☆トキメキ青春ストーリーなら、このタイトルでもおかしな事はない。
「タイトルが『夢幻のフラワーガーデン』なんですけど、ストーリー中のどこにも『花園』とか『花畑』とか出てこないんですよ。唯一花が出てくるのがエルリックのシナリオで、しかも学園のしょっぼい花壇なんです。植わってるのもチューリップがちょろちょろくらいで……」
マリーさんは思い出すように、視線を上向けた。
「『花』がキーになるようなシナリオもありませんし、『何がフラワーガーデン!?』てSNSとかネットでも言われてました。あと『夢幻』も意味分かんないです。魔法とか、妖精とかが出てくる世界観でもないし、ファンタジー要素『ヨーロッパっぽい異世界』ってだけじゃないですか」
現実でもそうですけど、と言うマリーさんに、私は頷いた。
この世界には、魔法などない。妖精や魔物、神様などの概念はあっても、それらを『見た』人は居ない。
そういったスピリチュアルでファンタジーな存在は、こちらでも地球と扱われ方に大差はない。
「……以前マリーさんにお話を聞いてから考えてみたんですけど」
私が話し出すと、マリーさんはこちらに身を乗り出して来た。
「私たちが地球からここに転生したように、『ここから地球へ転生』する人も居るのではないでしょうか?」
「『異世界から現代転生』パターンですか!?」
「はい」
転生の仕組みなどは、全く分からない。
私の記憶には、『転生の神』などは居ない。どうしてこの世界に生まれたのかは、全く分からない。
けれど、だ。
地球からこちらへ、何らかの通り道のようなものがあったとして。
それが一方通行であるとは限らない。
逆に、こちらで命を落とし、地球に生まれる者もあるのではなかろうか。
そしてその人が、私たちが地球の記憶を持っているように、この世界の記憶を持っていたら?
「そういう人が、たまたまゲーム会社に就職して、たまたま自分の記憶をネタに原案を出して……。そういう事も、あり得るのではと考えたのです」
マリーさんは、ぽかんとしている。
それはそうだろう。彼女は『ゲームの強制力』を恐れていた。それはつまり、『この世界はゲームの世界だ』とどこかで思っていたからだ。
「マリーさんが以前言いましたね。『ゲームと現実で、殿下やアルフォンスの声がちょっと違う気がする』と」
気のせいかもしんないんですけど、と前置きし、彼女が言ったのだ。
ゲームで聞いてたのと、声がちょっと違う気がするんですよね。……まあ、生声と録音とじゃ違って当然かもですけど。
「それはもしかしたら、この世界の記憶のあるゲームのプロデューサーが、『現実の彼らに似た声のアクター』を使用したから……かもしれません。今私たちの前に居る彼らの声は、『日本の声優が当てている声』ではなくて、『彼ら自身の声』なのではないでしょうか」
「似た声の、声優さん……」
「はい。つまり、『オリジナル』がこの世界で、ゲームは『二次創作』だったのでは……と」
そう考えると、色々しっくりくるのだ。
「ゲームに私の存在がないのは、王道の攻略対象である『王子』に婚約者が居ては、話にならないからではないでしょうか。キャラクターの名前や肩書は現実とほぼ同じなのに、性格だけが大きく違っていたりするのも、『ゲーム的に』そうでないとシナリオが作れないからでは?」
恐らく、プロデューサーの好みか何かで、ゲームのキャラクターとして登場させる人物を選び、そこに『ゲームらしい』設定を当て嵌めただけなのではないだろうか。
殿下の性格がもっともゲームと現実で乖離が激しいのは、現実のままの殿下では乙女ゲームなど始まらないからだ。
実際、乙ゲーを再現しようとしたイングリッド嬢は、数週間で潰された。
ゲームと性格の違う兄? それは知らん。見た目がいいから、使えると思ったんじゃね? 知らん。
「恐らくですが、Pはこちらで、一定以上の地位にある貴族でしょう。そうであるなら、登場人物は全員が有名ですので、彼らと会話くらいした事がある筈です。……まあ、脳筋に関しては、どこで知り合うのか謎ですが」
「ていうか、私ともどこで知り合うのか謎なんですけど!」
そういや、そうだな。
「私、高位貴族の方なんて、エリザベス様くらいしか知り合い居ませんし! 何を思ってそのPは、私なんかをヒロインに据えたんですか!?」
知らんがな。
「エリザベス様ヒロインの、総愛されゲームとかの方が、絶対売れるのに!」
うるせぇ。なんだそのゲーム。
「売れるっていうか、私、買うのに!」
買うなや。
「七千円までなら出してもいい!」
意外と高ぇな!!
ゲーム的事情からエリザベスが居なくなり、ゲーム的事情で殿下(とクソ虫)の性格が変わり、ゲーム的事情から舞台がコックフォード学園になった。
「……つまり、もしもマリーさんがコックフォードに入学し、完璧なヒロインムーブをぶちかましたとしても、グッドエンドになど到達できないのです。ゲームは本当に、あくまでも『ゲーム』であり、『現実』ではない。そこで、このゲームのタイトルですが」
『夢幻のフラワーガーデン』。
ゲーム本編のシナリオには、全く関係のないタイトルかもしれない。
けれど恐らく、Pの言いたかった事はこうだ。
「ゲームの内容自体が、こちらの現実を見てきたPにとっては『夢』で『幻』なのです。『この人とこんな恋愛できたらいいな』だったり、『この人がこんな人ならいいな』だったり……」
そう。妹思いの優しい兄など、夢で幻だ。現実は無情なのだ。
「そして『フラワーガーデン』……、つまり、登場人物が『花畑』な思考の人物に改変されている。そういう意味ではないでしょうか」
だって、殿下が恋愛に溺れて王位継承権を捨てるとか、絶対ないし。
殿下の頭の中、花畑が広がるような余地がないし。
あと、クソ虫の頭の中、花畑どころか腐海が広がってるし。
ほわぁ~……などと脱力系の呟きを漏らしたマリーさんが、キラキラの目でこちらを見てきた。
「エリザベス様、すごいです! めっちゃガッテンです! 連打しまくりです!」
そういう事言われると、頭ん中で『ガッテン! ガッテン!』て連呼されるからやめてくれ。
「すごい……。これが『身体は子供、頭脳は大人』!」
「まあ確かに、じっちゃんの名はいつも一つですね」
「混ざってます!」
……このブレンドは気付くのか。
「じゃあもしかして、今もこの国のどこかに、あのゲームのPか何かの人が居るんですかねぇ~」
「居るかもしれませんね。……確認のしようもありませんけど」
何と言っても『死んで、生まれ変わる』のだ。まだ生きているのか、もう亡くなっている人なのかは分からないが、その人に「あなたは地球に転生する予定ですか?」と訊いても訳が分からないだろう。
私がそうだったように、本人が望む訳でもないのだろうから。
「はー……、じゃあ本当に、私は『乙ゲーヒロイン』になんて、ならなくていいんですねぇ……」
心底ほっとしたように言うマリーさんに、私は頷いた。
「そうですね。『ゲームのヒロイン』は、マリーさんをモデルにしただけの、Pの考えた架空の人物ですから」
「あー、良かったぁ……。ていうか、道理でゲームのヒロイン、共感できない筈ですよね! 私じゃないんですもん!」
道理でマリーさん、乙ゲーヒロインぽくない筈だよね! ヒロインじゃないんだもん!
* * *
それから数日後、マリーさんが『疑問を解決してくれたお礼に』と、何か小さめの箱をプレゼントしてくれた。
なんじゃらほい?と城に戻って箱を開けてみると、中身は女性用下着のセットだった。
マリーさんち、今じゃ国一番の女性用下着メーカーだもんな……。ちびっ子用ブラジャー、愛用させてもらってます。
マリーさんがくれたのは、真っ白で綺麗なレースのついたブラジャーと、揃いのデザインのパンツだ。商品名の書かれたタグが一緒に入っている。
『天使の翼』
……トリ〇プとウイ〇グを混ぜるな!
商標とかないからって、結構好き勝手やってんな……。貰うけども。
未使用品に限り、サイズ交換に応じます、と書かれた紙も入っている。有難し。
殿下に「何をもらったの?」と訊かれたが、答えられなかった……。ぱんつとブラジャーですよ、とは……、言えない……。
マリーさんちで扱ってる商品です、と濁して答えたらば、殿下は流石にお気づきになられたようで、バツが悪そうに視線を逸らして「そうか……」とだけ仰っていた。




