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総序
【総序】
夏の日差しがきつい日は、ふとある人を思い出す。
我が親友がよく話す、ある英雄の物語。
世に云うタロット占い師。魔術師ルナと人は呼び、
畏敬の念を集めたが、世を騒がせたあの事件、
宇宙種族間戦争を単身で収束させ
解決すると忽然と姿を消した。人々の
記憶の中にも残らずに、時間ばかりが過ぎてゆく。
我が親友は、これを見てせめて近くで見た者が
偉業のほんのひとかけら、すくい取っては編み上げて
英雄譚を作ろうと、私に依頼を投げてきた。
今ここにまた一片の詩心がにわかに起こり、
膨大な資料を読んで、英雄の波乱に満ちた
生涯を謳い上げよう、と決意した。
かの英雄たちのそば近く、我が親友はいつもいて
共に暮らした時期があり、更に多くの情報を
提供出来るという事だ。
日々巻き起こる、騒動と魅力あふれる者たちの
鮮やか過ぎる生き様を、記して留める試みに
興味は湧いたが浅学で非才のこの身にしてみれば
些か重い事業ゆえ、詩神や歌神の加護あれと
念じながらの執筆をここに始めて筆をとる。
これを目にする者に幸あれ。