第1話 その9
「この姿でお会いするのは二度目ですね。強介さん」
翡翠色の髪と、黄金の瞳を持つ撫子さんが僕に話しかけてくる。
「そ、そうだね」
公園で出会った姿の撫子さんを見ていると、心臓がバクバクして、うまく喋れない。
本当は色々話したい事があるけど、それよりも衝撃が強すぎて、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
だって、あの公園の事は夢じゃなかったし、彼女はこうして無事だったわけだし。
「その……」
なんと話しかけていいか迷っていると、先に撫子さんが口を開く。
「強介さん」
「はい!」
声は変わってないみたい。よく考えれば声で分かりそうなものなのに、全然気づかなかったな。
「もう夜も遅いですし、明日は学校があります。なので、また日を改めて私のことをお話ししようと思うのですが……」
撫子さんは胸に手を当てて、そう提案する。
僕も時計を確認すると、あと二時間ほどで夜明けになる時間だった。
さすがに一睡もしないで学校は辛いか。
「明日、撫子さんの事を話してもらっていいですか?」
「はい。その時に、私の全てをお話しします」
「じゃあ僕は部屋に戻ります」
僕はベッドから立ち上がって歩き、ドアノブに手をかける。
「強介さん。おやすみなさい」
「おやすみ撫子さん」
挨拶を交わして、ドアを開けると……。
「わっ!」
そこには妹のミョウがいた。
「どうしたんだ? こんな所で?」
僕に尋ねられて、ミョウはワタワタと手を振りながら、視線を左右に振る。
「な、何でもない。たまたま通りかかっただけだよ!」
そうは言うけど、撫子さんの部屋の方には父さんの部屋があるだけで、ミョウが深夜に行くところなんてない筈だけど。
「とにかくボクは偶然通りかかっただけだから! 別に強介が気になって盗み聞きしてたわけじゃないんだから! おやすみ!」
「あっ、ミョウ」
ミョウは矢継ぎ早に言葉を紡ぐと、そのままダッシュで自分の部屋に飛び込んでいった。
「何なんだ一体……」
僕は頭をかきながら自分の部屋に戻り、ベッドに横になる。
あと数時間で学校だ。早く寝なくちゃ。
そう思いながら瞼を閉じると、髪と瞳の色が変わった撫子さんの姿が浮かび上がる。
そしてかすかに鼻に残る彼女の部屋のいい香り。
「……これは寝れないな」
結局僕は一睡もできずに学校に向かうことになるのだった。
「…………」
その夜。僕たち四人はリビングに集まっていた。
僕の左には撫子さん。正面には妹のミョウと母さんが座っている。
母さんと撫子さんはニコニコしているけど、僕は真正面にいるミョウに鋭く睨みつけられている。
蛇に睨まれたカエル状態だ。
「で、話って何なの。たいした話じゃないならボク部屋に戻るよ」
僕を睨んでいたミョウが最初に口を開いた。
「待ってミョウちゃん。今日は撫子さんの事で大事な話があるの」
立ち上がろうとしたミョウを、母さんが手を掴んで止める。
「……聞きたくない。二人の事なんてボク、どうでもいいもん」
「駄目。あなたにとっても大事な話なの」
いつもとは違う母さんの真剣な口調にミョウは仕方ないといった様子で座る。
「……何が大事な話だよ。絶対ボクには関係ないのに……」
ミョウは腕を組んでそっぽを向きながらも、一応話を聞いてくれるみたいだ。
「じゃあ、撫子ちゃん。待たせてごめんなさい。お話を聞かせてくれる」
母さんに促されて、撫子さんは「はい」と頷く。
「今日皆さんに集まって貰ったのは私が隠していた事をお話しするためです」
「隠していた事?」
そっぽを向いていたミョウがチラリと目だけ動かして、撫子さんの方を見る。
「はい。実は私の正体は地球人ではないんです」
「ふ〜ん。地球人じゃないんだ。うん? 地球人じゃない?」
ミョウが首を動かして撫子さんの方を見ながら聞き返す。
「強介。どう言う事だよ」
なぜか撫子さんにではなく、僕に聞いてくるミョウ。
「うん。前に話しただろ。夜中の公園で、宇宙人の女の子に会って助けた事。それが撫子さんのことだったんだよ」
「それは夢の話でしょ。二人して同じ夢でも見たの?」
ミョウは全然信じてないな。母さんの方を見ると、何も言わずにずっとニコニコしていた。
「ボクは信じないぞ。もし本当なら、証拠を見せてみろよ!」
ミョウは撫子さんを指さす。
「分かりました。ミョウさん。今から証拠を、お見せしますね」
そう言って撫子さんは立ち上がって目をつぶり、僕の目の前でした時と同じように、自分の髪を手で撫でた。
僕と母さん、そしてミョウの前で、撫子さんの髪が翡翠色に変化する。
そして瞼を開けると、瞳は黒から黄金の色になっていた。
「うそ……」
ミョウは撫子さんの姿に驚いて言葉が出ないようだ。
「まあ綺麗。撫子ちゃんは黒髪も似合うけど、今の髪もとっても素敵ね」
母さんは彼女の翡翠色の髪を見て感激しているようだ。
「あ、ありがとうございます。私もこの髪はとても気に入ってるんです」
自分の髪を褒められた撫子さんは本当に嬉しそうに、はにかむ。
そんな恥じらう姿も可愛いな。と思っていると
僕の正面の方でテーブルを叩く音が響いた。
叩いたのはミョウだ。
「二人とも騙されてるみたいだけど、ボクは騙されないぞ !」
「そんな私。ミョウさんを騙そうなんて……」
「そうだぞ、ミョウ。今のは失礼だぞ」
「うるさいバカ強介。どうせ髪は染めて、瞳はカラコンなんでしょ!」
「ミョウちゃん。マジシャンでもない撫子ちゃんが、さすがにあんな一瞬には変えられないと思うわ。
もし出来たとしたら、それはそれで、すごい事じゃない?」
「うぐっ」
まさか母さんに、ツッコまれるとは思ってなかったらしくミョウは言葉に詰まってしまう。
「でもでも、ボクはまだ信用しないからな」
ミョウは意地になってるみたい。
「お母さんは、強介の妄想を信じるの?」
ミョウは母さんを味方にしようとしてるみたい。
それにしても僕の妄想ってひどいな。
母さんは顎に指を添えて答える。
「そうね〜。これが強ちゃんの妄想なら信じないわ……」
「でしょ! こんな妄想誰も信じない……」
ミョウは母さんの言葉を遮って、それ見ろといった顔で僕を見る。
「ミョウちゃん。最後まで聞きなさい」
「えっ?」
「私は強ちゃんの妄想なら信じないと言ったの。でもこれは撫子ちゃんが言っているのよ」
「じゃ、じゃあ、お母さんは信じてるの? 宇宙から来た宇宙人だって」
母さんは何も言わずにただ頷く。
「なんでそんな簡単に信じられるのさ!」
「勇さんに教えてもらったからよ」
「「?」」
ミョウもそうだが、僕の頭にも?マークが浮かぶ。
なんでここで父さんの名前が出てくるんだ?
ミョウもそう思ったのだろう。僕と同じことを母さんに聞いていた。
「何でお父さんが出てくるのさ?」
「この前帰って来た時話してくれたの。撫子ちゃんの事」
そう言えば、母さんが天にも登りそうなほど幸せな顔をしていた日があった。あの時か。
「私から話してもいいんだけど、まずは撫子ちゃんから話してもらいましょう」
母さんの言葉で、僕とミョウは姿が変わっている撫子さんに注目する。
見つめられて、ちょっと恥ずかしいのか、撫子さんは少し頰を赤くして、小さく咳払い。
「では、お話しします。私は地球人ではありません。別の星からやって来たのです。 星の名はクライト星といいます」
クライト星? どこかで聞いたことがある気が……?
「私の名前はアドレア・フェンネル・ ネレジナと申します」
「アドレア・フェンネ……痛っ、舌噛んじゃった」
ミョウは彼女の名前の長さに苦戦しているようだが、僕には聞き覚えがある名前が耳に飛び込んでいた。
「もしかして、ゲームで使ってたネレジナって……?」
「はい。私の名前をそのままつけました。あっちなみにですね。ネレジナと言う名前は私の星、クライト星にある花の名前からとったのです。その花は地球の撫子という花にそっくりなんですよ」
撫子さんはスマホを取り出して僕に見せてくれる。
「これが地球にある撫子の花。これがネレジナの花です」
見せてくれたのは僕も見たことがある撫子の花と、それにそっくりだけど、今まで見た事もない七色に輝く花だった。
「綺麗な花だね」
「はい。どちらの花も、私が大好きな花です」
「ねえ。お母さんにも見せて」
「はい」
僕はスマホの画面を母さんにも見せる。
「綺麗なお花。撫子ちゃんの星はこういう花がいっぱいあるの?」
「ええ。今度お見せしますね」
「まあ、ありがとう。ほらミョウちゃんも見てみれば?」
「いい」
母さんに促されても、ミョウは腕を組んだまま見ようとはしない。
どうやらまだ疑ってるみたい。
「撫子さんが、そのクライト星から来たのは分かった。でも何で僕のところに来たの? そもそも何でお嫁さん?」
「はい。それをお話しする前に、強介さん。今までのお話で、何か気づいたことはありませんか?」
「気づいた事? うーんと……」
「私の星。クライト星の事で何か気づかれませんでした?」
「あっ、そうそう。僕達がやってるゲームの中で同じ名前が出て来たけど……偶然だよね?」
「いいえ。偶然ではありませんよ。あのゲームに出てくるクライト星のモデルは私の星の事です」
何だって、ゲームに出てくる星のモデルが、撫子さんが住む星?
「どういう事なの?」
「私たちが今プレイしているスペースディフェンスユニオン。実はクライト星でも大人気なんです」
「クライト星で!」
「はい。初代のアースディフェンスユニオンはちょっとアレだったので、クライト星の生物をエイリアンのモデルにしたそうです。そしたら今も続く人気シリーズに……」
「ちょっと待って、撫子さんの星でもスペースディフェンスユニオンが人気あるの?」
「はい! 正しくは地球のテレビゲーム全般は私たちの星でも遊ばれてますよ」
「何で地球のゲームが遠く離れたクライト星にあるの?」
「それはですね。ある地球人の方が私たちの星に持って来てくれたからです」
「地球人? つまり地球の人?」
僕は自分でも何いってるんだと思うけど、聞かずにはいられなかった。
「はい十年ほど前。地球の、ここ日本から男性が一人やって来たそうです」
撫子さんは、その昔、自分の星で何があったかを話していく。
「百年以上前。私たちの星では大きな戦争がありました。戦争が終わり平和が戻って来ましたけど十年以上続いた戦いで多くの人が命を落とし、皆は悲しみにくれていました……」
僕達三人は静かに撫子さんの話に耳を傾けていた。
「戦争が終わり、元の生活に戻っても、人々から悲しみという傷は癒えることはありませんでした。そんな時です。私達の星にある人がやって来たのです」
「それが地球からやって来た人?」
僕がそう聞くと、撫子さんは頷く。
「はい。最初クライト星の人は突然宇宙からやって来た人間を見て侵略者か何かと疑ったそうです」
まあ、地球でもいきなり宇宙人が現れたら、みんな似たような反応になるよな。
「その地球の人はあるものを持っていました。それは携帯ゲーム機とソフトだったそうです」
その地球人が持って来たのは、単三電池で動くドリームポケット。ソフトは捕まえたモンスターを育てて戦わせるモンスターファイトだったそうだ。
「クライト星の人達は、初めて見るソレに最初は驚き触ることもしなかったそうですが、地球の人が楽しそうに遊んでいるのを見て、一人の子供が手にとったそうです」
クライト星の人々は驚愕した。その子供は両親を亡くしてから、暗い顔をしていたのにそのゲームを遊んで数分後。
『うおおおっ! すっげー』
とても大きな声を出して、その小さい液晶画面を食い入るように眺め、夢中で楽しんでいたそうだ。
「その子と地球の人が二人で楽しんでやっているのを見て、クライト星の人達は数年ぶりに笑うことができたそうです」
「そんなすごいことをした人。一体誰なの? 僕聞いたことないけど」
僕が聞くと、ミョウも頷いている。どうやら彼女も知らないらしい。
「そうだよ。そんなすごい人。学校の授業でも習ったことないよ。お母さんだって知らないでしょ?」
ミョウに話を振られた母さんはニコニコと微笑んでいた。
「私も学校では習わなかったけど、その人の事は知ってるわ」
「「!」」
その爆弾発言を聞いて、僕とミョウが同時に母さんの方に目をやる。
「母さん。どういう事?」
「強ちゃん。ミョウちゃん。あなた達も合ってるわよ」
「僕達も会ってる?」
母さんはウンウンと頷いている。誰だ。まさか母さんが……!いや、色々なところに冒険に行けそうには見えないし、それに長い間家を空けてもいない。
「ああっ!」
ミョウが突然大声を出した。
僕は思わず耳をふさぐ。
「ミョウ。声が大きいよ」
「あっ、ごめん……じゃなくて、そのクライト星に行った地球人って……お父さんの事?」
「ピンポ〜ン。大正解よ。ミョウちゃん」
可愛らしく指を立てる母さん。
「父さんが、クライト星に行った地球人?」
撫子さんの事だけで頭が混乱しそうなのに、父さんの事でも頭が痛くなりそうだ。
「そうよ。勇さんの職業は冒険家って言ったでしょ」
「そりゃ知ってるけど……」
でも冒険家って普通は地球を冒険してる人のことじゃないの?
他の星に行く冒険家はそもそも冒険家と呼んでいいのかどうか。
「勇さんはね。高校卒業してから冒険家として様々な星や異世界を旅してるの。
あまり知られてないけど、実は他の星との交流は何十年も前から続いているの。
これは秘密だからあんまり周りに話しちゃダメよ」
「お母さん。こんな話。普通は誰も信じてくれないよ」
ミョウの言う通りだと思うので僕も同意して頷く。
「でも、これで二人共、信じてくれるわよね」
僕は頷いた。撫子さんの事といい、父さんの事といい。世界には僕の知らない事が沢山あるんだな。
それにこういう非日常感は嫌いじゃない。
「…………」
ミョウは何かを考えているのか、何も言わなくなってしまった。
「撫子さんは父さんと会った事があるの?」
「はい。実は地球に来たいと思ったのは、強介さんのお父さん。勇壱郎さんに色々お話を聞いたからなんです」
「色々ってどんな?」
「はい。美しい地球の事や歴史。後、面白いゲーム……そして貴方のこと」
僕の事が撫子さんの口から出た途端、僕の心臓が一際大きく脈打つ。
「ぼ、僕の事……」
「ええ。勇壱郎さんから聞いて、とても気になったんです。私と同じゲームが大好きな人だって。それで、スペースディフェンスユニオンをやってるって聞いたので探していたんです」
「じゃあ、最初にあったのは偶然じゃないって事?」
「いいえ。最初の出会いは偶然でした。けど何回か遊んでいるうちにもしかしてと思って、勇壱郎さんに確認してもらったんです。そしたらキョウは貴方の事だろうって」
何と撫子さんと遊んでいるところを父さんに見られていたとは、それはそれで顔から火が出そうなほど恥ずかしいな。
「勇壱郎さんにお話ししたんです。私強介さんに会いたいって。それでクライト星からここまでやって来たんです」
「あれ? そういえば撫子さんが地球に来た時、直前までゲームしてたよね」
「恥ずかしい話ですか、実は地球に到着する直前までゲームしてまして……」
「えっ! そうなの?」
「はい」
撫子さんが言うにはクライト星から地球に来るには、色々と専門用語が飛び出たけど、簡単に言うとワープするらしい。
それで地球に着く直前まで遊んでいたらしい。
何と言うかすごい人だなぁ。
僕は感心してしまう。
「本当はワープゾーンを抜ける前にゲームを終わらせる筈だったのですが、気づくと、着陸寸前で……」
「それで突然回線が切れちゃったと」
「はい。でもそれ以上に驚いたのが、まさか到着して一番に出会った人が強介さんだった事です」
「あの時は僕も驚いたよ。エイリ……じゃなかった。とんでもない美少女が現れるから……」
「まあ、強介さん。そんな美少女なんて、恥ずかしいです」
撫子さんは頰を赤くして両手を顔に当てて首を振っている。
行った僕も恥ずかしくなって、頭をポリポリ。
「まあまあ。二人で顔赤くしちゃって」
「強介のバカ……」
母さんは僕達を見てニコニコしてるし、ミョウにはとてもキツイ一言を言われてしまう。
「強介さん。あの時助けて頂いて本当に感謝しています」
あの時……ああ、酔っ払いに絡まれた時のことか。
「そんな気にしないでよ。困ってる人を助けるのは当たり前だよ。それにせっかく地球に来てくれた撫子さんが、嫌な思いしないで良かったと思う」
「でも、助けて頂いたおかげで、私は強介さんのお嫁さんになろうと決意したんです」
それは、何というかとても嬉しい。
「あの、私がお嫁さんでは嫌ですか?」
撫子さんはふざけていない。真剣だ。
なら僕もちゃんと応えないと! 母さんとミョウに見られているという。かなりの羞恥プレイだけどね!
僕は身体ごと椅子を撫子さんの方に向ける。
「撫子さん」
「は、はい!」
撫子さんも身体を僕の方に向けた。
緊張してるのか。微かに震えている。
「僕は撫子さんが嫌いではありません。好きです!」
「じゃ、じゃあ……」
撫子さんの目が期待で輝く。
「でも、結婚はできません」
「そ、そんな……」
一瞬にして目から光が失われてしまった。
「あ、最後まで聞いたください」
「……はい」
「僕は撫子さんの事がす、好きです。それは嘘じゃありません。でも、結婚はまだ早いと思います」
「それはつまり……?」
「えっと、そのもう少し時間をかけてお互いを知ってから……そのつまり……」
言葉を考えろ。僕。撫子さんと何がしたいんだ。
「いっぱいゲームとかして一緒に遊びたいので……僕と付き合ってください!」
僕は目を閉じて左手を伸ばす。
我ながら意味不明なセリフだけど、これが僕の精一杯だ。
僕は撫子さんの返事を待つ。
けれど、彼女からの返事はない。これは駄目だったかな。恐る恐る目を開ける。
「えっ」
撫子さんは両目から涙をポロポロと流していた。
「ごめんなさい。嬉しくて涙が……」
撫子さんは指を使って涙を拭う。
「撫子さん。嬉しくて泣いてるの?」
「はい。だって、強介さん『付き合ってください』って言いました。それはつまり、私と恋人になりたいという事ですよね?」
「う、うん」
僕は左手を伸ばしたまま、首を縦に振る。
「ところで強介さん。なんで手を私の方に伸ばしているのですか?」
「ああ、もし撫子さんがOKだったら手を握ってもらおうかな……と」
「そういう事でしたら……はい!」
引っ込めようとした僕の手を撫子さんは両手でギュっと握ってくれた。
「勿論OKです!」
僕は撫子さんがOKと言ってくれた事と、女性の手の柔らかさに感動していた。
じゃなくて、僕からも何か言わないと!
「改めて、よろしくお願いします撫子さん」
「はいこちらこそ。強介さん」
「おめでとう〜! 強ちゃん。撫子ちゃん」
母さんが手を叩いて僕達を祝福してくれる。
けどミョウは何もいう事なく黙ったままだった。
こうして僕には彼女ができた。とても綺麗でゲームが好きな別の星からやってきた女性。
これがラノベとか漫画だったら、このままラブコメのような生活が待っているんだろうけど、僕にはまだ解決しなければいけない問題があったんだ。
第2話に続く。