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第2話 その7

リムターを仲間に入れ四人になったところで僕は一時中断。

他にやることを片付けて、ドラスト8に戻ったのは夜の九時を回っていた。

確か妹のミョウが、部活の合宿から帰って来るのは明日だったはず。それまでにはエンディングを見ないと。


四人になった勇者一行は魔王を倒すための伝説の武器を探すことにした。

それの情報を求めて、東西南北あらゆる所を旅して行く。

途中、魔王の追っ手に追われたり、立ち寄った町で起きた問題を解決したり、偽情報をつかまされたり。

そんなこんなで、やっと信頼できる情報を手に入れるのだった。


それはある貴族を助けた時に教えられた情報だった。

何でも北のウユキ山に古の勇者が使ったとされる伝説の武器が納められた神殿があるそうなのだ。

四人は迷わずそこに行くことを決めた。

そして今、彼らは険しい山を登り山頂にある神殿のような建物の前にいる。

「これが、神殿なのでしょうか? けど、入ろうにも入口らしき物が見当たりませんね」

激しい吹雪なかで、四人は神殿に入る方法を探していた。

入り口らしきものはあるにはあるのだが、ぴったりと閉じられていて、とても開きそうにない。

「ルーナ様。自分にお任せください。この中で一番力がある自分が、あの扉を開いて見せましょう!」

リムターは自分の胸を叩きながら、力強く宣言すると、扉の前に立ち、両手で思いっきり扉を押し開けようとする。

「ぬうぅううう! むぅぅぅぅん!」

リムターがどんなに力を込めて押しても扉は少しも動かない。

「流石のリムターでも、無理そうですね……くしゅん」

いかん。このままではルーナ様は風邪を引いてしまう。とでも思ったのだろうか、リムターはさらに力を込めて扉を押す。

「ルーナ様。すぐに、この扉を開けますので、もう、もうしばらくお待ちを! ぬぅおおおお!」

しかし扉はリムターの努力をあざ笑うかのように、全く動く事はなかった。


「駄目そうだね。リムター」

そんな彼を見かねて、ミョウが扉に近づく。

「ぬっ。ミョウ下がっていろ。君の力では到底無理だ」

「分かってるよそんな事は。ボクは筋肉バカの君とは違うんだから。ほらほら、どいてどいて。そのでかい図体邪魔。ルーナの風避けでもやってなよ」

ミョウはそう言って変身魔法を解除。可愛らしい猫耳と尻尾が現れる。

「さてと、力で駄目なら……何か仕掛けが……」

キョウとルーナはミョウが扉を開いてくれることを期待し、固唾を飲んで見守る。

リムターは扉から下がってルーナが寒さで凍えないように、さり気なく自分の身体で吹雪を防いでいた。

「んん! これかニャ……」

扉全体を触って調べていたミョウが何かに気づいたようだ。

「何だ。そんな事か!えーとキョウこっち来て手伝ってニャ」

呼ばれたキョウは扉の所へ向かう。ミョウな指示したところには透明な取っ手が付いていた。

「えっと、これ持って。持った? じゃあ、合図で引っ張って……今だニャ!」

二人で扉を引っ張ると、いとも簡単に扉が開いた。

押してあげるのではなく引いて開ける扉だったのだ。

「まさか、そんな簡単な仕掛けだったとは全く気がつかなかった。さすがミョウだな」

「ふふん。リムターはもっと頭使いなよ。キョウは褒めてくれないのかニャ?」

ここで選択肢が出たので、僕は「はい」を選択した。

すると……。

「バ、バカ! 褒めたって、何も出ないんだからニャ! バカキョウ……」

何だろう。盗賊ミョウのこのセリフどっかで聞いた事があるようなないような……。

僕がそんなことを考えていると、キョウ達は神殿の中へ足を踏み入れるところだった。

おっといけない!

慌てて思考をゲームに戻す。

けど、ほんとに聞いたことあるんだけどな。


神殿の中に入った勇者達は、安全な入り口付近でキャンプを張る。

これで、街に戻る手間が省けた。

一度休んで体力を回復させてから、神殿の奥を目指す。

神殿内には、行く手を阻む仕掛けや、今までとは違う強力な敵などがひしめいていたが、四人の力を合わせて、突破していく。

そして、ついに最深部の部屋の前に到達。

僕はここで味方のライフと魔力を回復。リメイク版と同じならこの部屋にはボスが待っているからだ。

順番万端の四人は、勢いよく最深部の部屋の扉を開けた。


果たしてそこにいたのは、伝説の武器を守る番人ではなく、一人の男性がこちらに背中を向けていた。

「来たな偽勇者とその仲間達」

振り向いて顔が露わになる。

その正体はキョウの父、ハウザーだ。

「あの、人……ハウザーおじさん? あれ、ボク何であの人の名前知ってるんだ……?」

ミョウは、知らないはずのハウザーの名前が出て来て頭が混乱しているようだ。

「キョウ。あの方の手に持っている剣。あれは……!」

ルーナがハウザーの左手に持っている剣を指差した。

「そうこれこそが、伝説の武器。魔断の(つるぎ)だ」

ハウザーはそう言って、魔断の剣の切っ先を勇者達に向ける。

「魔王の手先である貴様らをこの剣で葬ってくれる!」

「来るぞ。皆構えろ! ミョウ大丈夫か!」

リムターが声をかけても、ミョウは頭を抱えたまま返事をしない。

「ミョウ? 違う僕の名前は、名前は……」

「まずはお前からだ!」

ハウザーはミョウに狙いを定めて迫る。

ミョウはとても避けられそうにない。

リムターは助けようと走り出すが、間に合わない。

それよりも早く動いたのはキョウだった。

咄嗟に背中でミョウをかばう。

ハウザーの凶刃がキョウの背中を斬り裂く。

かと思われたが、剣が背中に触れた途端、ハウザーは弾かれたように吹き飛ばされる。

「ぬわっ!」

ハウザーは危なげなく受け身を取るが、剣が弾かれた事にとても驚いているようだ。

「小癪な偽勇者め……いや、この剣の力か?」

ハウザーの疑問に答えたのはルーナだ。

「そうです。魔断の剣が斬るのは悪しき魔族のみ。ましてや勇者を傷つけることなど決してありません!」

「ならば、この剣を使わずに貴様らを骸に変えてやる!」

ハウザーが背中から愛用の剣を鞘から抜いた。

「キョウ。あの人から、闇の気配を感じます。きっと操られているのです!」

ルーナにはハウザーに取り付く魔族が見えたらしい。

「なら、どうすればいいのですか? ルーナ様」

「魔断の剣を奪い返せれば、私たちの勝ちです」

勇者達にハウザーが剣を持って飛び込んで来た。

「私の剣技を受けてみろ!」


戦闘開始。操られしハウザーが現れた。

今回はミョウは戦えない。その為に三人で立ち向かう。

一番早く動いたのは操られしハウザーだ。竜巻斬りを繰り出して来た。

一回の攻撃で全員がダメージをくらってしまう。

ルーナは全体回復魔法で、味方を回復。

リムターは仲間をかばう揺るがぬ盾を使い、キョウはハウザーを剣で攻撃する。

しかしハウザーは手強い。キョウの攻撃を剣で弾いて攻撃を無効にしたり、激しい攻撃で、仲間を守るリムターを瀕死に追い込む。

ルーナで回復させていくが、間に合わず、リムターは力尽きてしまう。

名前が真っ赤になってしまった。

ここで僕は作戦変更。回復を無視して、キョウとルーナの二人で操られしハウザーを攻撃する。


ボスの攻撃で、ライフが瀕死のキョウとルーナ。

しかし、こちらの攻撃で、先に膝をついたのは、操られしハウザーの方だった。

ここで、戦闘が中断。イベントが発生した。

「やるな。偽勇者。ぬっ、ぬぐぐ。なんだ。剣が勝手に……」

魔断の剣が、操られしハウザーの手から離れ、真の持ち主に向かって飛んでいく。

キョウは手を伸ばしてキャッチ。

魔断の剣の剣身が光り輝く。

「ぐわああ。忌々しい光め……!」

操られしハウザーが、キョウを斬ろうと、走って近づいて来る。

「我ら魔王に楯突く勇者に死を!」

キョウに剣が届く直前、足に縄が絡んで、操られしハウザーが転ぶ。

「な、何だ。この縄は……!」

もちろんその縄を投げたのはミョウだ。

「やっぱり、ボクがいないと、このパーティは駄目だね」

「ミョウさん。大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよルーナ。ほらキョウ、その剣を使って、そいつをやっつけちゃえ!」

こうして再び、戦闘開始。

全員のライフが回復し、力尽きたリムターも復活した。

今回からミョウも参戦。

四対一で、こっちには魔断の剣もある。これで負ける要素はない!

操られしハウザーは絡め縄で動きが遅くなっている。

相手の動きが鈍ってる間に集中攻撃。

ルーナの炎魔法が炸裂し、リムターが愛馬と共に、突撃する。

にゃんこモードを使って力を解放したミョウが急所を突きまくる。

そして勇者キョウの持つ光り輝く魔断の剣がハウザーにトドメを刺した。


「ぐうううおおおおおっ!」

逃げようとする操られしハウザーをキョウが追いかける。

「来るな勇者!」

ハウザーは剣を振るうが、キョウはそれを避けて、魔断の剣を突き立てた。

「ぎゃああああっ!」

ハウザーに取り付いていた魔族が断末魔の悲鳴をあげて消滅し、ハウザーは崩れ落ちた。


「う、うーん。ここは……?」

ハウザーが目を覚ます。そして目の前にいるキョウに目を止めた。

「おお、私の息子、キョウなのか?」

キョウは頷く。

「こんなに大きく立派になったのだな。一体何があったのだ?」

キョウは自分の村で起きた事を話した。

「そうだったのか。私が王国に行っている間に村がそんな事に……キョウ。お前には迷惑をかけたな」

そう言ってハウザーはミョウに顔を合わせる。

「君は……ツェカじゃないのか?」

えっ、ミョウがツェカ!

「ボクはツェカなんて名前じゃないよ……ボクの名前はミョウ……」

「ツェカだろう。よくうちの息子と遊んでいた。君も無事だったんだな……良かった……」

そう言ってハウザーの意識が途切れる。

「失礼します」

ルーナが近寄ってハウザーの身体を診ていく。

「……大丈夫。気を失っただけです。でも、どこかで休ませた方がいいと思います」

「ルーナ様。自分がハウザー殿を連れて行きます」

リムターはハウザーを軽々と持ち上げて背中に担ぐ。

「お願いしますリムター。ミョウさん考えるのは後にしましょう。今は街に帰る事を優先するべきです」

リムターとルーナが先に部屋を出る。

ミョウも少し遅れて歩き出し、キョウもその後をついて歩き出すのだった。


第2話 その8に続く。

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