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第2話 今年の僕の夏休みは難易度ベリーハード。 その1

僕、風間強介がクライト星からやってきた撫子さんに告白してから数日が過ぎた。

僕と撫子さんは学校からの帰り道を二人一緒に歩いている。

「ふふ。浮かれてますね。強介さん」

「あっバレた?」

「ええ。だって歩き方がスキップになってますよ」

「そりゃ、だってね。明日からだよ」

「そうですね。明日からですもんね」

何が明日からというと、それは勿論、僕達高校生にとって一番嬉しい筈である夏休みの到来だ!

そりゃ浮かれて自然とスキップもしちゃうよね。

新作のゲームをやる時間が大量に確保できたって事だし。

でも撫子さんに指摘されて気づくと、道行く人が僕の事を生温かい目で見られていることに気づいて、普通に歩く事にしました。

「でも、明日からいっぱいゲームが出来るんだ。撫子さんも勿論嬉しいでしょ?」

「はい! そんな夢の日々。とても嬉しいです。それに強介さんとも一緒にゲームできる時間が増えるんですもの……あっ、でも……」

僕と同じく嬉しそうだった撫子さんの表情が曇る。

「どうしたの」

「いえ。確か夏休みの宿題も沢山出ていたはずですのよね」

「あっ……宿題……」

それを聞いて僕のテンションは一気にガタ落ち。

僕達の学校では、学生の幸せな時間を奪うかのように、先生たちが出した宿題は山程ある。

勉強な苦手な僕は、下手したら夏休みの全部を使っても終わらない量が出ていたのだ。

「でも任せてください。強介さん」

「任せるって何を?」

「はい。出された問題はさっき見たところ、ほとんど理解しました。なので強介さんのも後で私がやっておきます。そしたら夏休みはずっと遊べますよ」

宿題をやってくれる。なんて魅力的な響きだ。

でも僕の良心がその悪魔の誘惑に打ち勝つ。

「……待った。それはさすがに駄目だと思う。だから今度、問題の解き方教えてくれると嬉しいな」

「そうですよね。私が解いても、強介さんの為になりませんよね。分かりました。問題の解き方を今度教えますね」

「ありがとう撫子さん」

「いえいえ」


「そういえばさ」

公園の前を通りかかった僕は、気になることがあったので、撫子さんに訪ねることにする。

「何でしょう」

「撫子さんが地球にやってくる時に乗っていた。細長い金色の物体。あれは今どうなってるの」

「細長い金色の……ああ。それならまだここにありますよ」

撫子さんは公園を指差した。

「ここに? あれからずっとそのままって事!」

「はい。しまうところもなくて……公園には人もいないみたいですし、今から見に行きます?」

「うん」

僕はどうしても気になるので、撫子さんと一緒に公園へ。

公園中央にある噴水は壊れた形跡もなく、今も水を出し続けていた。

一見すると何の異変もないように見える。

「ここに置いてあるの?」

「ええ。周りに人はいないですね」

撫子さんは人がいない事を確認してからスマホを取り出して何か操作をしている。

「今、カモフラージュを解きますね」

そう言ってスマホの操作を終えた途端。噴水に異変が起きた。

噴水は跡形もなく消え、代わりに現れたのは僕が見たあの細長い金色の物体だった。

よく見ると、噴水は破壊されたままになっている。

「カプセルは隠すところがなくて、しょうがなく、偽の映像で皆様の目を誤魔化しているのですが……」

確かにこれが見つかったらえらいことになるよな。

地球とクライト星は何十年も前から交流があるそうだけど、一般にはほとんど知られていない。

僕だって最初は撫子さんが宇宙からやってきたなんて信じられなかったし。

因みに僕の父さんは、クライト星以外の他の星や、異世界にも言ったことがあるらしい。

僕の父だけど、とんでもない人だなと最近思う。

まあ、一番すごいのはそんな人と結婚した母さんかな。

「強介さん。そろそろ隠してもいいですか?」

「う、うん。ありがとうもう大丈夫だよ」

撫子さんが再びスマホを操作すると、金色のカプセル? の姿は消えて水を吐き出す噴水の姿に変わった。

ぼくたちは公園を出て家に向かう。

「あれは宇宙船なの?」

「アレは宇宙船というよりもワープゾーンを行き来する為の物です。ですからアレで宇宙に飛び立つ事はできません」

「つまりワープ専用機なのかな」

「専用機? そうですね。ワープするだけならあのカプセルを使った方が楽ですね。座標を入力しておけば目的地までは自動ですから、中は狭いですけど、結構快適なんですよ」

「なるほどね」

僕はカプセルと聞いてあの中はカプセルホテルの個室みたいになってるのかな。と想像する。

そこで寝ていると、いつの間にか地球に着いてしまう。すごい技術だ。

僕達がそんな話をしていると、家の前に到着する。

ちょうど僕達より早く帰ってきたであろう妹のミョウが扉を開けているところだった。

「おーいミョウ。待ってくれ」

ミョウは僕の声が聞こえたのか、こっちを向いて目を丸くする。

「わわっ!」

何と、開けたドアを勢いよく閉めてしまった。

「しかも鍵までかけてるよ。全く……」

僕は鍵を取り出してドアを開けた。


「あらおかえり。強ちゃん撫子ちゃん」

母さんがリビングから顔を出して、帰ってきた僕達に声をかける。

「ただいま」

「ただいま帰りました。愛子さん」

「あれ。ミョウちゃんと一緒じゃなかったの? ついさっき帰ってきたから、てっきり三人で帰ってきたのかと思ったわ」

「そんな訳ないだろ。僕達よりミョウの方が一足早かったんだよ。呼び止めたら何故か鍵まで閉められた」

僕は話しながらキッチンに向かい、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出して二つのコップに注ぐ。

「はい撫子さん」

「ありがとうございます」

撫子さんは、母さんからコップを受け取って、麦茶を美味しそうに飲んでいく。

僕もつられて、麦茶を飲む。うん冷たくて美味しい。

「三人で帰ってきたら、強ちゃん。両手に花だったのにね」

「ブフー」

その母さんの言葉に僕は飲んでいた麦茶を盛大に吹いてしまう。

「大変! 大丈夫ですか? 強介さん」

「ちょっと強ちゃん。もう、拭くもの拭くもの」

「母さんが悪いんだろ。変なこと言うから」

「でも、強ちゃんとミョウちゃんお似合いだと思うけどな〜」

「何言ってるんだか……」

母さん。僕とミョウは兄妹だよ。それを一番知ってるのは母さんでしょうが。

「それに撫子さんも嫌でしょうに」

「☆いえ強介さん。私は貴方が何人奥さんを持っても構いません。私の星はハーレムOKです」

きっと一部の人にはすごい羨ましい環境なんだろうな。

「うふふ。ごめんね。今の状況じゃそれは無理よね」

今の状況。以前にも増して、僕はミョウに嫌われてしまっている。

それは僕が撫子さんに告白したところを見てからだ。

僕が、リビングで撫子さんがクライト星から来た事を教えてもらった時、僕は彼女に告白して、母さんもミョウもその場で一部始終を見ていた。

母さんはとても喜んでくれたけど、ミョウは無反応で、その日から口を聞いてくれない状態が続いている。


「早く仲直りしなさい。今のままじゃお家の中が暗くて嫌だわ」

「だったら、母さんから言ってよ。僕が話しかけようとするとすぐ逃げちゃうんだよ」

「私も避けられてるみたいなんです」

ミョウは撫子さんとも話そうとしないのだ。

「そうね。お母さんから言ってもいいけど、それじゃ貴方の為にはならないわ。だから強ちゃん。自分で解決しなさい」

「そう言ったって、すぐ逃げられちゃうんだけどな」

「う〜ん。じゃあ、お母さんからアドバイス……」

母さんのアドバイスを聞いて、僕はそれでミョウと仲直りできるのかとても不安だった。


「お休みなさい。強介さん」

「うん。お休み撫子さん」

僕は一度妹の部屋のドアを見てから自分の部屋に戻る。

今日もミョウは、無言でご飯を食べてさっさ自分の部屋に戻ってしまった。

「さてと……」

そんな状態がここしばらく続くので、話しかけることもできない。

でもこれから夏休みが始まる。という事は、嫌でも顔を合わせることが多くなる。

それなのにずっと嫌われたままなのは辛い。

だから僕は母さんのアドバイスを受けてある人物に電話をかける事を決意していた。

「……さて出るかな」

今まで母さんが電話をしても、忙しくて出ない事が多いそうだけど……。

電話が繋がり、何回かコール音がなった後。

『はい。もしもし』

何と一度目の電話で出た。

『もしもし……いたずらか?』

おっと、驚いている場合じゃない。喋らないと。

「もしもし。僕、強介だよ」

電話をかけた相手は僕の父さんだ。

『おう、強介か。久しぶりだな』

「うん。久しぶり」

父さんと会話したのは、撫子さんのことを聞いた時以来か。でも今年で二度も話すのはとても珍しい。

『撫子さんとはどうだ。ラブラブしてるか?』

「ラブラブって! 誰から聞いたのさ?」

『ん? ああ、愛ちゃんからだよ。いつも二人がラブラブだって聞いてるぞ。俺たちの若い頃みたいで羨ましいぞ』

そう言ってスマホから大音量で笑い声が轟く。

『で、本当のところはどうなんだ? 撫子さんと仲良くやってるのか?』

「うん……仲良くしてるよ」

『そうかそうか。彼女も地球の環境に慣れるのは大変だが、お前が一緒にいれば大丈夫そうだな。護ってやれよ』

「言われなくても分かってるよ」

『ならいいんだ。それで惚気話を父親に聞かせる為に電話したのか?』

そうだ。僕が話したかったのはこれじゃなかった。


「実は父さんに聞きたい事があるんだ」

『どうすれば家の中で二人きりになれるかか?』

「そうそう……じゃなくて!」

この父親は息子に何を言わせようとしてるんだよ!

『あれ、違うのか?』

その話もほんの少し興味はあるけどね。

「違うよ。撫子さんのことじゃなくて今日はミョウの事だよ」

『又ミョウの事いじめてないか? お前、小さい頃はよく泣かせてたらな』

「覚えてないよ! そんな事」

本当は少しだけ覚えがあるけど。今はそれは関係ない。

「どちらかというと、今は僕の方がいじめられてるよ。口を聞いてくれないんだ」

『それで仲直りしたくて、その方法を知りたいと』

「うん」

『…………』

父さんは解決法を考えているのか、何も喋らなくなった。

僕はじっと待つ。

『ミョウと仲直りしたいなら方法はあるぞ』

「本当! 早く教えてよ」

『うん。ゲームをしなさい』

「うん?」

父さんはなんて言ったんだ? つまり遊べってことか?

「部屋に沢山のゲームという名のお宝があるだろ?」

「あるね。父さんの部屋にだけど」

もともと撫子さんの部屋には父さんの持っているゲームとハードが保管されていたが、隣の父の部屋に移されていた。

『そうだ。明日から夏休みだろ。だったら、時間はあるはずだ。今からいうゲームをクリアしてする事。ネットに頼らず自力でな』

父さんの答えは僕の予想の斜め上をいっていた。


第2話 その2に続く。

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