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半人半霊の俺が召喚者に放り出されて異世界観光  作者: 雪月卯月
序章 精霊の森
6/6

6話 まさかの事態

「なあ、フィーア先生」


「こんな時にどうしたんですか?」


「あの、何かでかくて黒くて角生えてる狼、すげえこっち見てないか?」


全長2mほどの黒くて、角が生えてる狼みたいな生物がこっちを見て唸っている


「えっと、すごく大きいですね」


そうじゃない。


「いや、そうじゃなくてね」


鈴音が言う。

俺も同意。

別に、フィーアに狼を見た感想を聞きたいわけじゃない。


「へ?この子、かわいいですね!!」


「「そうじゃない」」


だめだ。

能天気すぎる。


「鈴音さんや。これどうするよ」


「どうするも何も、近づかないに越したことは……」


「おおかみさーん!!!」



「「はあ!?!?」」



フィーアの声に答えるかのように狼が走ってくる。

しかし、楽しくじゃれてくる感じではない。


完全に獲物を狩る目をしていた。


「バカバカバカバカ。おまえバカか!なあ!?あいつどう考えても友好的な感じじゃないだろう!!」


おいおいおいおい

どうするよ、この状況

7、8mくらい前にいた狼がもうすぐ目の前に来る!!

まずい。

狩られる!


「フィーア!!さっきの魔法をあの狼に!早く!!祐理があいつの餌になるわよ!!」


鈴音ナイス!

その手があった。


「え、餌!? えい!」


どうやら、フィーアが魔法を撃ってくれたみたいだ。

これであの狼はこっちにこれな………来てるうううううううう!!!!


「バァウ!!」


「へ?あれ?あれ?」

「祐理いいいいいいい!!逃げてええええええ」

「うおおおおおおおおおおおお!!!」


自分の中から凄い力が溢れて……こない!!

現実はそんなに甘くなかった。

呆気なく狼に地面に押し倒された。

目の前にはよだれがだくだくの狼の顔面。


あ、これは死んだわ。


なんかいろいろあった人生だったがこの最期は何とかしたかったな。

なんせ、異世界だぞ。異世界。

なんやかんやで召喚された理由は腹立つし、色々と真実も分からないし。

そんでもって、鈴音をこんな世界においていく。



――それが許せるか?

――――許せないな。


主に何もできない自分自身が。



何か、違わないか。

こりゃ違うわ。

何で死ぬことを前提に考えてんだ?

阿呆なのか?俺は。

今考えるべきは死なない事だろうが阿呆!!!


「邪魔だあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


狼の顔面を思いっきり殴る。

仕留めるには至らないものの、俺の上からどかす事には成功した。


「祐理!!」

「ユーリさん!」


二人が声を上げる。

ただ、状況は大して変わらない。

怯ませることには成功したが、狼はまだ近くでこっちを見ている。

こちらの様子をうかがっているようだ。



次はない。


それがはっきりわかる。


今のは殆ど不意打ちだった。

だからこそ食われずに済んだといっていい。

なら、次は抵抗されることを織り込み済みで跳びかかってくるだろう。

そうなったら、もう終わりだ。

それなら、まずやることは


「鈴音!!フィーア!逃げろ!!できるだけ遠くに!!!」


全員で逃げることはできない。

さすがに、追いつかれて食われるのが目に見えている。

フィーアの魔法も期待できない。


「できるわけないでしょ!?このクズ!!!あたしがいないと何もできないでしょうが!!」


鈴音が逃げるどころか俺に近づいてくる。


「『どうせ、あたし達を逃がして自分一人でどうにか』とか考えてるんでしょ」


図星だった。


「そして、具体的にどうするかっていうのは一切考えてない」


完全にばれている


「それじゃ、何かいい考えでもあるのか?」


「ないわ」


「ないのかよ!?」


「グルルルルル……バウバウ!!!」


「うるせえ!!すっこんでろ!!!」

「うるさいわね!!黙ってなさい!!!!」


狼が怯んでこちらの様子を見ることにしたようだ。


今、こっちはこっちで取り込み中なんだっての。



「自分だけでなんとかしようっていうのが気にくわないだけよ」


「そうかよ。それじゃ、此処からどうするよ?」


「取り敢えず、私達であれを倒すのは無理よ。逃げの一手といっていい」


「そりゃそうだ。思いっきり殴ってもピンピンしてやがる」


「そして、フィーアのあの魔法も不発」


「そういえば、フィーアは?」


「ふぇええええ……」


完全に怯えていた。

その上、腰を抜かして、目から涙があふれてしまっている。

駄目だ、ありゃ。


「逃げるにしても、フィーアを担いで逃げろってか」


「そういうことよ」


「泣けてくるなこりゃ」


「それで、あんたには死なない程度に時間を稼いでほしいの」


「あん?」


「私達二人だけなら無理。だけど、可能性があるならフィーアをどうにかするしかない」


「どうにかなるのか?」


「してみせる」


頼れる自信のある顔と言葉で答える。


やるしかないか


「バウ!!バウ!!!!」


狼が吠える


「あちらさんもどうやら限界らしい。それじゃ、頼むわ」


「あんたもね!」


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」


こぶしを構え、狼に向かって突っ込む。





 ■  ■  ■


祐理が狼に向かっていった。


あたしも早くフィーアを何とかしないと、祐理が食べられる。

急いで、フィーアの所に戻る。


「フィーア!!しっかりしなさい!!!」


「ふぇ!鈴音さん!!」


「あなた、あの狼を何とかできる?」


「わかりません。わたしの魔法もさっきから使えなくなっちゃって、どうしたら……」


「魔法が使えなくなった?」


魔法が使えなかったや、狼に魔法が効かなかったならまだしも「使えなくなった」?


「さっきからあの狼さんを地面に引っ張ろうとしてもできないんです!?」


あたしに助けを乞うように言ってくる。

それを解決しないとどうにもならない。

そう確信した。


「フィーア、落ち着きなさい。いい?私の質問に落ち着いて答えなさい。」


「ふぇ?はい……」


「そもそも、魔法ってどうやって使うの?」


「魔法が使えない」ということを解決するのに、そもそも魔法とはなんなのかが分からない。

ならば、今から理解するしかない。


「そんな、わからないです。そんなこと」


「は?どういうことよ」


「今まで何も考えなくても使えたのにどうして……」


まさか……!

嫌な考えが頭をよぎる


「あんた、あの時、言ったわね?『わたしの魔法は、相手の体の魔素を引っ張っている』って、それってどういうこと?」


「どういうことって、魔素を引っ張っているだけです」


「そうじゃない。魔素を引っ張るって何故わかるの?あんたには、魔素っていうのが見えてるの?」


「魔素なんて見えませんよ!!この魔法を使った時に、ノル様が魔素を引っ張ってるって……」


やっぱりか……!

この子、魔素を引っ張ってるっていう自覚はないのか。

人は腕を動かす時に、神経にどういう命令を与えて、筋肉をどうする何かを自覚してやらない。

それと同じように「できて当たり前のこと」を生まれた時から当たり前にやっているだけのこと。

そして、「魔素を引っ張ってる」っていうのは、親であるノルの言ったことを知識として知っている。

そういうことか。


だったら、


「魔法が使えなくなって、何か変わったことはある?」


「変わったこと?祐理さんに魔法を使ってから少し体が重くなったというか、苦しくなったというか、そういう感じがします」


それか!!!


「その感じは今までに感じたことはある?」


「初めてですぅ。こんなの」


前と今とで違うこと。

大きなことが一つある。


それは「フィーアの依代」がいるかいないか。

前はノルが依代になっていたから、こんなことにはならなかった。

けど、今はノルが死んでフィーアの依代がいない状態。

つまり、フィーアの魔素が魔法を使えるほど残っていないのだ。


全て、取り敢えず町や宿を見つけてからゆっくり考えようということから起きたことだった。

早い内にフィーアの依代をどうするかを考えておかなければならなかった。

依代がいないということを軽視しすぎた

そういうことだった。


ならば、やることは一つになる。

色々とぶっつけ本番になるけどやるしかない。



 ■ ■ ■ 



やばいやばいやばい。


時間を稼ぐといったがさすがにきつい。


「ハア……ハア……ハア…」


「バアウ!!」


「チィッ!」


飛びついてくる狼を避け続ける。

しかも、鈴音たちのほうに行かないように牽制をしながら。

それがいつまでもできるわけもない。

何度も掠り傷を負うがそれだけで済んでいるのは一種の奇跡か。

だが、


「グルオゥン!!」


「ガッ!?」


ここでタックル!?

避けきれず押し倒される。


「クッソッ!」


押し返すために殴ろうにも蹴ろうにも避けられてしまう。

チクショウ!ここまでか!


「ガウ!?グウウウウウウウウウウウウウ……」


「うおおおおおおおおおおおおお!?!?」


唐突に俺の上にいる狼が俺を押し潰さんばかりに体重をかけてくる!

だが、これはおかしい。

この狼こんなに重かったか?

さすがにこんなに重くなかった。

それじゃなんだこれ?


「ユーリさんおまたせしました!!」


この声はフィーアか!

立ち直れたのか

安堵と共に現状が分かった。



狼を地面に引っ張ってるのか。

狼と地面の間に俺を挟んで。

なるほどな~。



「なるほどじゃねえよ!!潰れる潰れる!!っていうかうおおおおお!!!この狼何耐えながら俺食おうとしてんだ!!!」


必死に狼の口を押えながら叫ぶ。


これはこれでどうすんだ!!


「あ!すみませんユーリさん!えい!!」


俺の上にいた狼が俺の上から転がり落ち、そのまま地面に拘束される。


ようやく何とかなったか。

安堵と共に疲れが一気にこみ上げる。


そういえば、鈴音は?

鈴音のほうを見ると、苦しそうにしてはいるが外傷はない。

よかった。


最後の安堵と共に視界は真っ暗になり意識を手放した。



すみません

更新大変遅くなりました

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