5話 精霊達のいざこざ
遅くなってしまってすみません。
また、1から4話全て改稿しましたのでそちらのほうもよろしくお願いします。
(主にセリフ回しなどの変更です。ストーリー根幹には変更はありません)
「「ノルが死んでるうううう!?」」
フィーアが言い出した衝撃の事実だった。
「いやいやいや、なんでさ!あいつ「儂らを楽しませてみよ」とか言ってたじゃん!?」
「そうよ。何、今もこの混乱するあたしたちを見て笑いこけてるんじゃないの!?」
俺たち二人は申し訳なさそうにしているフィーアにあわてて質問する。
「……それが、あなたたちを転移させた後、ノル様がトレス姉さんに乗っ取られたんです」
「「トレスか!」」
あまりの驚きにまた叫びが重なる。
――トレス。
フィーアと一緒にいたフィーアより少し大きい少女。
鈴音と言い合っていた少女。
まさか、あいつが……。
「まさか、あの娘が……!」
鈴音も驚きを隠しきれないようだ。
ちょっと待て、ここは一旦おちつけ。
「ノルが死んでる」となるとさっきまでの俺たちの推測は違ってくる。
特に、「フィーアがノルに切り捨てられた」ではなく、「フィーアがトレスに裏切られた」ということ。
そして、「俺たちが召喚されたのは100%ノルの暇つぶしである」という所も疑わしくなった。
ノルがトレスに乗せられた。
その可能性さえ出てくる。
ただ、幸にも不幸にもこれからの行動にはほとんど変わりない。
「ノルに会いに行く」から「トレスに会いに行く」に変わるだけ。
それだけだ。
「トレスに会ってどういうことかを確認する!!さっきの森に戻るぞ!!!」
「それができないんです!!!!」
フィーアがこれまでに一番大きな悲痛の叫びをあげる。
「な、なんでだよ」
「ノル様を乗っ取ったトレス姉さんが、森全体に結界を張ってしまって、戻れないんです」
「結界?確認だがそれを破ったり外したりすることは……」
「できたらやってます……」
まあ、そうだろうな。
「つまり、あれか。トレスに会うことは現状不可能ということか」
「はい……」
おいおい。
一気に目標の難易度上がったぞ。
さて、どうするか……。
「とりあえず、場所を変えましょうよ。こんな何処かの道より適当な町か何かに行ったほうがいいでしょ」
「それもそうだな。んじゃ、近くの町にでも行きますか。フィーア、道案内よろしく」
「ふぇ!私ですか!?」
「そりゃそうでしょ。あたしたち、この世界知らないし」
「そ、そうですよね……」
なんかフィーアの様子がおかしい。
明らかにおかしい。
いや、まさか。
嫌な予感がする。
だんだん冷や汗が出てきたぞ。
ちらっと鈴音のほうを見ると俺と同じ様な状態だった。
「まさか、フィーアさん?ここがどこかわからないとか、どの方向に進めば町があるかが分らないとか、そんなことないよね?」
「!!…………。コクリ」
事実上の異世界で迷子だった。
「取り敢えず現状まとめんぞ。」
正直ここがどこかも分からない以上、闇雲に動き回るのも下策だろう。
取り敢えず今は要点をまとめる。
「まず、目的はトレスに会うこと。どう転がってもトレスには話をきかせてもらう。これに関しては、フィーアも鈴音も問題ないな」
「もちろん。あたしは問題ないわよ。話を聴いて必要なら殴ってやるわ!」
「はい。トレス姉さんにはノル様を色々聞きたいことがあります」
「じゃあ、本題だな。フィーア、さっき言ってた結界とやらをどうにかする方法はあるのか?」
「すみません。全然、検討もつかなくて……」
「まあ、そうなってくると仕方ない。それはもう後回しだ。今、考えてもどうにもならなそうだ。」
「すみません。力になれなくて……」
「大丈夫よ。今はわかることを話してちょうだい」
「はい……」
「それじゃ、次だ。ここから移動しようにもどこに町や村があるかわからない。そういう状況だ。どうするよ?」
「取り敢えず、そこに道はあるからそれに沿っていけばどこかに着くんじゃない?」
「まあそりゃそうだが、その「どこか」までどのくらい距離があるかって所だが、それしかないよな」
できれば野宿はしたくない。
なんせテントもなければ、寝袋もない。
そんな状態で野宿は下手すれば死ぬ。
死ななくてもこれからに支障が出るだろう。
ただ、こうやって時間を潰していても野宿へのタイムリミットが近づく。
「やっぱりそうなるよな、歩くしかないよな」
「歩きながら話しましょ」
道に沿って歩き出した。
■ ■ ■
「ところで、フィーアが使ってたあの魔法なんだが、ありゃ、重力を操ってんのか?」
「あっ、違いますよ。対象の魔素を反応させて、体を地面の方向に引っ張ってるんです」
「魔素って、空気中に漂ってる物質ってやつだったか」
「あっはい。そうですね。それを少しだけ操作できるんです。まだ、ほんとに少しですけど」
「少しって、あれでか?割とマジで動けなかったんだが……」
「祐理、あんた半人半霊になってんのよ。精霊の体は魔素でできてるって説明されたわよね」
「ああ、そういえばそんな話もあったな。つまり俺は体内の魔素も普通の人間より多いんだな。それで、その影響を強く受けたってわけか。」
「……ところで、この目の前にいるこの狼みたいな生物、ひょっとしてやばい?」