2話 俺と幼馴染と40cmの少女と50cmの少女と20mの木
2017/01/22 改稿しました
「起きてください。起きてくださいよぅ。アカセさん」
体が揺さぶられる。
どうやら、俺はまた倒れているらしい。
別に体が弱いわけではないが、これだけ倒れると先行きが不安になる。
「ん……ここは?」
『すまんのう。まさかこんなことになるとは思わんで』
耳から聞こえるというよりは頭に直接声が響く。
「また、森の中か……。今度はどっから声が聞こえてるんだ?」
『どこからも何も目の前じゃよ』
「は?」
目の前には高さ約20mほどの木しかない。
強いてあげるのであれば、妙にこそこそし始めたフィーアぐらいなもの。
訳が分からないと首をかしげる。
「アカセさん。前のこの大きな木こそノル様ですよ」
「あん?木が?」
『その様子じゃと信じとらんのか?仕方ないのぅ。このままじゃ、お主、儂が何を言っても聞く気がないじゃろ。』
そりゃ、何なのかわからない得体のしれない声を信じることはできない。
「とりあえず、姿を見せてくれないか。信用に値するか現状だと判断しようもない」
『はぁ。しかたない、あんまりしたくないが、こうするしかないのかのぅ。本当はもう少し後の段取りじゃったんだが、先に回すかの。トレス、彼女をここに』
「ええ?もう!?静かにしてもらうのにあんなに大変だったのに?」
なんか木の中からまた別の声が聞こえる。
ん?なんか、フィーアがだんだん、俺を壁にして木から隠れ始めてないか?
「うぅ……」
なんか少し震えてないか?こいつ。
「早く出しなさいよ!ねえったら!!殴るわよ!!」
「さっきから、私を蹴ったり殴ったりしてるでしょうが!今更殴る宣言おそいのよ!!」
なんかすごく聞き覚えのある声が聞こえる。
さっきから嫌な予感が本格的に止まらない。
「ひょっとして俺の身内が厄介になったり……してませんよねえ。」
「してんのよ!!」
『残念ながらの』
「はぁ」
三者三様の肯定の意思表示だった。
今の会話で確定した。あそこにいる俺の身内。
水崎鈴音。
俺の幼馴染兼家族。
といっても別に結婚だ同棲だとかのような話ではない。
ただ色々あって俺が水崎家にお世話になっているだけ。
その鈴音がここにいるらしい。
「ん?何よ?祐理が目を覚ましたの?」
「そうよ。今すぐそこにいるわよ。まだあなたをここから出す気もないし、彼を見せる気もないけど」
「そう。それじゃノル様、そしてトレスもよ。あんたらの正体は何なの?どう見ても人間というには小さすぎる」
「へ?それってどういうことよ?彼のことよりも、私たちの正体?いいの?ちゃんと会って確認しなくて。ぼろぼろの状態かもしれないわよ」
「それはない。大体、さっきのそいつの声聞けばわかるでしょ。そいつはそこでピンチってわけじゃない。それがわかれば他に優先することはある。それだけよ」
「声だけでそこまでの確信が持てるってどういうことよ……。そして、あんた妙に落ち着いたじゃない。どうしたの?さっきまであんなに暴れまくってたのに」
「ああ。あれはそいつの状況がわからなかったから。今あたしたちがどういう状況にいるのかがわからない挙句に、そいつの意識がない。そりゃ、そいつの所に行って色々確認したいでしょ。そこで、あんたたちがそれを妨害してくるんだもの。そりゃ暴れもするわよ」
ああ。
鈴音はそういう奴だ。
自分にとっての大事なものを見失わない。
ただ、俺のために暴れてくれたのは素直にうれしい。
それならば、俺も鈴音を第一に考えるべきだ。
「すまないがノル様。鈴音を出してやってくれないか。おそらく、あいつと一緒にあなたの話を聞くのが一番手っ取り早そうだ」
こうするのがベスト。
それに、鈴音もいたほうが話が円滑に進みそうな気もする。
取り敢えず、今は見方が多いに越したことはない。
『別に儂は出さないとは言っておらなんだが。トレス早く出してやりなさい。』
「ちぇ、ノル様に言われたら仕方ないか。ほら、出るわよ。娑婆の空気がすえるわよ。やったじゃない」
「あんたらが勝手に私を捕まえたんじゃない……」
木の一部が光りだす
すると木の中から二人の少女が出てきた。
一人は身長約50cmほどだろうか。それくらいの少女。
フィーアがかよわく、かわいらしいという印象なのに対して、おそらく気が強くて微笑ましいといった印象か。
おそらくさっきまで鈴音と話していたトレスという少女だろう。
そしてもう一人は……正直見慣れたといっていい。
少し茶色がかかった黒髪に左側の肩まであるサイドテール。
勝気で自信に満ちた目。
身長約160cmで少しやせ目な体つき。
水崎鈴音そのひとだった。
「何そんなところで座り込んでるのよ!祐理!!早く立ちなさい!」
再会した途端にこれかい。
こんなに俺に無茶苦茶いうのこいつぐらいだっての。
「立てれば苦労はないんですけどねえ。なんか知らんけどまったく立てないんですよねぇ」
「は?」
『仕方がないじゃろうな。まだ精神がその体に定着して間もない。そのうえ、召喚トラブルもあって、体が不安定じゃろうしな』
また、その「召喚」か。
しかも体が安定していないときた。
わからないことは今のうち聞いておかないとな。
「そうだ。その召喚ってのは何の話だ?そこのフィーアも召喚者?とかなんとか言ってたが」
「そういえばトレスもそんなこと言ってたわね。あんたのせいでトラブルが起きたとかなんとか」
なんだ?鈴音も聞いてたのか。召喚やらトラブルやらというのを。
「フィーア。あんた、なに漏らしてるのよ。説明しなくちゃいけなくなったじゃない!」
「そんな!姉さんこそしっかり言っちゃってるじゃないですか!」
そして小さな少女二人はなんか喧嘩をはじめそうな勢いだな。おい。
五十歩百歩だろ。
『そのへんでやめい。二人とも。どちらにせよ、この者らには説明せねばならん。儂が説明するから、二人は静かにしておれ』
フィーアとトレスがいがみ合ったまま二、三歩後ろに下がった。
どうやら、ノル様にはちゃんと従うようだな。
『まず、ここはお主らが生きておった世界とは違う。まあ、おぬしらからしたらここは異世界というものじゃな』
おいおいおいおい。
いきなり、ここは異世界ですときた。