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人見知り冒険奇譚  作者: ふぁくとりー
初めてのVRMMO
8/40

細工を始めよう。

日間ランキングに載ってるよ〜ありがとうございます〜みたいなのを人気作品でよく見かけていたけど、まさか自分にそんな日が来るとか思ってなかった。

こんな暴走思いつき作品を読んでくれてありがとうございます!

ランキングなどこれきりだから精進してまいります。

お昼に帰ると予想通り、父が私の手を無言でズルズル引っ張って道場まで連れていく。

父曰く、「……親娘のスキンシップ」だとか。過激なスキンシップもあったものだ。


とはいえ格闘は嫌いではないので、精一杯相手をしては床に蹴倒され殴り飛ばされること十数回。私はすっかり息が上がり、立てなくなった。

高校入学に際して、まぁなんと体力の落ちたことか。


けれど、ここ二日は心なしか父の攻撃に対する反応速度が上がった気がする。

それもそうだ、私がやっている『ゲーム』は、いつでも明確な「死」というペナルティが待っている。


リアルの方では味わえない緊張感だ。


さて、夕飯お風呂宿題諸々の全てを終わらせて、私はログインをする。

ゲーム時刻現在昼の二時。私はギョッとされるのに幾分慣れて来た気がする。


……慣れていいのかこんなこと。


気を取り直して、細工を始めよう。チュートリアルを受諾する。

今度ばかりはあのおっさんのムカつく声には引っかから



<細工を取ったアホがいると聞いて参上したでござる。チュートリアルを始めるでござる>


ハマリ役でいきなり人をdisりつつ流れ出した声。

落ち着け落ち着くのだ。これは運営の罠。


さて、気を取り直して、


<奇特なお主はまずは細工は魔法・無を持たねば使えないと言うことを知っておくべきでござるなぁ。アハハハーハハハハハハッ>


<このアイテムは破壊できません>


おっと知らぬうちに噴水の縁を叩いていたようだ。ガンとか音キレすぎてて全然聞こえなかった。


<と言うわけでまずはお店に行って、、材料を手に入れるでござる>

ハンスの店への入店許可が出ました。

ルートの案内を開始しますか?

YES/NO


YESだYES。私はてしっとホログラムを叩くと、足が自然に動き始めた。

き、気持ち悪い。


足取りは迷いなくかなり怪しい裏路地に入っていく。次に迷わないようSSを取りながら、私は周囲の薄暗さに背中に汗がにじむと錯覚する。


ところが思い出してしまった。


今現在の私の格好を客観的に描写してみよう。

ツノを隠すために黒いマントのフードをかぶっていて、ホッケーマスクをしている。そして、その黒いマントは膝まですっぽり私の体を覆い、足は包帯っぽくテーピングが巻かれている。


はっきり言おう、不審者だ。

しかも裏路地がすごく良く似合う。


いや自業自得という他ないんだけどもね。

と、足は急に停止した。目の前にあるのは、ガーゴイルっぽい像が両サイドに置かれて、店ががっつり蔦の絡まる小屋だ。ハ◯ポタのハ◯リッドの家といえばすごく良くわかるが、あれに似ていて怪しさ5倍くらいだ。


オブラートに包んでいえば変わっている、直截的にいえば趣味わりーよ。

ガーゴイルの両サイドに歩み寄っていくと、ギロリと睨まれた。


……ハシビロコウっぽい。


ガーゴイルは私を遠慮なくジロジロと眺めて、それからフンスッ(待て石像だろ)と鼻息を鳴らして、私を通過させた。どうやらさっきの入店許可とはこういうことらしい。


ドアをゆっくり開けると、頭上から「ケヒヒヒヒッ」という声が聞こえて来た。本当に悪趣味である。ドアベルくらいまともにつけろ。


店の中は、まさしく雑多という他ない。私は溜息をつきつつ、中に歩み入る。

フードをかぶった老人が、私を見る。カウンター越しに紫の瞳と目があって、どことなくたじろぎそうになる。


「イラッシャーイ。オキャクサ、ナニオサガシ?」


「とりあえず今までのシリアスを売ってください」

「シリアスネー。イチジカーン1000エルヨー?」

「やっぱいいです」


と、インフォが流れた。

<ついたでござるか?店主はツッコミ待ちでござる>

いらねーよそんな設定は。趣味が悪いなら最初から最後まで貫いてくれ。


<銀のインゴット(小)を買うでござるよ。値段は1000エルでござる。値切り交渉すると好感度が下がるでござる。次から売ってもらうインゴットのグラムが30g減るでござる>


意外と親切なのか?わからなくなって来た。

「銀のインゴット(小)ありますか?」

「オーオキャクサメガタカーイ、ハイ」


手渡されたのは、手にすっぽり収まるくらいのものだ。私はさっさと1000エルを支払った。


銀のインゴット(小)

銀100gのインゴット。ハンスが自分で採掘・精錬・品質検査を行った上質な銀。


ジジイ元気だなおい。


「オーオキャクサ、オツリイル?」

「はぁ?」

肯定と受け取ったのか、彼はゴソゴソやって私の手に一つの小さなルビーを乗っけて来た。


「オキャクサ、カミトシリアイ。チーフノカミオキャクサシンセツ、ヨロコブ」

「えっあっはい」

ちょっと気が動転して100エル余計に支払って、おじいさんにその後十分留められたのは余談である。


さて、ハンスさんに会って貸し作業場の前に来ると、インフォが届いた。

<フン、奇特な人間など俺には理解できないでござるよ。ああ、とりあえず運営の方から一応であるが贈り物、届いているでござるよ>

運営からプレゼントが届いています!

開けますか? YES/NO


それを開くと中からは彫金セットやら針など、いろんな道具が出て来た。

私はそれを確認して、貸し作業場に入る。うさぎとヘビのドロップ金で、まだ一応1200エルは残っている。


迷わず三時間を取ると、作業場に入ってちょっと驚いた。

昨日の簡素なものだけでなく、研磨台など、ちょっとした色々が増えていたのだ。恐らく、チュートリアル中であるのも原因なのか?


…困ってなくてもGMコール。


『はいもしもしこちらGM』

『毎度お馴染みのフォルフィフォーケンです』

『んあーー。フィーちゃんね!ハイハイ。で何?』

相変わらずチーフ軽いな。大丈夫か?


『貸し作業場って一律じゃないんですか?錬金のチュートリアルの時と部屋の様相が違っていて』

『ああ、チュートリアルの時はその設備に変化するんだよ。で、それが終わったら有効化(アクティベート)されてるスキル全てのものが出て来るんだよ。料理スキルのコンロとか持ち歩きに不便だし』

なるほどそういうことか。


ふと気になって、私は尋ねた。

『錬金のチュートリアルの声って誰なんですか?』

『ん?人気声優の羽賀英里(ハガエイリ)だよ?高かったよ雇うの』

『下らないことに労力割くなよアホかあんたら』

『チーフ、そろそろ会議が始まります。電話中にもかかわらず申し訳ありませんけど』

『んあ?あっれ、もうこんな時間?』

『はい。GMコールであんまり遊ばないでくださいね?』

『うぇい。んじゃまたねフィーちゃん』


…作業するか。


<まずは銀に魔力を流してグニャグニャにするでござるよ。いい年ぶっこいて粘土遊びに励むがいいでござる、ククク>


なんとなくムカつくが、黙って銀に魔力を流す。と、銀は徐々にクレイシルバーのように変化した。


<次に形成して、作業場の研磨台の右下にある窯で十五分二十秒焼いたら完成でござる>

手順ぶっ飛ばすな。錬金の時のおっさんが可愛く見えるレベルだ。

私は粘土をこねこね、そういえばさっきのルビーもはめ込むかと思い、一つ台座を作り上げることにした。


四角い銀の長方形の板をいくつも作り上げると、繋げられるように穴を開け、面に細かく模様を刻んでいく。宝石を台座として繋げるならこの方がサイズ調整もできそうだしこれでいい。


いくつか模様を刻んだところで、ちょっと考えて漁ると『転写紙』というのが出てきた。私はくらっとした。

今までの苦労を返せ。


鑑定の結果がこれだ。


転写紙

同じ模様を記憶し転写する。効果は永続的、再利用可能。耐久値∞


私は早速それを使って作業を簡略化し、そして最後に台座を作り上げて一呼吸した。首を左右に曲げつつ、私はそれを全て放り込んで鑑定。


魔力窯

魔力を注ぐことで、中で焼くものの品質が決まる。現在中に作品の卵が放り込まれている。焼きすぎると爆発する。

推奨焼き時間 12分55秒


ああああああぶねえええええ!!!!!

爆発とかしちゃうんだ⁉︎怖い!怖すぎるよ!


…ふぅ、落ち着こう。それにしても、この鑑定様様だ。私は時間をホログラムでセットして、魔力を注ぐところに手を置いて焼き始める。


十二分は案外長く、私の魔力はすっからかんだ。リアルで十二分以上しっかりかかっていたのもまた運営のにくい仕事だ。

焼きあがったものを取り出すと、微妙な色合いのそれが出て来る。今から磨かねばならないのだ。


大雑把に紙やすりで表面を整えた後、磨き用の布と薬剤を取り出すと、ひたすらパーツを磨いていく。

きゅ、きゅ、きゅ、きゅ……。


きゅ…。

このくらいでいいだろう。

オーバルブリリアントにカットされていたルビーを取り出すと、私は台座にはめ込んで立ち上がった部分をペンチで丁寧にルビーを傷つけないよう折り曲げて固定すると、一息ついた。


残り時間はすでに三十分。まずいな。

丸カンという輪っかになった金具を使って、それぞれの板を止めながら、手首の長さに当てはめてようやく完成した。


魔銀のブレスレット(フォルフィフォーケン作)

ランクC+

ルビーが連結されている魔銀のブレスレット。

INT+15

DEX+10

耐火(微)


…うん?私普通の銀のインゴット使ってたよな?

ま、仕様なのかもしれないしいいか。


<ま、まぁよくやったでござる。またいつでも頼るでござるよ…暇だったら相手してやるでござる>

ツンデレかっ!!!!!

私のツッコミは、虚空に虚しく響き渡っただけだった。


<レシピに『魔銀のブレスレット』『パーツ : オリジナル①』が加わりました>

<細工のレベルが2上昇しました>

<『細工師の卵』の称号を獲得しました。新たに『宝飾』スキルが取得されます>

<魔法・無のレベルが1上昇しました>


インフォが一気にきた。一つずつ確認していこう。

レシピは今まで通りだ。

ブレスレットはともかく、パーツの方は小分けにして修理が簡単なようにしたからだろう。


『細工師の卵』

DEXが細工の時わずかに上昇する。


効果はそこそこだ。特には考えなくて良さそうだし、放置放置。

問題は『宝飾』スキルだ。

これはおそらく、いや間違いなく、ルビーをはめ込んだせいだ。私は恐る恐るそのスキルを確認する。


『宝飾』

細工に際して宝石を使ったランクC以上の品を作ることで取得可能。

宝飾品を作ることによりレベル上昇、細密な鎖などの製作が可能になる。


嬉しい誤算だ。とりあえず、今は——


『残り時間 3分19秒』

片付けをするべきだろう。



フォルフィフォーケン LV11

種族 カンヘル


HP 90/90

MP 126/126

STR 0

INT 96(+15)

VIT 70

AGI 13

DEX 10(+10)

LUK ±100(上限100)


スキル : 細工LV2(↑2) 魔法・無LV2(↑1) 錬金術LV2 料理LV- グラム判断(New!)LV- 宝飾(New!)LV-


レシピ(New!)

・ポーション改

・魔銀のブレスレット(New!)

・パーツ : オリジナル①(New!)


残ポイント0


称号

『持たざる者』ソロの状態でLUK増加・微

『暴き屋』PKK行為により24時間ステータス全てに+100

『錬金術師のタマゴ』錬金に際し、LUKに関わらず錬金成功率を1%上昇させる。

『細工師の卵』(New!)DEXが細工の時わずかに上昇する。



装備

しょしんしゃのいんなー(AGI+3)

くろのまんと

ホッケーマスク

のろいのくつ(効果 蹴りにより相手にランダムの状態異常・微)

テーピング(AGI+10)

魔銀のブレスレット(フォルフィフォーケン作)

ランクC+

ルビーが連結されている魔銀のブレスレット。

INT+15

DEX+10

耐火(微)

ちなみに現在存在する全ての細工品で、最大効果はINT+3。

ぶっ壊れ性能を叩き出していることに気づかないフィーちゃん。


======

ご指摘によりブレスレットを装備させました。うっかりすぎる…。


======

ご指摘により、焼き時間表記を統一させました。

加えて貸し作業場の残り時間の秒数と表記を変更しました。

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