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人見知り冒険奇譚  作者: ふぁくとりー
初めてのVRMMO
7/40

リアルサイド1

短めですが、リアルの話です。

主人公の会話が成立しているのが不思議な件について。

四月半ばの風が柔らかく吹いている。

あたりには桜が散りかけていて、新学期の雰囲気を感じさせる。


そう、そして花粉症もすでに到来している。


「ぅえくちっ」

「あーーーーー!!!!!いた!ナツ!」

「…ぇ、」

まともな声が出ない。ああどうしよう心の中ではこんなに饒舌なんだけどな。

「掲示板!しかも!ねぇ!なにあの装備!」

「…ぉ、ち」

「落ちつけるかっての!」


照菜が暴走しつつ、私のメガネをかけ前髪が深くかぶった顔をムニムニと引っ張り始めた。

高校生にもなってその八つ当たりの仕方はどうなんだと言いたいがな。


「だいたい何よりナツは常識を身につけなさい!掲示板くらい読んでよね!」

「…め、どい、…ゃっ」

「『めんどくさいからいや』って通用しないからね!第一陣のトッププレイヤーには戦いしか許されないんだからね。ところで、スキルはなにをとってるの?」


私は正直に全て書き出す。しかし、その顔つきは怒りと脱力感がないまぜになったようなそれである。

「…ねぇナツ?あなたスキルも事前に調べてないでしょ」

「…ょ、った…ね」

「『よくわかったね』じゃ……ないわよおおおおおお!」


どうやらβ版で事前にある程度のスキルの解析は済んでいたらしい。なんてこった、ネット無精が裏目に出たぜ。

ネトゲは守備範囲外だったからなぁ……でも昨日の錬金は楽しかった。

今日は細工の予定なのだ。


「聞いてる?」

左右に首を振る。


「ハァ…二週間後、GWに、イベントが開催されるのよ。ナツは結構いいとこまで行けると思うわ」

「ぃ、べ…と?」

「そう、イベント。全プレーヤー参加型のバトルロワイアルよ。ほんとナツは見てないわね、その間に運営もかなり遊ぶから、絶対はちゃめちゃになるんでしょうけど」


全員強制参加とかどんな無理ゲーだ。ログインしてたら強制的にイベント会場へ転移されるらしい。

時間加速は5倍となり、途中で退場は基本的には不可能らしい。

運営は一体なにをやらかすのだろうか?


「と、いうわけで、レベル上げ手伝ってよナツ」

「あし…でき…ぃ」

「『明日はできない』?じゃあ、今度の土日でいいから。それにしても、ナツはどれくらいレベルが上がったの?あたしたちより随分先だと思うんだけど」


私は首をこてりと傾げた。あのくらいの強さでなにをいうのか。

ぶっちゃけ、STR補正のあるトンファーは嫌だ。徒手空拳で戦うのが楽しいのに。


「じゅ、ぃ…ち」


時間が止まった。


「『11』……?聞き間違いじゃ、ないわよね。ねぇナツ……ふふ……トッププレイヤーがどれくらいのレベルなのか……知ってるのかな?かな?」

左右に首を振ると、照菜の口がぐばあと左右に引き裂くように笑った。

悪役吸血鬼も真っ青なフハハ顔である。

「五よ!最初はシステムの補正なしじゃ生きていけないんだから!死に戻りも何回したことか!これだからリアルチートはあああああ!!!!!」


リアルチートを名乗っていいのはルーデルさんだけだと思う。

あ、いやそれに付き合ってた軍医もか?


「……もう、いいや。いまに始まったことじゃないしね。あ、そろそろHRだから、引き上げるわ。お昼一緒に食べようね!」

ん?お昼?

今日は明日の新入生歓迎会に向けて上の学年が頑張るため、私たち一年はお昼で終わりだったと思うのだが。

「て、…な。ょ、ぅ……半ドン」

「え?『今日半ドン』?」



時間が再度止まった。


「レベル上げ、……手伝って」

「ぃ、がしぃ」

「『忙しい』とか言わずに。そこをなんとか」

「やっ」


「オラァ!そろそろHRだぞ。ほら照菜の方はとっとと席に戻れよ」

「あっ、すいませーん」

先生が異様に機嫌が良さそうな顔である。私は内心あの鬼みたいなひしゃげた顔でも愉快そうな顔をするのだと目からウロコが落ちるような思いをしつつ、先生の話をスルーしていた。


先生の名前は、武山(たけやま)明日照(あさひ)。とんだキラキラネームだが、あだ名はアステルで統一されている。

私なんか無口メガネだのメガネチビだのミニマム根暗だのひどい言われようである。


なんで自分のあだ名なんか知ってるのかと言われても、両親の教えで「半径10mくらいに物が入ってきたり僅かな音でも聞き取れるように訓練しましょ♪」と言われた。

あの時は富士山の樹海に放り込まれて、随分怖い思いをした。一応GPSはつけられたけれど。


「そうだ!最近はやりのVRMMOだがな。俺も始めたぞ!楽しいぞ!ははっ!」

「え、先生ZFGで殺ってるんですか?」

おい照菜それはいささかアレだぞ。音声じゃなきゃ色々とだめだぞ。


「おう、そうだ。なかなかうまくいかんな。うさぎで死に戻りも経験した」

「あー、あれはキツイですよね。そういえば——」


え?うさぎって死に戻りすんの?

昨日の蛇はさすがに肝が冷えたけど、それ以外はそうでもなかったよね?


…なかったよね?


こうして掲示板を見るのはさらに億劫になり、私はおかしなスタイルを極めていくはめに(自業自得で)なるのである。

ちなみに夏菜は顔を隠していれば、心の半分くらいは表に出せます。

顔を出すとポンコツ。


======

さすがに夏菜の発言がわかりにくいと指摘を受けたので、ちょっと修正します。

テーナーの発言を見るとちゃんとわかるようにしました。

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