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人見知り冒険奇譚  作者: ふぁくとりー
初めてのVRMMO
15/40

レイドボスと新たなる頭痛の種

感想をかなりいただいています。

修正回数がとんでもないことになっている気がする……。


バトルは難しい!

<レイドボス『白蛇の神使』が目覚めました>

<レイドシステムが解放されました>


目の前に浮かぶ野暮ったい<レイドボス『白蛇の神使』に挑みますか?YES/NO>という表示も面倒だ。YESに手を叩きつける。


トンファーを装備して、目の前の大蛇に襲いかかる。さいっこうにハイってやつだァ!!!!!


白蛇はその鎌首をもたげ、左右に揺らして私めがけて弾丸のように首が襲いかかる。

地を蹴って移動していたのを、急遽体をひねって近くの木に脚を叩きつけ、空中で無理やり方向転換する。


無防備な胴体が、目の前に来る。

「フッ!」

振り抜いたトンファーは、しかしながら、ガキィン!と言う音とともに阻まれた。


「な、」

鉄をまともに叩いたような手応え。同時に槍のようなものが背後からグアッと迫って来る。


「グゥッ」

トンファーで受け流したが、肩に鈍い痛みが走る。流す時に叩き込まれたのだ。

飛んで来たのは尻尾。

尻尾にあるまじき強度だぞ。尻尾に謝れ。


が、そんな悠長に突っ込んでいる時間はない。背後から迫ってきている。

何がって?


その硬い鱗がびっしり生えた肉壁。私を締め付け、押しつぶし、砕くべく。

あれは死ぬ。間違いなく。


私は精一杯体を動かそうとするが、壁の方がわずかに早い。足だけがっつり巻きつかれてしまった。

トンファーを握っていなければ、もう少し器用に動けて抜け出せた。これは完全にミスチョイスだった。咄嗟の判断が、甘い。


今までの攻防はわずかな時間。それでも、蛇にとっては体勢を崩した私を締め付けるためには十分すぎるほどだ。


蛇は、食らう前に獲物を締め付けて殺すと言うが、これは個人的には父親の4の字固めより激痛だ。


ルーデルさん脚吹っ飛んだのによく平然と着陸したね。さすがリアルチート。

ってんな場合じゃない。アンサイ◯ロペディアの敗北について語るのは後でいい。


ゲームだかなんだかはどうでもいい。ぶっちゃけ今の状況は、絶対絶命だ。

足だけでも潰れれば、この後要と言っていい機動力がなくなる。

それだけは、避けなければいけないのに。


ミシミシと音を立てて私の足は捻じ切れんばかりに圧力を加えられる。

「うがあああああああああ!」


やばいやばいやばい。

とにかく何とかして脱出しなきゃ、


どうしよう?


どうしようもない。


考えろ。

考えて足掻いて、それから——。





それは確かにギュルリと動いた。

近づいて一呑みにしてしまおうとした頭部。そして絶対絶命だと思った瞬間、それは大蛇の真っ赤な目を突き刺した。


尻尾だ。

私の尻尾が、動いている。


今まで戦闘の邪魔にならないようにしか動かなかったそれが、急激に神経が繋がったような感じで、動く。


ぎこちないが、尻尾を引き抜く前にかき回すようにしたら悲鳴が上がる。


『シャアアアアアアアアア!?!?!?』

緩め、緩め。


果たして、私の足はなんとか動かせるほどに緩んだ。一気に闘争心が熱を帯びる。


まだ、戦える。痛みはあるが、足は動く。

わずかに緩んだ締め付けから片足だけ引っこ抜く。物理攻撃ばかりで、まだ何一つ手は尽くしてなかった。

HPバーは、すでに三分の一を切っている。


ともかく、攻撃手段は今の所これだけか?

魔法攻撃もありそうだ。

しかも、頭の方をチラッと見たが、私の代わりに噛み付かれた木はどう言うわけか腐食していた。


ズズン、と言う音とともに木が断面の酷さを見せながら倒れる。

「ははは、……なんてクソゲー」

つまり攻撃を通すには、『目』を狙うしかない、と言うことか。

……なんて詰んだ強度のボスだ。


楽しい。

血が沸騰するように思える。やはり蛙の子は蛙。

両親が出会ったのも道場で死闘を演じたからだと言うしちょっと私の血筋おかしい。

そのうち髪が金色に逆立ってしまうんじゃないだろうか?


でも、まだ試しきれていないことがある。私はトンファーを手に持ったまま、脚に魔力を流し込む。


「<衝撃波(ショックウェーブ)>!」

一気に鱗は弾け飛んだ。

あぶねぇ。鱗のかけらが飛んで来る。トンファーで致命的なものだけを弾きつつ、私は後ずさる。


後に残っているのは、鱗が剥げ落ちて火傷の跡のようになった柔らかそうな部分であり、そこが露出している。

魔法を打ち込もうとしたが、弾かれる。


『シャアアアアアアアアアアアア』

威嚇音を出しながら、その鱗の弾け飛んだ部分を守る。

なるほど?


「鱗、全部剥がせばトンファーの攻撃も通るかな」

舌舐めずりをしたら、白蛇が少しだけ、小さく見えた。






……いやもう厄介である。

鱗を剥がしてフルボッコ。そこまではまぁよかった。

けれど、そこからが最も大変だった。

HPが少なくなったのが原因だろう。蛇の白い体が一気に赤く染まっていったのだ。そして、鱗が元に戻る。

元の木阿弥。

ラスボスの回復は卑怯だぞ!多分ラスボスじゃないと思うけど!


「嘘っ」

鱗に魔力が通らない。MPは随分前からすっからかんにほど近い。自然回復待ちだ。

問題は、鱗が紙装甲なくせに肉には魔力による攻撃しか通らなくなったこと。

鑑定結果はこれだ。


神使LV23 レイドボス

状態 : 暴走(バーサーク)

HP????/????

MP????/????


そのくせ全ての攻撃も変わりなく、むしろ毒攻撃が厄介になった。

ブレスというのか?そう、それが追加された。今の所影響があるのは、魔銀のブレスレットだけであったため、困ってはいない。


アシッドブレス。

そんな類の金属を溶かすものだ。

ブレスレットは、早々にアイテムボックスに突っ込んだ。

装備を溶かされてはたまらない。


それだけなら良いのだが、ブレス本体の風が最もきつい。どうしてミストのみにしないんだよ。

アシッドブレスだしそれだけでいいじゃん……。


トンファーで殴りつけ、攻撃をかわしたりしながら魔力の回復を待っていたが、だんだんフラストレーションが溜まって来る。


そういえばとふと思い出した。

バゲットサンド、残ってたっけ?

今思い出すことじゃ、と思ってはたと気がつく。


ドーピングアイテムじゃないか、まだ調べてない。


私は迷わずバゲットサンドを取り出して、噛みちぎった。味わう暇などないが、飲み込む。





魔力の増幅を感じた。



「っしゃああああ!!!!!運営(てん)は私に味方した!」

キャラが違う?

そんなことない戦闘中はハイになっちゃうの。

私は笑顔で鱗が剥げた部分を、『衝撃波(ショックウェーブ)』を纏った足で蹴り始めた。





気づけば蛇が、ぐったりした様子で動かなくなる。突然、叩きつけようとしていたトンファーは固定されたように動かなくなった。

攻撃をやめろと言うことか。


私はトンファーをアイテムボックスに突っ込んで、息を吐いた。


『人に敗北するとはな……貴様名をなんと言う?』

「フォルフィフォーケン」

『そうか。フォルフィフォーケン、貴様は我が力を持ってして収まり切らぬ器の持ち主……我が主に祝福を与えるように願い出ておこう』


<レイドボスが撃破されました>

<レイドシステムの凍結を行います>

<プレイヤー『フォルフィフォーケン』がレイドボス撃破ボーナスを入手しました>


アレ?


今のワールドインフォだよね?

……んんん?


嫌な予感がして、背中にじっとりとした何かを感じる。

冷や汗かそれとも——。


『と言うわけで今から貴様を祝福することになった分霊じゃ。末長くよろしく頼むぞ、フォルフィフォーケンよ』


<清めの神『ヴォルヘルニルツ』の祝福を獲得しました!>


背中に、一匹の蛇が張り付いていた。

……ウェイト。

これは一体どう言う状況か?

ヴォルヘルニルツの分霊自称祝福。

次回は、短いですが運営側のちょっとした話。


======

ご指摘により、⁉︎→!?に変更しました。

技名の二重鉤括弧抜けを修正しました。

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