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強欲なる嫉妬
「見慣れた天井に見慣れた部屋。」
カズヒロは私室のベッドの上にいた。
「慣れというのも怖いもんだな。」
起き上がり、早朝の空気を吸いに外へ出た。見渡すとアヴァリスは菜園で収穫をしている。
結局、時間が巻き戻ったようだ。
何も変わらない景色、何も変わらない現状。
黄昏ていると、収穫を終えたアヴァリスが近づいてくる。心配そうな彼女の表情をみていると、こちらが辛いのに悲しくなってくる。つい先程まで、彼女こそ敵だと思っていたのに。
朝食を済ませると、アヴァリスはいつも通り出掛る準備をしていた。
「彼女との時間をくれ。」
と、出掛け先のアヴァリスにそう話すと、少し困惑した様子だが、意図を理解したのか「了解しました。」と一言だけ残していった。
彼女を見送った後、最初にみた夢の少女が倒れていた森林へと向かう。
「読みが正しければ、とっ。」
カズヒロは胸にてを当て、試行錯誤で嫉妬の匂いとやらを出そうとする。
すると、濃紺の少女が現れた。
「私を呼んで頂けたことを光栄に思います。」