夢を観る
暗い部屋の中。
カーテンから覗く夕陽で、辛うじて現在位置が把握できた。
ここは見覚えがある、教室だ。
眼前の床には赤い液体、冷たい感触。
視界の奥には人らしき影がひとつ。
「...夫か、大丈夫か!」
教員の怒鳴り声で我に帰る。
自分の意識は教室に戻っていた。
惚けている自分に対し、教室の全員が冷たい視線を向けている事に気付く。
前にも授業中に魘されていたことがあり、クラスではすっかり狂人扱いを受けていた。
カズヒロ十七歳、大学受験を控える極普通の高校三年生のはずだった。
本日、最後の授業。
頭の中であの夢を思い返しながら、窓に視線を移した。
保健の先生曰く、受験も控えていることから、心労だろうと言われていた。
なら、目の前の光景も心労だろうか。
三階のベランダの無い窓の向こうで、フードの少年が話しかけている。
「君、退屈だね。」
次の瞬間、閃光と爆音が走った。
何時間気を失っていたのだろうか。
目を開ければ、見覚えのある教室。
ただ違うのは教室は血に染まり、フードの少年だけがいた。
夢と同じ光景、これも夢なんだと言い聞かせた。
が、突如襲う左腕の激痛と共に思い知らされる。
痛みを堪えるために握り締めようと左腕に伸ばすが空を切る。
左側は腕の代わりに大量の血溜まりがあった。
意識が遠のく中、誰かが声をかけている事に気づく。
「理想と現実、どちらを選びますか?」
再び開いた眼前に映る光景は、教員の睨み顏とクラスの冷たい視線があった。