記者の話5
支配人の部屋よりやや質素な客室に案内される。
キョロキョロと客室を物色する川崎を他所にソファに腰掛ける。
「……おい、川崎。」
「いやー、ワクワクするな!」
「人の話を聞け。」
「ん?なんだ?」
「……可笑しいと思わねぇか?円卓会議なんて……アーサー王物語みてぇな巫山戯た会議なんて……。」
「そうかな?」
「それに……」
“このサーカスは何か可笑しい”
その言葉が出て来ない。
真っ直ぐな目をした川崎に向かって言う勇気がなかった。
川崎が光属性なら、俺はノーマル属性だろう。
それ程の差があった。
「大丈夫だ。絶対いい記事になるぞ!」
結局、川崎の言葉に流される。
客室の扉をノックする音がした。
相手は例の副団長らしい。
「準備が出来ました。」
「よし、行くか。」
先陣に立つ川崎。
この時、川崎を止めていたら。
なんて、何度も後悔した。
「どうぞこちらへ。」
案内されたのは薄暗い部屋……部屋と言うより空間に近い。
目の前には鳥籠を半分に切断したような物が二つ。
外国の裁判で被告人が立たされる場所に似ている。
川崎がそれの左のヤツに立つように促され、俺は右隣の方に立つように言われた。
副団長が鍵をかけ、俺達の前に背を向けて立つ。
「これより、円卓会議を開廷します。」
副団長の言葉と同時にライトが当てられた。
眩しさに一瞬だけ視界の感覚が麻痺する。
「っ……」
目が慣れてきた。
まず、視界に飛び込んで来たのは議長の様に木槌を持ち、艶やかなカーブを描く円状のテーブルの向こう側に座る副団長。
その背後には魔王の様な椅子に優雅に座る支配人。
向かって左。副団長の右隣。
その席にはペストマスクを被った人物。
目の前に水晶を置き、頭には魔女のようなとんがり帽子。
花のコサージュを着けていることから、女性であると推測出来る。
向かって右。副団長の左隣。
巨漢が座っていた。
大柄な体格には似合わない、ダンボール箱で作られたTVを被っていた。
巨漢の隣には、あの人魚の歌姫がいた。
公演とは違い、紅い着物に狐面といった鮮やかな姿。
下半身は見えない。
それ以外は未だに死角にいるため分からない。
だが、
このサーカスは異常だ。
そう思うのには十分過ぎた。