表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面サーカス  作者:
序章
4/11

記者の話3

「サテサテ最初の演目はー?」


カボチャ頭の団長が(ふところ)からカードを取り出しシャッフルを始める。


扇のように開いたカードから1枚抜き取り、高々と宣言する。



「1番手、当サーカス自慢の歌姫・カワカミ嬢の妖艶なる美声を得とご覧あれ!!」




団長の合図とともにステージに大きな金魚鉢が荷台に乗せられてきた。

金魚鉢の淵には鮮やかな和風の衣装を身にまとった、黒髪の女性。



しかし、彼女も目元を覆った和風の仮面をしていた。



いや、注目すべきはそこではない。

名前でもなく、美しさでもない。

観客が1番注目したのは彼女の足。


本来なら足があるべき箇所が魚の下半身であった。

つまり人魚だ。


『よく出来た作り物だな。』

大半の客は俺と同じ事を思っているだろう。


人魚姫の歌が始まる。




昔、オペラを見に行ったことがあるがそれに負けてない。

いや、それ以上だ。

プロのオペラ歌手顔負けの、美しく透き通った声。




迂闊(うかつ)にも聞き入ってしまい、歌が終わると周りに釣られて拍手をしていた。




荷台が退場すると次の演目が発表される。










「続きましては、軽業師・タナカくんと踊り子・ローズ嬢による軽業と踊りのコラボレーションでゴザイマス!!!!」



団長の紹介と同時に、

桃色のフリルと花飾りをふんだんにあしらったバレリーナの衣装をまとい、仮面の代わりに花飾りで顔を覆った少女と

ガスマスクをした元気そうな少年が現れる。




そこから先は誰もがイメージする華やかなサーカスそのものだった。


踊り子少女率いる踊り子部隊が花が舞うように曲に合わせて踊り、

少年も2~3人を連れて空中ブランコやら玉乗り、ジャグリングを見せてくれた。




現時点で分かったことは2つある。

・団員は必ず顔を隠している。

・不気味な団長が仕切っている。



チラリと川崎の方を見たが、子供のようにサーカスを楽しんでいるだけだった。


呑気なヤツだ。


他の観客も川崎同様、誰しもが現実を忘れて演技に注目している。


その後の演目でも、俺の予想は大体当たっていた。




人魚のような和風面の歌姫。

花飾りの踊り子。

ガスマスクの軽業師。

大きな体の段ボール頭の猛獣使い。

怪しげなペストマスクのマジシャン。



最後はパレードのようなお祭り騒ぎで締めくくった。

拍手喝采の満員御礼といったところか。




「ではでは様!!チップの代わりに甘味をくださいませ!!」



どうやらチップ代わりに甘味を所望するらしい。

観客がステージに甘味類を投げる。


俺はコンビニで買った飴を投げておいた。

ちなみに川崎はスーパーで売ってるファミリーセットのチョコを丸ごと投げていた。



「ありがとうございます!ありがとうございます!!このパンプキン、大感激でゴザイマス!!

ではチップをくださいましたお客様方に一つだけ、注意を教えましょう」




団員が去り、暗闇の中をスポットライトの光だけが団長を照らす。















「当サーカスにはご覧の通り、『道化師(ピエロ)』が居りませぬ。

ですから悪戯好きな団員が



お客様の誰かを




道化師(ピエロ)として




当サーカスに招くかも知れません。




どうぞ、





お連れの方がいるお客様は






シッカリ確認の上、





お気をつけてお帰りクダサイマセ」






そのふざけたカボチャ頭が少しだけ、ほんの少しだけ笑ったように見えて。

悪寒がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ