■断章六 黄金の領域
■断章六 黄金の領域
全知全能とは言わぬまでも黄金の領域まで達した我が身に、このような想定外の事態が起きようとは思わなんだ。
『確率変動』だと? あの能力は使い果たして消え去ったはずではなかったのか? 再創世の再設定で初期化してしまったのだろうか。つくづく恋は盲目、つまらぬミスをしでかしたものだな。
我が分霊を組み込んだ以上、これ以上の再創世はもはやできぬ。故に私もまたチカとキョオと同じ時空を生きるか。やり直しなし。それもまた一興。
そして脳腫瘍か。治癒魔法は専門家ではないが我が『奇跡』をもってすれば癒すことは造作もあるまい。だが、無条件で恋の好敵手を救うほど私はお人好しではない。
いかにキョオの心を蝕み、我が分霊に堕とすか。我と人の子との三角関係! ハレルヤ!(神をほめたたえよ)、ハレルヤ! この奇遇にして数奇なる運命に幸あれかし!
……ふふ……血が滾る。私が肉と骨を捨て魂のみとなりて幾星霜過ぎたことやら。その私が恋の駆け引きとは面白いではないか。
我を久遠の倦怠より解き放ちし虎神に感謝を捧げようぞ。
キョオよ、お前は人の子としては察しが良いな。確かに私はお前を死なせる訳にはいかぬ。
チカが悲しむのをもう見たくないのは私も同じだ。チカとお前が結ばれることこそ我が望み。
故に私はお前を死病から救おう。ただし、相応の代償と引換えだ。
良いだろう、夢を返してやる。今宵の夢を楽しむがいい。望み通り、お前のその夢の中にて会おうぞ。




