■プロローグ 中二病の終わりと始まり!?
■プロローグ 中二病の終わりと始まり!?
俺の名は皇恭一郎、通称キョオ。高校2年の男子だ。つい数か月前まで、俺は人知れず能力者としてこの世界を守ってきた。が、今や能力を使い果たし、只の一般人に成り下がってしまっている。当時の名残りである『とある事情』を除けば、もはやそこらへんの男子とそう変わらない。
能力が消えてしまったあと、それがいわゆる『中二病』という奴だったと知った。
中二病を卒業した俺は……いや、『卒業』と過去形にするのは早計だろうか? まだ完治には至っていないからな。『完治』という言い方もおかしい。ついこの前まで能力を振るっていた俺が『治る』とかいうのもおかしな話だろう。だが他にどう表現すればよいのか分からないから仕方がない。
自発的に『卒業』やら『完治』やらしたのと『能力を失ったことを自覚してしまった』のとでは雲泥の差だろうと思うんだけどね。
だが能力を失った事件をキッカケに俺の環境は大きく変わった。その理由が、俺のクラスメイトにして某邪気眼系中二病アニメ大好きなオタク少女、小日向千佳だ。
千佳はその作品のアニメとライトノベルがいたくお気に入りで、ふだんから右目を眼帯で覆ったり左手を包帯で封印していたりする。
それに加えて、その原作のラブコメ小説みたいな小ッ恥ずかしい展開で申し訳ないのだが、俺たちは波乱万丈で疾風怒涛な破天荒展開のすえに晴れて恋人同士になったばかりの新米カップルでもある。
もっとも俺も千佳も男女交際なんて初めてだし、周りの連中にバレるのも恥ずかしいから、恋人らしいことと言えば寝る前に電話で話す位だ。
それすらも暴走して中二病トークになることが多いし、いわゆる『リア充展開』ってのとか『イチャラブ』とやらには程遠いんじゃないだろうか。
とはいえ。独り身じゃない、ってことはそれだけでも幸せだってことには違いないんであって。恋人というより相棒という感覚なんだけど、胸襟を開ける相手なんだから贅沢をいっちゃ罰が当たろうってモンだし。
焦る必要なんかないよな。時間ならたくさんあるんだから、俺たちのペースでゆっくり付き合っていけばいいよな。件のアニメでもそんな発言をしていることでもあるし、ちょうど夏休みに入ったことでもあるし、俺たちのとびだせ! 青春! はまだまだこれからだ!
これがッ! これがッ! これが成就恋愛暴走現象(コンプリーテッドラブスタンピードフェノメノン)だッ!
とか余裕ぶっこいてたのが間違いの始まりだった。事態は急を要することを、当時の俺たちはまだ知らなかったのである。そりゃそうだ。だって、まさか、本当にあんなのが来てこんな事態を巻き起こすとは、普通思わないもんなあ。
それまで俺たちの身の上に起きていた『波乱万丈』で『疾風怒涛』な『破天荒展開』で、なおかつ『超常的』だった日常は、もう完結した過去のものと思っていたんだから……。
『ハッピーエンド』で『めでたしめでたし』のその向こう、『いつまでも幸せに暮らしましたとさ』の後に訪れた、まさか、まさかの第2シーズンに突入した俺たちの、明日はどっちだ?