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異世界へ!

 まりやを見送った聖は自身も高校に向かおうと一歩踏み出そうとした、その時


―――――――かなぁ…


 後ろから“声”をかけられたような気がして反射的に聖は振り返った。

が、その時、いきなり頭の中がグワンと回ったかと思うと視界が白くぼやけた。

足もおぼつかなくなり踏ん張ってはみたものの、力が入らずとうとうその場でしゃがみこんでしまった。

「え、な、何…?」

突然の体の異変に戸惑う聖。しかし元々貧血を持っていたのでそれで眩暈でも起こしたのかと思いとりあえず頭を抱えながら路地の隅まで移動した。

普段ならば少し経ったら回復していたのだが、今回は一向にその兆しが見えてこない。

次第に息も切れていき、顔も青ざめる。

 

 そんな異常事態を察したのか通りがかりの少しふくよかな中年女性が聖に駆け寄っていき「あなた、大丈夫!?」と声をかける。

「大丈夫です、ただの貧血です。」と答えたあと心配してくれた感謝を述べた聖だったが「そんな顔して大丈夫じゃないわよ。」というと

いつの間にか出来ていた人だかりに向かって誰か救急車呼んであげて、と指示を出していた。


 意識も薄れていく中、人だかりをかき分けて聖に向かってくるまりやの姿が見えた気がした聖だったが、果たしてそれが現実なのか幻なのか答えは分からないままゆっくりと意識は深い闇の中に落ちてった。





***




「ん…。」

 頬に何か違和感を覚えて聖は目を覚ました。おぼろげな頭で何事かと思っていた。が“何かざらざらしたものに舐められている”と認識した瞬間ガバッと勢いよく上体を起こした。

「え、何?なんなの?」

混乱している聖をよそにそばにいたのは金色の目がとても印象的な黒猫だった。

あまりに綺麗な瞳の色に吸い込まれてしまうような錯覚を覚えた聖は一瞬ドキッとたじろいだが

「君が私を起こしてくれたの?ありがとう」

そういってあごの下を撫でようとしたが素早い動きで後ろに下がられ撫でることは叶わなかった。

あまりに機敏な動きに今まで猫を飼ったことのなかった聖は驚いたが、次の瞬間比べ物にならないほど驚くことになる。

 

 辺りを見回した聖の目にまず飛び込んできたのは木だった。聖よりもずっと大きな木は青々とした葉をつけてそこかしこにたくさん茂っていた。葉の間からは光の柱が何本も差し込んでおりキラキラしている様は幻想的にも見える。そしてふと目線を足元に向ければそこには色鮮やかな花々が辺り一面咲き乱れ華やかに彩っていた。

「ここは、どこなの…?」

先ほどまでいた場所とはあまりに違う光景に戸惑うしかなかった。

 一度呼吸をすれば土や花の香りが鼻腔を駆け回り“ここはさっきまでいた所とは違うのだ”と否が応にも聖の体に感じさせる。


 あまりのことに途方に暮れボーとしていた聖だったが、ここがどこにしろいつまでもここにはいられないと思った。

見渡す先までずっと途切れることもなく広がる木々を見るにここはきっと森の中だと感じたからだ。

今はまだ明るいが、その内夜になれば辺りは当然暗くなる。しかし聖は明かりになるものを何も持っていない。それだけではなく服装も制服しか着ておらず今は日も差し込み暖かいが夜はどうなるか分からない。食料もない。こんな状態では色々な面で危険と判断したからだった。

幸い先ほどの眩暈もなかったかのように元に戻っており、体のどこにも異常は感じられない。

 

 なんでこうなったかなんて嘆いていても仕方がない、そうして動揺した心をやや強引に何とか立て直し

とりあえずこの状況を打破する糸口を探すため歩き出した。


と、足元から「にゃ~」と甘い声が聞こえた。見ると先ほどの黒猫が真ん丸な金色の目で見上げながら体全体を使って聖の足にまるで8の形をしてくっついている。

あまりの可愛さに「どうしたの~」と思わず頬を緩めて撫でようとしたがその瞬間「ニャ!!」とまるで「触るな」とでもいうような鳴き方をし聖の足からシュタッと離れた。

またしても驚く聖だったがその様子よそに黒猫はスタスタと歩みだしてしまった。

 

 ここで聖は悩む。

この黒猫がもし飼い猫だった場合これから飼い主のもとに帰る可能性がある。

ということは人に出会えるということだ。

毛並みも綺麗だったし、触れせてはくれないが自ら近寄ってくるあたり人間慣れしていそうということからその線は低くはない筈だと。

 ただ、もしただの野良猫だった場合ついて行ってもいつまでも人には会えず徒労に終わってしまうだろう。

どうしたものかと考えていた聖だったが、当の黒猫は少し進んでは振り返り「にゃ~」と鳴きまた進む。

そして少し進んではまた振り返り「にゃ~」と鳴くのだ。

 

 なんだかまるでついてこいといわれてる気がして聖は他に当てがあるわけでもないし、と一か八かこの黒猫について行くことを決心した。

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