† Prologue 〜 銀色の悪夢
「嘘……違う。こんなはずじゃないの……違う……」
霧の掛かった森に、空しく声が谺する。
その声の主の美しい人形のような顔は、恐怖に歪んでいる。
銀色の艶やかな髪を持った少女はゆっくりと膝をついた……
美しい紫色の瞳から透明の雫が落ちた。
「だから……言ったじゃん。……やめな……よって……」
身体を真紅に染め上げた少女が苦しみながら顔に笑みを浮かべた。
そして、真紅に染まった手でもう一人の少女の頬を撫でた。
「泣いちゃ……ダメだよ…泣いたらおしまい……だから…………ね?」
「違う……違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う……!!!」
震える声で叫ぶ少女の瞳はこの世界ではないどこかを見つめている。
その少女をここに連れ戻すかのようににっこりと笑った。
はっ……と銀髪の少女は我に返った。
それを見て、少女はもう一度優しい笑みを浮かべた。
「…………ば…………か……ぁ……」
笑ったまま……少女は動かなくなった。
それを……彼女はただ見つめているだけだった。
二人の少女を冷たい刃のような雨が撃つ。
銀髪の少女は気づいていなかった……
もう一人の少女も……瞳に涙を浮かべていた事を。