取り替えっ子
きょう、ごさいのおたんじょうかいのあと、おかあさまが、だいじなおはなしがあると、おかあさまの おとなりのへやにつれていってくれた。
とうしゅの、ちすじにかかわる、だいじなはなしなんですって。おとうさまがここにいないのは、そういうことなのね。おとうさまは、ここへははいれないのだわ。
ありしゃは、かしこいこだから、ごさいでもわかるでしょう? と、あたまをなでてくれながら、おかあさまがいいました。
おかあさまのおとなりのへやには、はじめてはいりました。ちすじのものしか、はいれないしかけがあると、おかあさまがいっています。
かぎは、おかあさまの◯◯◯の◯◯◯◯です。
かぎにするのは、とうしゅのからだのいちぶなら、どこでもいいそうです。
わたしもおかあさまとおそろいにしました。
おかあさまがとおろくしてくれました。とうしゅが、つぎのせだいにひきつぐやくめがある、といっていました。
なかには、ちいさいきんこがありました。
きんこをあけるのも、ちすじのもののまりょくがひつようだそうです。
なかにはおおきなはんこ? と、なんまいものかみがはいっています。
だいじなしょるいよ、とおかあさまがいいます。おかねのふくろもあるそうです。おかあさまがいれば、わたしにはそれでいいのですけれど。
◇
694年6月2日
お母さまがお亡くなりになりました。
(お母さまが以前、日記には、日付けが必要と言っていました。さかのぼって、おぼえている日は書いています)
わたしはまだ十にもなったばかりなのに。急に、身体の具合が悪くなったかと思えば、何もしゃべれなくなって、すぐでした。
ああ、お母さま。
わたしは涙でおぼれるくらい泣いて、泣けなくなってから、日記を書いています。ああ、また泣きそう。
お父さまは、どこかへ行ってしまいました。
哀しみを家いがいで出しているのでしょう。
◇
694年7月27日
お父さまが、女の人を連れてきました。
『お前の新しいお母さまだよ』と言いますが、わたしのお母さまは、お母さまだけです。
そう言ったら、お父さまと女の人に、無言でにらまれました。
よく、物語で読む、“ごさい” でしょうか。
“ぎし” も “ぎまい” もいないようですが。
◇
694年8月2日
今日、あの女の人が、お部屋をとりかえる、と言いました。
わたしの部屋をあの女の人が使うそうです。
わたしは、1階のすみの、家具の予備がつめこまれている部屋の、端です。
お父さまは、見ていたのに、見ていないように去っていきました。
こうぎしていた使用人たちは、しばらく後、見なくなりました。
◇
694年8月3日
お勉強をしているところ、あの女の人が、どなり込んできました。
となりの部屋へ、どうやって入るのかと。
『つま』なら入れるはずだ、とお父さまは言っていたそうです。
何かイヤな感じがしたので、『知らない』と言いました。
女の人は、感謝もせず出ていきました。
お母さまなら、『人に何かしてもらったら、感謝するのよ』と言っていたのに。
◇
695年3月3日
今日から、かていきょうしが、突然来なくなりました。女の人が辞めさせたそうです。
まだげんごも、歴史も、マナーもちゅうと半端なのに。間違えることもたくさん。
勉強部屋にも来るな、と言われました。
食事も、食堂ではなく部屋で食べるように、と言われました。
メイドのミーサが、お国では今、聖女さまが召かんされるようで、貴族もしょ民も、大にぎわいだそうです。
◇
695年3月10日
なじみの使用人たちは、次々辞めさせられ、やる気のなさそうな人たちに、どんどん変わっていきます。
わたしは、この待ぐうの悪さから、しいたげてもかまわないのだと、そんな人物に見られたようです。
前のメイドなら、ふつうの食事を持ってきたのに、だんだん悪いものが混ざってきます。
ミーサもいなくなってしまいました。
お母さまの、お父さまやお母さまは、りょう地から出てきません。お母さまのことも伝わってないのかも?
4月1日には、聖女さまが召かんされるようです。わたしはお祝いに参加できるのでしょうか。
◇ ◇ ◇
日記は、ここで途切れていた。
日記の一部は、人の指で消されたようにこすられていた。読み取れるように魔力鑑定をしたら、《みぎてのなかゆび》だそうで。
あの男は、たとえこの日記を見つけたとて、魔力鑑定さえ思いつかなかっただろうな。
もちろん日記は、見つかりづらい場所に隠されていた。あの消された部分も、自分で『書いていては良くない』と思って消したのだろう。
本当に賢い子だ。
この家の捜索を始めてから、唯一の長女のだと言う部屋に連れてきてもらって、その質素さに驚いた。壁のあちこちがボロボロだ。日記には一言も文句は書いてなかった。
子どもの虐待だけでは捕縛はできないが、あの男は、入り婿で当主の代理だ。血筋ではなければ、貴族の家の乗っ取りだ。大罪である。しかも女は平民であると言う。娼婦の身請けだ。ますます大罪である。
領地の祖父母は身体を弱くしていて、領地の経営はほぼ家令が指揮を執っているとか。
これで祖父母も亡くなっていたら、本物の血筋は長女しかいない。母親は一人っ子だったそうだ。係累もいない。もうこの家の将来は『お取り潰し』だろうな。
聖女の召喚が無事に終わったあと、代理印では処理できない案件で、当主印を使いたいと、あの男が大騒ぎを起こして家中を探したところ、長女はすでにいなかったそうだ。
まあ、そのおかげで、様子がおかしいと捜査の手が入ったのだが。
召喚がなされたと同時に、神殿には一つの神託が降ろされた。
『当代の《聖女》も、一人につき一人、この世界から《交換で》人を差し出す。もっとも哀れな人間を』
スラム街の人間よりも酷い暮らしをしていたのか、長女は。神にも哀れまれるほどの。
あちらへ渡ったなら、どうか平穏な暮らしを願う。
思いついて3時間くらいで書きました。
いつもAIさんに添削してもらってますが、スマホだと行き届かない部分があるかと思います。
お話のあとの部分は皆さんのご想像にお任せします。




