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第5話 空無の味方




「だからさー、muguet さんの優しさに惹かれちゃうんだよね」


『どんなところ? 私あんまり話したことないっていうか……muguet さんがオープンチャットで話してるの見たのって、イベントの指揮くらいかもw あの人リーダーだもんね〜 個人的に話すんだ?』


「あははw そうかも。意外とリーダー、グループチャットではちゃんと喋るよ? 私も幹部に入れてもらってるから、やりとり多くてさ」


『あ、そうか!空無ちゃん幹部だったね』


「半年くらい前かな。……私のチームから、反乱軍が出たの」


『え!?それ、知らないかも』


「こはくちゃん、たしかそのとき別のチームだったし……まだ同じギルドじゃなかったよね?」


『そだっけ? たぶん違うギルドいた頃かも』


「そうそう。そのとき、ギルド内めっちゃ荒れてさ。幹部チャットで、私はもうボッコボコに怒られて」


「“反乱出した責任取って討伐してこい”とか、“リーダー辞退しろ”とか、色んなこと言われたんだ。でも私、そこまで強くないし……一人じゃ絶対ムリだったのに……」


空無はそこで、画面のチャット入力を一旦止める。

でも、こはくが「うんうん」ってスタンプを返してくれるのを見て、また少しずつ言葉を綴り始める。


「……そんな時に、muguet さんが、何も言わずに私のチームに加入してくれたの」


『えっ!?』


「ほんとに、無言で、何も聞かずに。

そのまま反乱軍を一気に討伐してくれて、ギルド内も落ち着いたの。

問題もそんなに大きくならなくて済んで……それから、muguet さんはずっと私のチームにいてくれてるの」


『それは……完全に“味方”だったんだね』


「うん、私、あの時ほんとに孤独だったから……

muguet さんだけが、誰も責めずに、ただ助けてくれたの」


── それが、私にとってどれほど救いだったか。

今も忘れられない、優しい記憶。


⋆˳˙ ୨୧…………………………………୨୧˙˳⋆


……あの頃も、リアルでは誰も味方じゃなかった。


家では旦那が口を開けばため息ばかりで、

仕事でも“子持ち”ってだけで煙たがられた。


どこにいても、自分の居場所なんてない気がして、

画面の中でさえ“責任取れ”って責められたあの日。


そんな中で、muguet さんが何も言わずに傍に来てくれたことが、

どれだけ嬉しかったか、今でも忘れられない。


⋆˳˙ ୨୧…………………………………୨୧˙˳⋆


『その人、めっちゃカッコいいじゃん……!惚れるのわかるかも』


「でしょ?( ー̀ωー́ )✨」


『でもさ、向こうは空無ちゃんのこと、どう思ってるんだろうね?』


「さぁ……たぶん、ただのチーム仲間って思ってると思うけど」


『気になるじゃーん!』


「あはは、まぁね。でも今は、こうして一緒にゲームできてるだけで、十分幸せかもって思えるの」


── だって現実には、

誰かの隣にいるだけで安心できるなんて、なかったから。




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