4.敵軍を殲滅せよ!
目が覚めると目の前にキレイな青空が広がっていた。
よく、アニメと映画で見るような一場面。
この雰囲気は学校の屋上?
ふと視界に入った人物と目があう。
「お、目が覚めたか
もたもたしてないで武器の準備をしろ」
目の合った男がいうと手に持っていたアサルトライフルの調整をする。
視界を下に滑らすと迷彩柄の箱の中に見たことない武器や銃弾などが入っている。
私はその光景に飛び起きて、男に問いかけた。
「武器って、これからなにが起こるの?」
私がそういうと男がはぁー、と深いため息をついた。
「おまえ、記憶でもなくしたのか?
俺が誰だか、おぼえてるか?」
座ったままの私を見下ろしながら問いかける男。
黒のタンクトップと迷彩柄の軍服。短髪の黒髪と強面顔の30代くらいの男だ。
強面だけど、整った顔を見るにイケメンの分類だ。
イケメンだったら忘れないと思うんだけどなぁ、記憶をたどるがどうも思い出せない。
「ごめんなさい、思い出せない。」
そういうと、男はチッと舌打ちをしてガシャンっと銃の部品をはめ込んだ。
「たく、思い出せねぇだ?
俺の名前も覚えてないのか?」
頭をガシガシ掻きながらめんどくさそうに私をみる。
「名前も覚えてないの…」
「クソ!」
だっるそうに腰にはめていた無線機を取ると男が無線機に向かって話し始めた。
「こちら、カズキ。
千鶴が目を覚ましたがどうやら記憶喪失のようだ。
どうする。」
この男はカズキという名前みたい。
この名前を聞いても思い出せないんのはなんでだろう。
「こちら、キイラ
状況を把握したいから指令室まできて」
無線機越しから高いきれいな女性の声が聞こえた。
キイラの指示を聞いて、カズキは舌打ちをしてまだ、座ったままの私の手首を引っ張り、立ち上がらせた。
「時間がないっていうのに
おまえがいないと敵軍に勝てねえよ」
強制的に立たされたこともあり、私がバランスを崩してもスマートに受け止め、館内に続く扉にエスコートしてくれるカズキ。
言葉づかいとかは悪いけど、そこまでひどい人じゃないのかな?
というか、この人と私の関係ってどうなんだろう。
カズキの話を聞いている感じだと、私が記憶喪失でこの人やキイラという女性とはもともと知り合いのように感じた。
「あの、カズキさん
私、どうやら記憶がないみたいなんですけど、私たちの関係ってどうなんでしょう。
状況が把握できないので教えてほしいです。」
館内に入った私たち。2歩前くらいを歩いているカズキに問いかけた。
「おまえ、全部忘れちまったのか?」
「…全く覚えてません。
目が覚めたらここにいて…」
私がそういうと大きなため息をつきながら話し始めた。
「はぁ、俺たちは同じチームだ。そして、俺とおまえは相棒同士だ。
これからある戦いで相手チームをせん滅しないとこの戦いで勝てない。
それで俺たちは先陣きってこれまでも敵をせん滅してきた。」
カズキが階段を降りながら、気だるいそうに説明をしてくれる。
私もカズキについていきながら、話しを聞きながら階段を降りる。
「これから行くところは俺たちチームの指令室だ。
そこにいるキイラと今後の作戦会議だ。
今日、敵軍基地に乗り込むつもりだったが、おまえの記憶がないのは緊急事態だ。
…もしかして、戦い方も忘れたとは言わないよな?」
そう言って立ち止まり、私を見るカズキ。
階段を降りている最中のため、同じ高さでカズキと目が合う。
「…戦い方とは……?」
「はああぁ、噓だろ…」
カズキがズルズルとその場にしゃがみ込んだ。
どうやら、大問題のようだ。
「戦い方も忘れたってなると人も殺せなくなったのか?」
「人を殺す!?
そんなのできるわけないじゃん!」
「終わった…
俺の相棒がぁ…」
うなだれているカズキはフラフラと立ち上がり、階段を降りた廊下を進んで教室に入っていた。
「キイラ、千鶴が戦い方も殺りかたも忘れやがった!」
カズキが入った教室はどうやら指令室のようだ。
気まずい雰囲気の中、私も教室に入ると中には複数のモニターといろんな機材が置かれていて、モニターの中央にある椅子に座っている黒髪の女性にカズキは私の状態を伝えていた。
「まさか、千鶴がねぇ
これは困ったことになったわね、うちにはあなたたちが頼りだったのに。」
冷静な声音で座っていたキイラが立ち上がった。
腰まである艶やかな黒髪にきれいに揃えられた前髪。華奢で美しいボディーラインのキイラが腕を組みながらこちらを見た。
「すみません、どうも思い出せなくて…」
私が謝罪をすると近づいてきたキイラが私の頭をポンポンと撫でた。
「気にしなくていいのよ、千鶴。
そのうち、思い出すかもしれないし、カズキが一人で何とかしてくれるわ」
「おい、次の敵軍は数が多いんだぞ。
うちの戦力は俺と千鶴しかいないんだ。
俺だけでせん滅なんかできねぇよ」
カズキが私たちに近づいてきて、言う。
「私がここでカズキをサポートするわ。
とりあえず、敵兵の数だけでも減らしてくれればそれでいいわよ」
キイラがカズキの肩を叩くと先ほどいた席に戻った。
「とりあえず、敵軍に乗り込むのは決行するわ
変わらず、カズキと千鶴で行ってきて。
大将を取れればいいんだけど、今回の大将は格が違うわ
無理なら引いて構わないから」
「千鶴が戦えないのに連れていくのか?」
カズキが聞くとキイラは「ええ、そうよ」と言って、机の上にある複数のキーボードをすごい速さで打ち始めた。
はぁ、と大きなため息をついたカズキが「行くぞ」と私に言うと指令室を後にした。
それから、カズキに武器の使い方と練習を行い、今回の敵軍の情報を教えてもらった。
敵軍に乗り込むのは私とカズキの2人だけ。
敵の数は100はいると話していた。
なぜ、戦うのかを聞いてみるとこの戦いに優勝したチームには数億円の賞金が手に入るそうだ。
敵軍を倒すのには敵を全員せん滅するか大将を討つか。
ちなみにうちの大将はカズキと言っていた。
今まで、私たちは戦ってきて最後に残ったのが私たちの軍とこれから攻め入ろうとしている敵軍のみ。
よは、決勝戦だ。
こんな大切な戦いを前にして、戦力である私が戦えなくなってしまったのは大問題だ。
カズキが困惑するもの無理はない。
「忘れちまってるとはおもうが、お前は強い。
本来の千鶴であれば、これから行く敵軍の半数以上は倒せる。
なんたって、敵軍から千鶴は”冷酷剣士”って言われてるんだ。」
誇らしそうに相棒(私)の話しをするカズキ。
そう、話してもらっても”冷酷剣士”の記憶のない私からしても実感がない。
頑張って記憶を思い出そうとするが思い出せないでいると私の前に一本の日本刀を差し出した。
「おまえが好んで使っていた武器は刀だ。
これを腰につけておけ。
咄嗟に体が思い出すかもしれない」
カズキがそういうと使いこんでいる日本刀を手渡された。
受け取り、鞘から少し抜くと本物の日本刀が輝いていた。
刃こぼれなく、綺麗に手入れされている。
刀を受け取り、どこか安心感があるということは私の愛刀なのだろう。
刀を握っても握り心地はいいし、手の収まりもいい。
「どうだ、少しは思い出したか」
カズキの問いかけに私は「安心感はある」と伝えると嬉しそうに「そうか、早く思い出せよ」と言って武器の武装を始めた。
準備も終わり、無線機につないだインカムを付けるとキイラの声が聞こえた。
「こちら、キイラ
これから敵軍基地に乗り込むわ。
これが最後の戦いよ、絶対勝つわよ」
キイラの言葉を聞いて私とカズキは敵軍基地を目指した。
1時間ほど歩いたところに敵軍基地の学校が見えてきた。
ここの基地は正面、言うなれば校門から入ると校舎に控えている兵士に打ち殺されると話していた。
キイラの指示に従い、西側の外周から回り込み北の兵士たちが控えている裏口から回り込むという指示だった。
私たちは敵軍に見つからないように外周から回り込んだ。
裏口の方には数十人ほどの兵士たちが控えていた。
といっても、休憩しているようでカードゲームをする人たちもいればご飯を食べている人たちもいる。
「千鶴、行くなら一気に行った方がいい
とりあえず、刀を振りまくれ。
俺が確実に仕留めて進んでいくから離れるなよ」
物陰に隠れながらカズキが指示をする。
「わかった。」
”本当に人を殺すのだろうか。”
私は人を殺めることへの恐怖が出てきた。
それを察知したのかカズキが私の肩をポンと叩いた。
「いいか、躊躇するな。
迷ったらおまえが負ける。
俺はせん滅することに気を向けるから、おまえのことを守ってあげられねぇ
だから、自分の命は自分で守れよ」
「わかった。
自分の命は自分で守る。
斬ることに躊躇しない。」
私は自分に言い聞かせた。
「その域だ、戦場に戻れば千鶴も思い出すさ
おまえは強いから」
カズキがそういうと私に微笑んだ。
その微笑みもすぐに消え、真剣な表情になったカズキから突入の合図である手榴弾を数個、敵兵が控えている場所に投げ込んだと同時に私たちは敵軍基地に乗り込んだ。
潜入した場所から反対側の方で手榴弾が爆発する音と同時に悲鳴と銃声が鳴り響く。
それに構わずカズキが確実に敵を仕留めていく。
突然の襲来に混乱する兵士たちをカズキは容赦なく、撃ち抜いた。
私もカズキに続いて、近づいてくる敵兵を切り倒した。
背後から迫ってくる敵兵も体が勝手に動き斬りつける。
カズキが言っていたように私の体は自然と動くことに驚いた。
"これならイケる"
私は戦えると確信し、襲いかかってくる敵兵を倒してカズキを追いかけた。
一時はこちらが優勢だったが、爆発音と銃声を聞きつけた校内にいた敵兵の増員もあり、こちらが不利になってきた。
そんなとき、私は1人の敵兵と目があった。
恐怖に怯え、「殺さないでくれ」と掠れた小さな声でつぶやき私を見つめる敵兵。
私の中で「斬りつけてもいいのか」という迷いが出てしまった。
”まずい、躊躇してはいけない”
と思ったときに遅く、私は横からきた敵兵に取り押さえられてしまった。
「千鶴!!」
カズキの声が遠くから聞こえる。
”ごめんなさい、私に構わず先に進んで”
そう思いながらカズキの背中を見送った。
捕虜された私は校舎の中へと連れてこられた。
「冷酷剣士の千鶴と呼ばれていたのに全然、脅威なかったな」
縛られて身動きが取れない私を見下ろしながら、体格のいい男が呟いた。
「団長、こいつをどうしますか?」
団長と呼ばれたこの男こそ、首を取るべき敵兵の大将だ。
撃つべき相手を目の前にしてなにもできない自分に腹がたった。
私は団長を睨みつける。
「こんなか弱い女だったとはな。
滑稽だな。」
そう言って、私の前にしゃがみ込み顎を掴まれた。
「冷酷剣士じゃなくなった、ただの女なら、あいつの元に連れて行け。
たっぷり調教して遊び相手になってもらおう」
私から離れた団長は奥の部屋へと消えていった。
近くで控えていた敵兵が私を立ち上がらせると校舎の奥へと誘導する。
カーテンが閉められた部屋の前まで来ると敵兵がドアをノックする。
「団長命令だ
この女を調教しろ、と」
程なくしての引き戸が開いた。
引き戸の前に立っていたのは恰幅のいい大柄な男だった。
上半身は裸で下にはバスタオル1枚のみ。
キレイに整えられたネイルを見ながら出てきた。
「あら、お客さん?
団長が遊べるように教え込めって言ってるの?」
お上品な仕草で連れてきた敵兵に問いかける。
「そう話していた」
「そう、わかったわ
それなら中に入って。
たっぷり教え込んであげるから」
そう、大柄な男がいうと私の腕を掴み中に入れられた。
引きずられるようについて行くと中には同じ格好をした大柄な男が数人待機していた。
マットのようなものが敷かれているところに押し倒されると待機していた他の大柄の男達が私の元に近づいてきた。
「あら、新入り?」
「待って、この子は噂の冷酷剣士じゃない?」
「それにしても弱そうだけど」
「ってことはただの噂なのかしら」
オネェ言葉で会話を繰り広げる大柄の男達。
これから何えおされるのか恐怖でしかない。
「まぁ、いいわ
団長命令だから、ただの女ってことよ」
「何から始める?」
「まずは具合を確かめるところからでいいんじゃない?」
よくわからない話しを繰り広げている男たちは準順にやることの準備を始めた。
逃げられないだろうと諦めかけていたその時、耳元からキイラの声が聞こえる。
[こちら、キイラ
千鶴聞こえる?
そこから逃げ出す方法を教えるわ
慌てず、落ち着いて行動してね]
私はキイラの声を聞いて安心した。
”ここから逃げられる”
私は男たちに気づかれないよう、彼らを観察しながらいつでも行動に移せる体勢をとった。
[千鶴から見てマットの左側の床に小さい穴があると思うの
探してみて。]
私はキイラの指示に従い、マットの左側を観察する。
すると、ちょうど指が入る大きさの穴を見つけた。
[次の指示に行くわ。
その穴のある床はとれるはずよ
難しいかもしれないけどやってみて。
そこから脱出できるわ]
私は男たちの様子を確認すると皆、道具の準備をしているからかこちらを見ていない。
体勢を変え、体育座りになると男たちの様子を観察しながら、穴のある床板まで進む。
穴の開いた床板の前までいくと後ろで縛られている手を使って、床板を動かした。
音を立てないように慎重に床板をずらすと
私が入れるくらいの深い穴がある。
[床板を外してたら、その穴に入って
地下の倉庫に繋がっているはずよ]
私は足から穴に入れると1人の男が私に気がついた。
「あら、逃げちゃだめよ」
そう言って他の男たちも近づいてくる。
私は意を決して穴の中に入り込んだ。
細見の女性が入れるくらいの穴は暗く、思ったよりも深い。
程なく、落ちて行くとようやく、視界が開けた。
受け身を取りながら着地すると耳元からキイラの声が聞こえた。
[なんとか、あの部屋から脱出できたわね
ここからは南に向かって走って、出口があるはずだから]
キイラの指示通りに南に向かって走った。
途中、敵兵とすれ違ったがかわしながら出口に向かう。
敵兵に捕まることなく、出口に到着すると敵軍基地から離れた。
「キイラありがとう」
私は耳元を抑えながら話すと[問題ないわ]と返してくれた。
敵軍基地から少し歩いたところで血痕を見つけた。
”もしかして、カズキが”
私は血痕を辿って走っていくと地面に横たわってるカズキを見つけた。
全身血だらけで意識がない。
「カズキ!!」
私は横たわるカズキに近づき傷口を確認する。
が、傷口はない。
「…なんだよ、寝てんだから静かにしろ」
いつものカズキがけだるそうに私を見た。
「よかった、生きてた!!」
私は咄嗟にカズキに抱きついた。
「お前も無事でよかった。
あの変態集団からの脱出はなかなかだったな」
私の背中をぽんぽん叩きながら、そう言ってカズキは笑う。
「考えるだけで吐きそうだから言わないで」
私がそういうと「わりぃ、わりぃ」と悪びれることなく謝った。
「あとちょっとのところで大将とれなかったなぁ
これは出直しだな」
そう、カズキが天を仰いだ。




