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2. 漆黒の悪魔は私に執着する



目が覚めると暗闇の中にいた。

横になっていたところは柔らかかったため、ベッドだと知るがシーツも布団も黒いため、手の感覚だけが頼りだ。


どこを見渡しても暗闇で周りに何があるのか全くわからない。

耳を澄ませても周りは静寂すぎて、音もない。


心細さを覚えた私はベッドから立ち上がろうと、座っていた場所から動いてベッドの端に行こうとするがなかなか、地に足をつける場所はなく、やわらかい感触だけだった。



「このベッド、どれだけ大きいの?」


そんなことをつぶやくと私の手首をつかむ感覚で私は驚き、つかまれたであろう方向を見る。


が、暗くて何がいるのかもわからない。



「誰かいるの?」


まだ、手首をつかまれている感覚はあるため、つかんでいるであろう人物に問いかけた。



「やっと、目を覚ましてくれたんだね。」


優しいく、どこか魅力的な声音が目線を向けた先から聞こえてくる。


だが、姿は見えない。


「あなたはだれ?

暗くて、姿も見えないの」


そう私が言うと声の主であろう人が私に近づいてきた。


「これで少しはみえるかな」


目の前には長い黒髪に目は切れ長の漆黒の瞳、鼻筋は高く、薄めの唇は弧を描いていた。


「あなたはだれ?」



私の問いかけに小さく笑うと切れ長の瞳がさらに細くなった。



「漆黒の悪魔、と言ったら君は怖いかい?」



「漆黒の悪魔…?」



悪魔って、人間に害を及ぼしたり、殺したり、破滅に導くって言われている悪魔のこと?

そんなことを考えていると、漆黒の悪魔に抱きしめられた。


「大丈夫、君のことを愛している

だから、君を殺したりしないよ」



そういって、私の首筋に漆黒の悪魔が口づけをする。

その、口づけは徐々に首筋から鎖骨、胸へと落ちていく。


「ちょっと、まって

私を愛してるって、私たちは初対面じゃないの?

私はあなたと会うのは初めてなんだけど…」


そういうと、口付けが止まり漆黒の悪魔の瞳が私を見つめる。



「僕は君のことを暗闇の中からずっと見ていたし、君も暗闇の中にいる僕を見たことがあると思うよ」



「暗闇の中から?」


私はここに来る前の記憶を呼び覚ます。

だか、なかなか思い出せない。



「ごめんなさい、私覚えてないの」



「そうか、それは残念だね」



漆黒の悪魔が私の髪を撫でながらつぶやく。


「でも、これからはずっと一緒だよ

だから、少しずつ思い出せばいいよ」



そういうと私の唇に口づけを落とす。

次第に口づけは激しさを増し、私はベッドに押し倒された。


突然の出来事に私が戸惑っていると漆黒の悪魔が私の頬を優しく撫でた。


「怖がらなくていいよ

僕は君のことを愛してるから

だから、僕に何もかも身を任せて」


私の手に漆黒の悪魔の手が重ねられ指と指が絡まりあった。


「でも、私

心の準備が」


私の言葉をさいぎるように彼の人差し指が私の唇に触れる。


「大丈夫

君は僕だけに愛されていればいいんだよ」



何が大丈夫かわからないがこれ以上、抵抗したらいけないと私の中で本能が警告を鳴らしていることだけはわかった。



私は抵抗するのをやめて、漆黒の悪魔に身をゆだねることにした。


それが分かったのか、漆黒の悪魔は微笑み「いい子」と呟いて、私の額に口づけを落とした。



その口づけは次第に頬、首筋、胸へと落ちていく。


このあと、何が起こるのか、なんとなく予想した私はただ、漆黒の悪魔の愛撫に溺れることしかできなかった。






どのくらいの時間がたったのだろう。


朝日が登ってもいい時間だというのに一向に朝はこない。



あのあと、漆黒の悪魔に長い時間、愛をこの身に刻みこまれたが漆黒の闇は続いたままだ。


少し、暗闇に目が慣れたのか周りの風景が薄っすらみえてきた。



大きな黒いベッドの横にベッドサイドテーブルがあり、大きな窓が2つ並んでいた。


窓の外は月明かりのない、夜の闇が続いている。



「体は大丈夫かい?」


後ろから私を抱きしめている漆黒の悪魔が優しく問いかけた。



「体に力が入らないけど大丈夫だよ」



私が返事を返すと漆黒の悪魔がクスッと笑った。



「きみはかわいいね」



そう言うとさらに私を抱きしめる力が強まった。


耳にかかる漆黒の悪魔の吐息がくすぐったいがなんだか心地がいい。


急に睡魔がやってきて私はまた眠りについた。





ふと、目を覚ますと目の前に漆黒の悪魔の寝顔があった。



悪魔も寝るんだ、なんてことを思いながら漆黒の悪魔の寝顔を見つめた。


こんなに綺麗な寝顔は見たことがない。

悪魔というか天使?


悪魔は美形が多いのかな、と変なことを考えていると目を覚ました漆黒の悪魔と目があった。



私は恥ずかしくなり、目をそらした。



「起きたんだね、よく眠れたかい?」



私の頬に漆黒の悪魔の細長い指が触れる。



「うん、よく寝れたよ


ねぇ、聞きたいことあるんだけど…」


私は気になっていることを聞こうと漆黒の悪魔を見つめた。


「なんだい?」


漆黒の悪魔は優しい眼差しで返事をしてくれた。



「ここは朝がこないの?」



私がそう言うと漆黒の悪魔はクスッと笑った。


「僕は漆黒の悪魔だからね

僕の世界はいつでも暗闇なんだ」



「そうなんだ

それじゃぁ、時間とかわからなくならないの?」



「僕たち悪魔は時間という概念はない

長い時を生きているからね


逆に人間は限られた時で生きているから時間というものを大切にすると聞いたことがあるよ」



私の髪を漉きながら漆黒の悪魔は答えた。



「限られた時か…

それなら、ここでも私の時は進んでいるの?」



ふと、疑問に思い漆黒の悪魔に問いかけた。



「ここは僕の世界だからきみの時は止まったままだよ」



「そうなんだ」


もしかしたら、ここから出る方法があるのかもしれないと思ったけど、漆黒の悪魔の世界なら出るのは難しいのかもしれない。



終わらない時をこの悪魔と永遠に居続けることになる、

という現実が突きつけられたみたいだった。



永遠に漆黒の悪魔といることになるなら、ずっと”漆黒の悪魔”って呼ぶのも呼びにくいな、と思った私は彼の名前を聞いてみることにした。


「あなたの名前を聞いてもいい?」



まさか、そんなことを聞かれると思わなかったのか、漆黒の悪魔は驚いた顔をしている。


少しして、漆黒の悪魔が目を細めて微笑む。



「僕の名前は漆黒の悪魔しかないよ

急にどうしたの?」


「これから一緒にいるのに漆黒の悪魔だと呼びにくいなと思って…」



私がそう答えると漆黒の悪魔は嬉しそうに私に問いかけた。


「それなら、君が僕の名前をつけてよ」



まさか、そう言われるとは思わたかった私は一瞬戸惑った。



名前なんて、ペットの動物にしかつけたことがない。


どうしたものか。

悪魔は英語でデビルだっけ?

でも、デビルじゃかわいそうだし。


あ、少し手をくわえれば!


「ヴィルはどう?」


私は考え付いた名前を漆黒の悪魔に伝えてみた。


楽しそうに待っていたであろう漆黒の悪魔はその名前をきいて、とても嬉しそうな表情に変わる。


「ヴィル!

いいね、気に入ったよ」


「そしたらこれからはヴィルって呼ぶね」



「ああ、名前をつけてくれてありがとう

今まで生きた中で一番うれしい瞬間だよ」


とても嬉しそうにしているヴィルを見ているとこっちまで嬉しくなった。


「私もそんなに喜んでくれて嬉しい

ありがとう」


私も嬉しくなってヴィルに笑顔を見せた。

私をみてヴィルは驚いた顔をして私を抱きしめた。



「初めて君が笑った顔をみたよ

とても綺麗だね」


そんなことをヴィルに言われて恥ずかしくなった。


彼が離れたと思うと顎を掴まれ、ヴィルからの口付けが落ちてくる。

私はそれにこたえて、彼に身を委ねた。



「もっと、僕の名前を呼んで」


熱を帯びたヴィルの瞳が私を見つめる。


「ヴィル」


「君が名前を呼んでくれるのがうれしい」



ヴィルが微笑み、キスの雨がいたるところに落ちていく。


「ごめん、ちょっと自制が難しいかも」


彼の愛が激しさを増し、私は彼の愛に溺れた。








目を覚ますとベッドの中にいた。

どうやら、ヴィルの愛は初めての時よりも激しさを増し、途中で意識を失ってしまったらしい。


いつもならいるはずのヴィルの姿がない。

暗闇に慣れてきた私の目は周りを見渡しても彼はどこにもいないようだ。


ベッドから起き上がり、座っているとどこからか声が聞こえた。



「ねぇ、今ならにげられるよ」


そんな言葉を耳にした私は周りを見渡す。


けど、どこからその声が聞こえるのかわからない。



私が周りをキョロキョロしているとベッドの下の方から声が聞こえていることに気が付いた。



私は大きいベッドの端までやってきて、ここにきて初めて床に足をつけた。


するとベッドの横に金色の光り輝く小さい何かが目に入った。


「やっと見つけてくれたね

こっちだよ」


金色の光がそういうと部屋の隅の方にふわふわ飛んで行った。

私もそれを追いかけるため、立とうするが足に力が入らない。


それに気づいた金色の光が私の方に飛んできた。


「全く、女の子には優しくしないと」


そんなことをつぶやくと私の膝に黄色い光が止まった。


近くに来たから姿がわかったが金色の光は小さな妖精だった。



「あなた妖精さん?」


そう私が聞くと「そうだよ」と帰ってきた。



初めて妖精を見たけど、かわいらしい顔立ちときれいな羽がついていた。

私が妖精に見とれていると「はい、これで歩けるよ」という声が聞こえた。


妖精は先ほど向かった部屋の端に飛んでいく。

私もそれを追いかけて部屋の端にやってきた。



遠くからだとわからなかったが妖精に案内された場所には黒い大きな丸いか鏡が置いてあった。


「逃げるならこの鏡の中に入るんだよ」


鏡の前にいる妖精が言った。



「この鏡、どこかで見たことがあるような」


私は覚えている記憶をたどる。


そして思い出した。

この鏡に似たものは屋根裏部屋にあった丸い鏡と一緒だ。

縁の彫刻も全く一緒だった。


あの日、屋根裏部屋に行った私はこの丸い鏡を見つけた。

けど、おかしなことにその鏡は普通の鏡とは違く、自分の姿を映すのではなく、漆黒の闇が映しだされていた。


その漆黒の闇の奥にいたのが、ヴィルだった。


それで私はここに連れてこられた。



「逃げるなら早くした方がいいよ

気づかれちゃうから」


妖精の言葉で我に戻った私は鏡に手を伸ばす。


「妖精さん、ありがとう」



一瞬、ヴィルの嬉しそうな顔を思い出す。


いや、迷っちゃだめだ。

ここから出て、元の場所に帰るんだ。



私は鏡の中に入る。

入った先は狭い木の板に覆われた暗い通路だった。


「こっちだよ」


妖精がそういうと道案内をしてくれた。

妖精の金色の光のおかげで足元が見えるのがありがたい。


狭い通路を抜けると周りは木に覆われていた。


「まずい、どうやらあいつに気づかれたみたいだ

ここは食い止めるから先に進んで

明るい光の方を目指して進むんだ

走って!」



そう妖精がいう。


「わかった

ありがとう」


私は走り出した。

周りは木々に覆われているがどっちに行けばいいか道筋が分かる。

行く道筋は少し明るくなっていて、妖精がやってくれたものだと思う。

私はその道筋を頼りに走り続けた。


途中、左右に行ける道に出る。

右を見ると、漆黒の闇が迫ってくるのが見える。


「こっちに行っちゃいけない」本能的に思った私は左に進んでいく、左に進むと森のようなところに出た。

先ほどよりも明るくなっていく。

ただ、後ろからは闇が迫ってきていた。


私はもつれる足を必死に動かして導かれた道筋をひたすら走った。


「もう少しで明るいところに!」


一気に坂を駆け上がり、森の終わりであろう明かりに向かって走った。




森を抜けると一気に世界が明るくなった。


後ろを向くと闇は奥の方にいた。

私は前に向き直り、あたりを見渡した。


ここはどこかの公園だろうか。


右に赤い大きな木が目に入る。



「紅葉…」


見事に色づいた紅葉の木だった。

前を見ると鳥居があり、小さな神社が目に入る。


私は鳥居の方に歩き出した。

左側にはきれいな湖が広がっていた。


綺麗な景色を眺めつつ、逃げるための手段を考え始めた。


ふと、右を見ると車に乗り込む親子が目に入る。


「あの車に乗せてもらえばここから離れられる」



私は車が止まっているロータリーのようなところに向かって走った。


走り出そうとする車を私は必死に止めた。



「すみません!

止まって下さい!!」


私は運転席側の窓ガラスをたたいた。


車止まり、驚いた顔をした男の人が窓ガラスを開けた。


「どうしたんですか?」



「すみませんが近くの駅まで乗せてください」


男は困ったように何か言っている。

私は後部座席を見ると3人の子どもが乗っていた。


私が乗ってしまったらこの親子が危なくなるかもしれない。

そんなことを唐突に感じた。


「わかりました、助手席に乗ってください」


男が車に乗るよう声をかける。


私は「ありがとうございます」そういって助手席に乗り込んだ。


まもなくして車が走り始めた。

「バスに乗り遅れちゃったんですか」


運転している男が私に問いかける。


「えぇ、タクシーもなくて困っていたんです。

本当に助かりました」


そんな他愛もない話を男とする。

漆黒の闇が近づいてきてないか心配になり、後ろを見る。


先ほどいた場所が徐々に小さくなっていく。

どうやら、漆黒の闇は先ほどの森から出てきていないだ。


私は一息ついて、流れていく景色を眺めた。


左側に広い田んぼが広がっていた。

右側はちらほら建物が並んでいる。


「駅はもう少ししたところにあります」



男の声を聴いて、ふと嫌な予感を感じた。


このまま、乗っていたらこの親子が危ない。

私の感がそう警告を鳴らす。


「すみません、ここで下ろしてください!」


「ええ!

まだ、駅までありますよ」


「大丈夫です

歩きますから」


私がそういうと車がハザードをたいて脇に止まった。


「すみません、ありがとうございました」


私は急いで車を降りた。


「気を付けてね」



男はそういって、車が走り去っていた。


「これでよかったんだ」


私は小さくなっていく車を見つめた。



ふと、背後に何かが来たのを感じた。

背中に冷たい汗が流れる。

この冷たい空気、そして暗い闇。


「いい判断だ」


私の耳元でどす黒い低い声が聞こえる。


振り向くのが怖い。

きっとヴィルは逃げ出したことに怒っているはずだ。



「もし、あのまま車に乗っていたら

あの親子を皆殺しにしていった」



「あ、ご…ごめんなさい」


彼の殺気は凄まじいもので、体が震えているのを感じる。

やはり、あのまま乗っていたら親子が危なかった。

降りて正解だったんだ。

無関係な人の命が奪われなくてよかった。


「さぁ

僕たちの屋敷に戻ろう」



そう言ってヴィルから抱きしめたられ彼の羽織っていた黒いマントが私を覆う。



「もう、逃げちゃだめだよ

帰ったらお仕置きだ」



そしてまた、私の体は漆黒の闇に包まれた。






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