幕間:うちの王と聖女がもどかしすぎる件について
侍女に語らせたら総集編のようなものになっちゃいました。
皆様ごきげんよう。私はポルボローネ伯爵家が長女、シトロン・ポルボローネと申します。現在は救国の聖女スミレ様の侍女という誉れある役職に従事させていただいております。
さて、早速ですが本題に移らせていただきます。我が国ヘクセンの王であるヘンゼル・フォン・ヘクセン殿下、そしてアスターの大予言に伝えられし救国の聖女コウサカ・スミレ様。この際なのではっきり申し上げますと、お二人は両想いにございます。にも関わらず進展の遅いこと遅いこと。お二方とも相手の感情に関してだけは鈍感なのでございます。この間なんて、中庭をお二人がお散歩されているので急接近する機会かと思いきや。スミレ様がバラの実のお茶が飲みたいといった話からお茶に関する話に花を咲かせてしまい、ただただ熱く語るスミレ様が可愛いだけで終わってしまいました。ああ、もどかしい。
ところで、聖女という肩書は前例が無いため王族と婚姻できるのか不安でございましたが、宰相であるアーブル・ドゥ・アマンド閣下によると聖女には王族と同等の権限が与えられるそうでございます。つまり、聖女が王と婚約しても全く問題が無い事の確証がとれました。
何故私がここまでお二人の恋路を応援しているか。それは5年前、前王等が粛清された事により突然玉座に座ることとなってしまったヘンゼル殿下を思えば難くないでしょう。当時、殿下はひどく焦燥しきっておりました。妹君であらせられるグレーテル様をメタリカ国王へ嫁がせ、メタリカ国の関係者には常に謙った態度で接しておりました。我が国の神ルーサンギーヌ様からも臆病者の印を押され、息の詰まる思いだったとお察しいたします。それでも殿下は領主を失った領地へ新たな統治者を送り、ヘクセンを再建することに尽力しておりました。私はそんなヘンゼル殿下を心の底から尊敬していたのです。そしてその努力が報われて欲しいとも願っておりました。
そのとき、異界よりスミレ様が顕現なされたのです。ちなみにスミレ様の侍女になるための選抜では、候補者の中にヘンゼル殿下とお近付きになりたいだのといった疚しい感情を持った者もおりましたので、私が完膚無きまで叩きのめして差し上げました。勿論淑女として、でございます。話が逸れましたが、スミレ様は純真無垢で可愛らしいお方です。一方で食に関する知識に長け、他者を饗す心がある一面もございました。この方ならば、疲弊しきった殿下の御心を癒やすことができるのではないかと期待しておりました。そして予想通り、私が侍女として従事する頃にはお二人は互いのことを意識し合っているように思えました。このままであれば婚約も間近──
そう思っていたのは私ただ一人。お二人は奥手と奥手、鈍感と鈍感。好意を伝える事がものす…………ごく難しいようです。そして私には知る権限がございませんが、予言書による何かしらの制約もあるようでした。ああ、もどかしい。しかしようやく、殿下がスミレ様の事を敬称なく呼ぶようになりました。独占欲の現れとも言えましょう。良いですわ殿下。やはりここは男性がリードするべきです。鈍感なスミレ様には直球しかありません。さあ、今こそ告白を!……いたしませんのですか?
嗚呼、
うちの王様と聖女様は
なんてもどかしい!




