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神之児戯  作者: 田澤 邑


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97/97

村人を虚ろに導く洞穴

神之児戯ep97

「さっそく洞穴(ほらあな)について詳しく聞きたいんだが?」

 (いおり)たちは囲炉裏を挟んで末松(すえまつ)の反対側に座ると依頼の話を始める。


「はい、洞穴はこの村から森へ入って北西へまっすぐ進んだところにあります。穴の大きさは大人が余裕で入れるくらいはありましょうか」

「物の怪のような鳴き声が聞こえてくると聞いたが、どんな鳴き声だ?」

「……声は動物というより、こう爬虫類や虫のような高い鳴き声でした」

 末松は鳴き声を思い出したのか生唾を飲みながら語る。

「洞穴に入っていった村人がどんな様子だったかわかるか?」

「その様子を見た者が言うには暗い森の中をまっすぐに前だけを見て導かれる様に洞穴に入って行ったそうです」

 森に人が導かれる様に入って行き行方不明になる。この状況には覚えがある。

「……女郎蜘蛛(じょろうぐも)かも知れないな」

 以前退治した女郎蜘蛛は森の作業員を女郎の姿で誘い、捕らえて食らっていた。

 毒を使い、俺も苦しめられた。


 庵は確認する様に琴葉(ことは)の顔を見ると、琴葉も同じ考えに至ったのか何やら渋い顔をしていた。


「消えた村人は男ばかりか?」

 女郎蜘蛛が女郎の姿で誘えるのは男だけだ。

 ならば被害者は全員男だろう。

「いえ、確かに男もいますが、どちらかというと女の方が多いです。別の村人が見た洞穴に入って行ったという村人も女です」


 どういう事だ?

 女郎蜘蛛が誘えるのは男だけのはず、他の要因で被害に遭ったとしても女が多くなるはずはない。


 ――――


 庵は柊花(しゅうか)たちを連れ、前回と同じ様に昼間の明るい内に何か痕跡がないか調べに来た。


 森は資源が豊富というだけあって、草木が青々と茂っていて少し入ると森の外が見えなくなり方向感覚を狂わされる。


 ……まるで樹海だな。


 森の中は、幸い秋の国と違ってしっかりと人が踏み慣らして通った跡があるので、その跡を辿れば迷う事はなさそうだ。


「……これか」

 村から森へ入って暫く北西へ進むと一丈半(約四、五メートル)程の深さの窪地の中にその洞穴はあった。

「崖や山にできた洞穴だと思ってました」

 柊花が洞穴を見てぼそっと呟く。

 確かに一般的に洞穴といえば崖や山の面にぽっかり空いた穴を想像するだろう。

 俺も洞穴に入っていった村人はまっすぐに前だけを見て導かれる様に入って行ったと言っていたのでそう思っていた。

 恐らく末松も場所と鳴き声などの印象が強くて洞穴の特徴の説明を忘れていたのだろう。


「とにかく、降りて近くで見てみる」

 庵はそう言うと窪地の壁面に足を掛け降りていく。

「お気をつけて」

 柊花はそんな庵を心配して声をかける。

 幸い、窪地の壁面は足を掛けやすく難なく降りる事が出来た。


 入口に近づいて中を覗いてみると洞穴の中は窪地のため雨水が溜まるのか湿っていて独特の臭いを放っている。

「どうじゃ?」

 様子を窺っていた琴葉が聞いてくる。

「暗いな、松明でもないと奥に進むのは難しそうだ」

 庵はそう言うと窪地から上がり近くの松の木に近づいていく。


 「……これがいいか」

 庵は鞘から刀を抜くと松の木から枝を二本選び切り取り刀を鞘に納める。


百合(ゆり)

 切り取った枝の一本を百合に持たせると、庵は再び窪地に降りていく。


 庵が松の木に異能で火をつけ即席の松明にし百合の持つ木に火を移す。


 松の木は松明と書くように、松脂という天然の油脂成分があり燃えやすく脂が燃料となるため、他の木材と比べ火持ちがいい。


「行くぞ」

「はい」

「うむ」

「ええ」

 庵が三人に声をかけると、庵を先頭に、間に柊花、琴葉を挟み、最後尾に百合の順で洞穴に入って行く。


洞穴は最初崖や低い山の壁面にあるのを想像してたけど、それだとどうしても湿気がある設定が面倒になってしまうので窪地で雨水が溜まりやすい洞穴に

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