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神之児戯  作者: 田澤 邑


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森の資源と、畏怖なる洞穴

神之児戯ep96

洞穴(ほらあな)?」

 祝言の宴会から数日後、(いおり)たちは退治屋組合から呼び出され組合まで来ていた。

「ええ、その付近の村では以前から夜中に人が消える事が続いてまして、先日、ある村人が夜中に森の中に入っていくのを別の村人が目撃しまして、後をつけると森の中にできた洞穴に入って行ったとの事です」

 組合員の男は簡素な地図を広げながら説明する。

「その村人は数日経った今も村に戻っていないそうです」

「この五つの村は何で森の近くに作られたんだ?」

 地図を見ると五つある村はすべて森の近くに出来ていた。

「この森は資源が豊富で村はその資源で成り立っていますから」

「その洞穴については何か分かる事はあるか?」

「いえ、なにせ発見されたばかりですから、ただ、実際に近づくと物の怪のような鳴き声が聞こえると言われて周囲の村からは恐れられています」

 つまり、まったく未調査の洞穴に潜るわけか……。


 江戸時代頃の人々にとって深い洞穴はこの世の理が及ばない、妖怪たちの世界に繋がっていると恐れられていた。


「難しいですか?」

 黙って考え込む庵に組合員の男は困った顔をする。

「依頼主は誰だ?」

「洞穴を発見した者の村が五つの村からの依頼をまとめて依頼しています」

 村からの依頼となると代官の俺が動かない訳にはいかない。

 それは組合もわかってはいるだろうが、本来なら洞穴の調査は事前に規模や深さなど調査し、代官が赴いて本格的な調査をするのはそれからなんだろう。

 だが、今回は消えた村人が洞穴に入っていくところが目撃されている。

 つまり、その洞穴に何らかの怪異が発生している可能性があり、俺に白羽の矢が立ったという事だ。


「また、報酬は各村から小判一枚と一分金一枚ずつと着手金として組合から二分金一枚をお出しします」


 着手金を出すという事は組合としても未開の洞穴は放っておけない訳か。

 まあ、妖怪たちの世界に繋がってるというのは言い過ぎだが、放っておいて魑魅魍魎の巣にでもされたら大変だからな。

 不安の芽は早いとこ摘んでおくに限るのだろう。


 合計で小判六枚と二分金と一分金が一枚ずつか。

 正直、代官の俸禄もあるから退治依頼は無理して受ける必要もないんだが……。代官である故に民の困り事を解決しなければならない。なんとも因果な事か。


 庵が確認する様に一緒に話を聞いていた柊花(しゅうか)琴葉(ことは)百合(ゆり)を見ると、柊花と琴葉は微笑み、百合は無言で頷く。

「……わかった、依頼を受けよう」

「ありがとうございます」

 組合員の男は庵の言葉を聞いて安心して笑顔になると肩の力を抜く。


 数日後、庵たちは都から離れた洞穴のある北東の村まで来ていた。

「ちょっといいか?」

 庵は村の入り口付近にいた男に話しかける。

「はい……⁉」

 男は庵の腰に携えた刀を見て目を見開いて驚く。

「退治屋組合から来た者だが依頼人の末松(すえまつ)に会いたい」

 庵は男の態度に気づきつつも何も言わずに話す。

「あっ……、はい、こちらです」

 男は退治屋組合から来たと聞いて安心すると依頼人の家まで庵たちを案内する。

「末松、退治屋が来てくれたぞ!」

 男は案内した家の戸を叩きながら叫ぶ。

「……よく来て下さいました、どうぞ中へ」

 中から出てきた男は庵たちの姿を確認すると、畏まり家の中へ案内する。


 家は藁葺き屋根の木造の平屋で玄関を入ってすぐに土間があり、土間の隣には中央に囲炉裏がある板張りの広間があり、その先に畳を敷いた座敷がある一般的な家だ。


 森の資源が豊富という事だが、都から離れた農村ならこんなものか。


最初は洞窟と書いてたけど、洞窟という言葉は一般的ではなかったのからしいので、調べて洞穴にした。

気にしすぎかもしれないけど、できる事はやっておかないと、後から修整するのは大変だから

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