守り手の片鱗
神之児戯ep94
簡単な依頼といっても今回は柊花もいる。そうそう後れを取る事はないと思うが警戒するに越した事はない。
「庵殿」
百合が庵の名を呼びながら自身の腰の刀に手を掛ける。
早速お出ましか。
庵と琴葉は百合の声を聞いて柊花を前後から守る様に挟んで周囲を警戒する。
……何処かから何やら音が聞こえてくる。
これは……、水音……、川の中か!
庵が川を見ると川の中にいくつか影を確認する。
すると、すぐさま川の中から何かが複数勢いよく飛び出してくる。
猿に似た子供くらいの背丈に赤い顔に一つ目で全身が毛に覆われている。
これが山童に間違いないな。
山童は前方に三匹と後方に二匹、庵たちを挟んだ状態で庵たちを見ながら奇声を発する。
「琴葉、百合、そっちの三匹を頼む!」
「うむ、任せよ!」
「ええ!」
琴葉と百合は眼前の三匹を見ながら返事を返す。
庵は無言で刀を構えると後方の二匹を見据える。
すると、手前の一匹が庵に向かって飛び掛ってくる。
一方、前方の三匹を相手にする琴葉と百合は、琴葉が爪を伸ばした手刀で手前の山童の胸を貫き、百合が風刃を放ち奥の一匹を討伐する。
残った山童はたじろぐと再び川に入る。
庵は飛び掛かってくる山童に向かって刀を突き出し飛び掛かってくる勢いを利用して串刺しにすると、地面に落ちたその山童に足をかけ刀を引き抜く。
そのまま続けて襲い掛かろうと駆け寄ってきた山童の首を横薙ぎで切断する。
しかし、再び川に入った山童が川の中を移動し庵と琴葉たちの間にいた柊花に川の中から襲い掛かる。
だが、二匹目を仕留めたばかりの庵とその庵を見ている柊花は気づかない。
「しまった!」
その琴葉の声に柊花が反応し振り向き様に自分に襲い掛かろうとする山童に気がつく。
「……⁉」
柊花が思わず目を逸らしながら山童の攻撃を防ごうと反射的に手前で両腕を交差させた瞬間、川の水が勢いよく飛び出してきて柊花と山童の間に壁を作り出す。
山童はその水の壁に阻まれて柊花に手を出す事ができない。
すかさず、琴葉がその山童の首を背後から手刀で切断する。
それを柊花が確認すると水の壁はその場に崩れて消える。
「今のは?」
庵は言いながら柊花に駆け寄る
「私も咄嗟の事だったので……」
柊花は状況が理解できず困惑する。
多分、山童を拒絶しようとする強い意識が無意識に異能で水の壁を作り出したのだろう。
それはつまり、柊花は回復役だけでなく防御役もできるという事だ。
だが、防御役は積極的に戦況を見定める必要がある。しかし、柊花にはあまり戦闘には参加せずに安全な所で回復役に専念してほしいところだが……。
「柊花は敵の攻撃を異能で防げるのではないか?」
庵の考えなど知らずに琴葉がはっきり言う。
「……その為には柊花さんも我々と一緒に前線に立ち戦況を見極める必要があります。ですが、適切に防いでくれればいいですが、無闇に防がれては戦いの邪魔になりかねません。それなら後ろに控えて回復役に回って頂いた方がいいかと」
百合が庵の考えを知ってか知らずか代弁する。
「あ、あのっ、私は……」
柊花は琴葉の発言に異を唱える百合を見て自分の所為で言い争いになるのではと気を使って狼狽える。
「柊花は治療役だ。前線に立つ必要はない」
庵は山童の目玉を回収しながら答える。
「戦いは何が起きるか分かりません。それに治療役の柊花さんがいてくれるのは心強いです」
百合も空気を読んで柊花を励ます。
「庵がそれでいいなら我は構わぬが……」
琴葉は納得がいかないのか怪訝な表情をする。
その後、庵たちは数回山童たちを退治し、もう気配がない事を確認すると退治屋組合に報告に戻った。
山童は秋から春の姿で春から秋までは河童らしいけど、そこまで書くと大変なので今回はここまでで




