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神之児戯  作者: 田澤 邑


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93/97

男装の麗人と無自覚な男

神之児戯ep93

「く……、中々難しいですね」

 回転していた落ち葉は風が収まると、すぐにその場に落ちて動かなくなる。

「コツを掴むまでは地道に努力する事だ。力任せにやろうとすると、すぐに霊力が尽きるぞ?」

「ええ、わかりました」

 百合(ゆり)(いおり)に笑顔で返事をすると再び落ち葉に向かって手をかざす。


「……庵様、これからは退治依頼に行かれる時は琴葉(ことは)さんと百合さんもお連れになるのでしょうか?」

 じっと百合とのやり取りを見守っていた柊花(しゅうか)が聞いてくる。

「ん? そうだな、家にいても手持ち無沙汰だろうからな」

「ならば私も同行させていただけませんか? あれから異能の鍛錬も欠かさず行っていましたので、何かあればお役に立てるはずです」

 言うと柊花は縋るように庵を見つめてくる。


 今まで自分を殺して他人に負担をかけないようにしていた柊花がこんな無茶を言うなんて珍しいな。

「庵様、柊花さんは今まで庵様が退治依頼に行かれる度に心配して無事を祈っていたんですよ」

 (すみれ)が後ろから柊花の肩を抱きながら庵に説明する。


 柊花の想いを知った今思えば、相当心配をかけてきたのだろう。

 柊花がいれば多少の無茶ができるし、先の亡者の時の様な物量で押されても対処しやすいかも知れない。


「わかった。だが、まずはそれ程難しくない依頼を受けて様子を見る。何か想定外の事態が起きるかもしれないからな」

「は、はいっ!」

 柊花は笑顔で返事をして菫と抱き合った。


 ――数日後。


 庵は柊花と琴葉と百合を連れて退治屋組合で壁に貼られた様々な怪物の退治依頼のお触れを見ていた。


 琴葉に百合もいるから鬼や河童程度ではこちらが過剰戦力だが、柊花を慣れさせるためにも初めは簡単な依頼にしたい……。

 おっ、これは。


 庵は山童(やまわろ)と書かれた依頼書に目が留まる。


 山童、猿に似た子供のような姿をしており、赤い顔に一つ目で全身が毛で覆われている。

 川や谷で人をからかい何十人力という怪力で水に引きずり込む。

 その姿を見た者は不幸に遭うと恐れられている。


 山童について考えていると神に刻み込まれた記憶が浮かぶ。


 場所は、都近くの谷だな。


 そういえば、こうしてお触れの退治依頼を受けるのは初めてだな。

 今までなんだかんだで指名依頼しか受けてなかったからな。


 そんな事を考えながらお触れを壁から剥がし受付に持っていく。

「この依頼を受けたい」

「は、はい!」

 受付の女は庵の事を知っているのか緊張して畏まる。

「……こちらで受付完了です。討伐の際には討伐証明の目玉を必ずお持ち下さい……」

 受付の女は説明しながら顔を上げ、百合を見ると見惚れて言葉を止める。

 無理もない、百合は元の世界なら女から見れば男装の麗人とでもいった感じだろう。

 実際、ここに来るまでも百合に見惚れている人は何人もいた。


 だが……。


「もういいか?」

「はっ……、はい、失礼しました」

 受付の女は庵に声を掛けられ我に返ると、慌てて返事をして頭を下げる。


 受付を済ませ組合を出るまで庵たちは組合の中にいる他の退治屋たちの注目の的だった。

「は〜……」

「如何なさいました?」

 庵の溜め息を聞いて柊花が心配そうに聞いてくる。

「いや、少し目立ち過ぎてるなと……」

「それは……」

「いや、わかってる、みんな百合に見惚れてるんだろ」

「えっ……」

「いや、百合は女から見ると凛々しい理想像に見えるのだろう」

「はあ……」

 柊花は庵の言葉に呆れた様に返事をする。


 庵は三人を連れて谷まで来ていた。


「……ここら辺だな」

 庵は目的地の川の流れる谷間に着くと鞘から刀を抜き辺りを警戒する。


初めは百合はサクラ大戦のさくらをイメージしてたんだけど、そこまではっきり覚えてないから、ほぼなんとなくになってしまってる。

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