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神之児戯  作者: 田澤 邑


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三者三様の支え

神之児戯ep88

 先方に返事をしてから約一月後、やっと百合(ゆり)と挨拶を交わす事となった。

「随分かかりましたね」

 (いおり)柊花(しゅうか)(すみれ)を連れて城まで来ていた。

「そうか? 婚儀なんてこんなものだろう。百合の家は武家だろうから、通常、輿入れまでは一年くらいかかるぞ」

 守岡(もりおか)に先導され城の中を歩きながら話していた。

「一年もですか⁉」

「そういえば庵殿は成り上がりだったな、違和感がないからついつい忘れてしまう。嫁入り道具や婚礼家具の準備など、婚儀は正々堂々と行わなければ家の品格を疑われるからどうしても一年程はかかる」

「百合の家が武家というのは確かなのですか?」

「確認したわけではないが、所作が美しかったからな、幼少の頃から立ち居振る舞いを躾けられてなければ、ああはならないだろう」


 守岡と話しながらいつもの十二畳ほどの部屋に入ると既に桜姫(さくらひめ)と百合が待っていた。

「お久しぶりです」

 百合は庵の姿を確認すると正座したまま庵に膝を向け頭を下げて言う。

「そちらが……」

「ええ、先ほど説明した柊花さんと菫さんです」

 桜姫は柊花と菫について事前に百合に説明していた。


 まあ、藩を通しての婚儀となれば相手の仔細は事前に伝えるか。

 ……それにしてはこちらに百合の仔細は一切伝わってないが。

 あえて伝えなかったのか、それとも隠す理由があるのか。


「百合の実家は朧にあるのか?」

 言いながら庵は百合と桜姫の反対側に用意された中央の座布団に座り、柊花と菫は庵の両脇の座布団に座る。

「いえ、あいにく私に帰る家はありません。私は武者修行中の流浪の身、肉親はいませんので捧げられるのは、この身一つとなっています」

 幼い頃に両親を失ったのかもしれない。

 あまり深く立ち入れない事だが夫婦になるなら聞くべきか?

 いや、まだ、あまり深くは踏み込めないな。

 自分から話すまで待つか。

「では、その立ち居振る舞いはどこで習った?」

 桜姫の後ろに控えた守岡が気になったのか会話に割って入る。

「これは滞在先の各所で自然と身に付いたものです」

 滞在先? 武家の中でもそれなりの所でなければこの様な所作は身に付かないのではないか?

「いつから修行しているんだ?」

「もうかれこれ七年くらいになります」

「今いくつだ?」

「今年で十八になります」

 この世界は数え年だから元の世界で考えると十七歳、つまり百合は十歳の頃から一人で修行の旅をしていたって事になる。

 それでも十分に幼い、そんな年で修行の旅なんかできるだろうか?

「私からも聞いてもよろしいですか?」

「ああ」

「柊花さんは水の異能が扱え、家の炊事や洗濯を担っていると聞きましたが、菫さんは普段呉服屋の仕事をしていると聞きました。ですが、妻ならば夫の側で支えるのが当然ではありませんか?」

「……それは」

「菫はうちの家計や俺の代わりに代官の仕事をしてくれている。十分に俺を支えてくれている」

「……庵様」

 菫は庵の言葉を聞いて微笑む。


 百合は確認する様に桜姫を見ると桜姫は百合を見て頷く。


「成る程、家では柊花さんが支え、仕事では菫さんが支えていると……」

 言うと百合は着物の襟元を整え座卓に頭を打ち付けない様に座ったまま後ろに下がると庵に向かって深く頭を下げる。

「……⁉」

「では、私は常に庵様の傍らに寄り添いその身をお守りいたしましょう」


「ちょっと待ってくれ、そもそも百合はなぜ俺と夫婦になりたいと思ったんだ?」

「私は幼い頃から刀に生きてきました。自分より強い者はそうそういないと自負しています。ですが、庵様はそんな私と互角の強さ、いえ、恐らくまだ本気じゃなかったでしょう。故に夫にするならば庵様しかいないと考えたのです」


よく作家がいつも納得いかないと言ってるが、この回はどうも納得いかない。

いまいち盛り上がりに欠けると言うか……。

まあ、毎回盛り上げるのも無理があるが……。

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