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神之児戯  作者: 田澤 邑


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87/97

公儀の神輿

神之児戯ep87

「いや、依頼の退治とは違ってしまったが……」

「むしろ、最善の結果になったと思います。漁ができる程度とはいえ、亡者を斬り伏せ退治されていたら脅威はなくなっても村はより暗く沈んでしまっていたでしょう。こちら討伐確認書です」


 庵が村長から討伐確認書を受け取り窓から外を見ると老人が洞窟に向かって手を合わせて拝んでいた。


「村人以外の者が関わる事で亡者になる者が更に増えると、じいさんは憑き物が落ちたかの様にあの言葉の真意を説明しましたよ」

 成る程、あの老人は老人で被害が広がるのを防ごうとしてたのか。


 ――――


 漁村からの帰り道。

「……う〜」

 琴葉は自身の着物の袖の臭いを嗅ぐとすぐに袖を遠ざけて顔を顰める。

「どうした?」

 その様子に庵は何事かと確認する。

「戦っている時に亡者の返り血が着物に付いてしまって酷い臭いじゃ」

「帰ったらすぐに風呂の用意をする。着物は柊花に洗ってもらえ」

「……うむ」

 琴葉は顔を顰めたまま返事をする。


 ――庵の家。


「お帰りなさいませ、庵様、琴葉さん」

 家に入ると柊花と咲耶が出迎える。

「……⁉」

 咲耶は琴葉に抱きついたかと思うとすぐに鼻をつまんでどこかへ走っていってしまう。

「あっ、咲耶ちゃん? どうしたんでしょう?」

「あ〜、柊花、取り合えず琴葉の着物を洗濯してやってくれ」

「はい、……うっ!」

 庵に言われ柊花が琴葉の着物に顔を近づけるとあまりの悪臭に柊花は顔を離して顰める。

「……う〜」

 咲耶に続き柊花にまで避けられ琴葉は泣きそうな顔になる。

「はっ、申し訳ございません、さっ、琴葉さんこちらでまずはお着物を」

 柊花は琴葉と距離を取りながら琴葉を彼女の部屋まで先導する。

「……俺は風呂の用意をするから、琴葉すぐに入ってしまえ!」

「……うむ〜」

 琴葉は柊花の対応が堪えたのか、庵の言葉に弱々しく返事を返す。


 風呂の用意をし琴葉が入ると庵は退治屋組合に報告に来ていた。


「……胎内巡りですか」

 組合員の男は庵からの討伐報告を興味津々に聞いていた。

「ああ、当初の依頼内容とはだいぶ違ってしまったが」

 庵は言いながら討伐確認書を差し出す。

「いえいえ、こちらとしても最善の形にして頂いたと思います。もし亡者を文字通り退治していたら漁ができるようになっても村は暗く沈んで別の意味で食糧危機になる事も覚悟しなければならないと考えていました。それにしても凄いですね」

「いや、たまたま洞窟があったお陰で何とかなっただけだ」

 庵は首を振りながら謙遜する。

「それもそうですが庵さんのその知識です。以前の秋の国の中抜きの証拠の押さえ方といい今回の事といい」

 そうか、元の世界の知識があれば当たり前の事もこちらでは珍しいのかもしれない。

 それどころかあまり派手にやり過ぎると奇異の目で見られる恐れもある。

「たまたま知っていただけだ」

 嘘ではない。

 下手に言い訳をして後からぼろが出てもまずいからな、これくらいがいいだろう。

「やはり代官ともなると、そういう知識も色々と必要になるんですね」

 組合員はそう言いながら討伐確認書を確認し奥から持ってきた報酬である小判五枚を差し出す。

「それとこちらは御上からの追加報酬です」

 言うと組合員は帯で巻かれた小判の束三つを机の上に置く。

「御上から?」

「ええ、食糧危機になるかもしれない大事でしたからね。依頼時にお伝えした通り御上も何もできずに手を拱いている状態でしたから、楠さんが依頼を受けたと聞いてすぐに報酬を用意してきましたよ」

 何やら御上の掌の上でうまく踊らされた気がしないでもないが。


村からの依頼のはずが実は御上(公儀)から上手く担がれたという意味でタイトルを公儀の神輿としたが、ちょっと捻りすぎただろうか

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