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神之児戯  作者: 田澤 邑


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84/97

群がる亡者

神之児戯ep84

 (いおり)がそんな事を考えながら浜を見ていると浜の端にある岩壁に小さな洞窟が見える。


「あの洞窟は何だ?」

「……ああ、あの洞窟は何の変哲もないただの天然の洞窟で、人一人通れるくらいの広さで、奥は海に面した岩壁の穴に繋がっています。中に入ると波の音が広がる不思議な洞窟です」

 村長は庵の視線を追って岩壁の洞窟を見ると説明する。


 そういえば元の世界の海にもあんなのがあって何かの観光地になってたな、あれはなんの観光地だったかな?


 あまり興味がなかったのでよく覚えてないな。


「亡者には手を出してはならない!」

 突然、そんな怒鳴り声が聞こえ振り向くと一人の老人が庵たちを見ながら立っていた。

「はぁ、また、あんたか……」

 村長は老人の顔を見ると溜息をついて言う。

「……えっと」

「じいさん、まだそんな事言ってんのか?」

「亡者に手を出せば被害は益々増える!」

「おいっ! 誰か、じいさんを家に連れてけっ!」

 村長が叫ぶと若い男の村人が二人やって来て老人を連れて行く。

 老人は連れて行かれながらも庵たちに向かって叫び続けていた。

「お見苦しいものを……、すみません」

 村長は庵たちに向かって頭を下げる。

「いや、それよりもあの老人は?」

「あのじいさんは数年前に息子で私の友人でもある剛蔵(たけぞう)を海で亡くしてるんです」

「亡者にやられたのか?」

「いえ、漁に出たっきり戻らなかったので亡者の仕業かどうかは……」

「……そうか」


 ――村長の家。


「じゃ、改めて海の亡者について詳しく聞かせてくれ」

「はい、現れるのは、だいたい丑の刻くらい、海から現れ浜から上がって村の中を徘徊します。見た目は人とさほどかわりませんが、動きは鈍く、肉や骨が露出したものや中には酷い悪臭を放つものもいます」

 丑の刻……、確か深夜の一時から三時くらいまでだったか。

「悪臭が酷いと我は鼻が利かぬから思うように動けんかもしれんのう」

 琴葉(ことは)は呟くように言う。


「……数はどれくらいか分かるか?」

「正確には分かりませんが、去年の時点では二百から三百ほどいたかと」


 ……厄介だな。

 組合員には取り合えずと言って引き受けたが、動きが鈍くても数で押されたら対処しきれずに退けない可能性もある。


 かといって、ここで退く訳にもいかない。

 取り合えず、やれるだけやってみるしかないか……。


 ――丑の刻。


 村人は浜から一番離れたいくつかの小屋に全員が避難し、庵と琴葉は浜の近くの物陰に隠れて亡者の出現を待っていた。


 そろそろか……。


「おい」

 琴葉は小声で庵に声をかけると海を指さす。

 庵が琴葉の指差す先の海を見ると海面が盛り上がり、その盛り上がりはゆっくりと浜に近づいてくると海面からいくつもの亡者の顔がゆっくりと見えてくる。


 ……あれが亡者か。

 予想はしていたが、見た目はまんま元の世界のゾンビと一緒だな。

 噛まれて感染とかしないだろうな。


「う〜……、あ〜……」

 亡者たちは唸り声を発しながら次々と海から上がってくる。


 これは……。


 亡者たちは庵が懸念した通り砂浜一面に広がって上がってくる。


「……ちっ、琴葉っ!」

 庵の掛け声で二人は物陰から亡者が上がってくる砂浜に向かって駆けていく。

「どうする気じゃ⁉」

「まずは刀で一体ずつ首を跳ねる」

「なんとも心許ないのう」

 言いながら琴葉は爪を構えると二人は亡者に向かって斬り込んでいく。


 手前の亡者三体は庵が近づくと手を伸ばし庵を捕まえようとする。

 だが、亡者の動きは説明通りに鈍く、庵は亡者の手を躱しながら手前の一体の首を横一文字に跳ねた。


丑の刻は現在の時刻にすると1:00〜3:00

ちなみに、よくいう丑三つ刻は2:00〜2:30

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