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神之児戯  作者: 田澤 邑


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83/97

海の亡者

神之児戯ep83

 (いおり)は百合と挨拶を交わす日取りが決まるまで退治依頼をこなして過ごしていた。

(くすのき)さん」

 庵が退治屋組合で壁に貼られた様々な怪物の退治依頼のお触れを眺めていると、組合員の男が近づいて来て声をかけてくる。


「実は楠さんにお願いしたい特別な依頼があるんですが、いいですか?」

 そう言うと組合員の男は庵を以前と同じ受付とは別に設けられた個室に案内する。


「また御上(おかみ)からの依頼か?」

 庵は個室に入ると中央にある座卓脇に用意された座布団に腰を落としながら聞く。

「いえ、今回は御上からではないのですが緊急性を要します」

 組合員の男も反対側に用意された座布団に腰を落としながら説明する。


「依頼というのは、西の海の漁村で漁師の船が海の亡者に襲われ漁ができなくて困っていまして、その海域は魚が豊富で春の国に出回ってる魚はあそこで捕れたものが殆どで、あそこで漁が行えないと国が食糧危機に陥ってしまうのです」


「成る程、だが、食糧危機に陥るなら、それこそ御上が対策しなければならない事じゃないのか?」


「それが、その漁村では毎年同じ時期に海の亡者が現れるのですが、その亡者というのが過去に漁の最中に亡くなったその漁村の漁師たちらしく、あまり大袈裟な退治などをしてほしくないと漁村から言われており、御上も手を拱いている状態なのです」

 成る程、自分たちの元家族や先祖たちともなれば退治するのは気が引けるか。

「また漁ができる程度にしてもらえればと御上にそういった依頼はしたくないらしくて」


 気持ちはわからなくもないが、難しいな。


「とりあえず引き受けるが、上手くできるかはわからないぞ?」

「楠さんに無理なら御上が対策するのもやむなしです」


 ――漁村。


 庵が琴葉(ことは)を連れて漁村に着くと普段は活気があるらしい漁村は人の気配がまったくなく。船もすべて砂浜に引き揚げられ、何も知らなければ廃村と見間違える程だ。


「本当にここか?」

 同じ様に思ったのか琴葉は辺りを見渡して小首を傾げながら庵に確認する。


 庵が周囲を見渡していると中年の男性が一人近づいてくる。

「退治屋の方ですか?」

「ああ」

「依頼を出した村長です」

 村長はそう言って深々と頭を下げる。

 村長というには少し若い気もするが……。

「……先代の村長は亡者の被害に遭ってしまい行方不明になってまして、今は息子の私が村長を受け継いでいます」

 庵の様子を察してか村長は事情を説明する。


「ここではなんですので、うちへどうぞ」

 村長はそう言って庵たちを自分の家まで案内して歩き出す。


「依頼は海の亡者退治って事で間違いないか?」

「はい、毎年漁師が何人か亡者に海に引きずり込まれ亡くなる事故が発生しているのですが、その度に亡者が増え、近年は手がつけられなくなってきているので……」

「亡者の中には村人の家族だったのもいるかも知れないがいいのか?」

「……致し方ありません。漁ができなければ我々は生活ができませんから……」

 歩きながらそう答える村長は、右手を強く握りしめながら震わせていた。

「……そうか、亡者は海から上がってくるのか?」

 庵は村長の様子に気付きつつもあえて触れずに海を見渡す。

「……はい」


 九町(約一キロ)程ある砂浜は普段なら普通の砂浜にしか見えないのかも知れないが、この広大な砂浜から亡者が上がってくる様子を想像して庵は血の気が引いた。

 もしこの砂浜一面に亡者が広がって上がってきたら、足元は砂に足を取られて動きにくい上に一面に広がっていて距離があっては対応に遅れる。

 火の異能を使うのも、目の前で家族だったものが焼かれるのを村人たちが見たら精神的な苦痛は計り知れないだろう。

 それに浜に引き揚げられた船にも延焼しかねないしな。

 果たして琴葉と二人でどこまで対処しきれるか……。

あまり立て続けに嫁が増えるのもなんなので、一呼吸置こうと話を考えてたら、思いの外、盛り上がってしまった

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