三様の理
神之児戯ep80
「今お茶をお持ちしますね」
庵が部屋に入ると柊花はそう言って庵の返事を待たずに襖を閉めて台所にお茶を用意しに行く。
一緒になる事になってから柊花はああして俺を献身的に支えようとしてくれている。
あんな柊花に二人目の妻を迎えるなんて言ったらどんな顔をするか。
「失礼します」
襖越しに柊花のそんな声が聞こえると襖が開きお盆に湯飲みを乗せた柊花が入ってくる。
「どうぞ」
「ん、ああ」
「……何かございました?」
「え?」
「帰っていらしてから、ずっと上の空で、何か考えているご様子でしたので」
見透かされてるな。
どうやら柊花に下手な誤魔化しは効かない様だ。
庵は柊花に御前試合で勝負をした朧藩の百合に夫になって欲しいと言われた事、桜姫と守岡から朧藩は南の大陸からこの国を守る防衛拠点なので無下にしないでくれと言われ権妻として迎える事を提案されたその経緯を、正直に話した。
「では、その方を迎える準備をしないといけませんね」
庵は柊花の意外な言葉に驚く。
「いいのか? 一緒になってくれと言った直後にこんな事……」
「夫婦といっても家同士の繋がりなど色々ありますし、お武家様はそういうものだと聞いています」
思い返せば、確かに百合の態度は好いた惚れたというより何か事務的というか冷静な感じだった。
なんか俺一人だけが空回りしてる感じだな。
「私の様な貧しい村の者は庵様と一緒になれず、本来なら奉公として家の使用人になるのが当然です。運よくお武家様の目に留まって妾になれるだけでも有難い程です」
元の世界……、というより、俺が生きていた時代と江戸時代では考え方というより常識が根本的に違うんだな。
「私は今からでも妾で構いません。私はお側に置いていただけるだけで満足ですので」
「そんな事はありえないから安心しろ、百合を迎える事になっても本妻は柊花だ」
「……はい」
柊花は庵に気を使ってるのか健気に笑ってみせる。
――数日後。
庵は退治屋で依頼を受け田んぼで琴葉と妖怪退治を行なっていた。
「琴葉、そっちに行ったぞ!」
庵が叫びながら指差す先で田んぼの水面が盛り上がり移動する。
「うむ、任せよ!」
琴葉は言いながら向かってきた水面の盛り上がり目掛けて拳を打ち込む。
「む? ああー! 逃げおった!」
打ち込んだ拳に手応えがなかったのか、琴葉は打ち込んだ拳を上げるとその拳を見つめて奇声を上げる。
そんな琴葉の背後の水面が盛り上がると水面から泥田坊が姿を現し琴葉に襲い掛かる。
「琴葉!」
庵は駆けながら叫ぶと横から刀で泥田坊を真っ二つにする。
泥田坊は声にならない声を発すると嫌な音を立てて崩れ、泥へと変わった。
「ふう、これで全部か?」
言いながら、庵は泥田坊が崩れた泥の中から浮き出てきた討伐証明である目玉を拾う。
「どうした、退治中もどこか心ここにあらずといった感じじゃったぞ?」
琴葉は自分が退治した泥田坊の目玉を拾い集めながら言う。
「ん? ああ」
柊花はそういうものだと受け入れてくれたが、やはり百合を迎えるのは心配だ。
まだ少ししか話していないが、百合はなんと言うか、生真面目でとっつきにくそうだったから、一緒に上手く生活していけるか不安で仕方ない。
特に琴葉なんかはあの時の霊力の持ち主が百合だと知れば必要以上に警戒するか、もしかしたら揉め事に発展するかも知れない。
はぁ〜、色々考えると憂鬱になる。
そんな事を考えながら退治屋組合で泥田坊の討伐報告を済ませ家に着き玄関を開けると。
「庵様!」
庵が帰ってきた事に気付いた菫が奥から小走りで駆け寄ってくる。
タイトルの三様の理は仏教用語の方じゃなくて読んだまま
三者それぞれの理




