結実
神之児戯ep78
「柊花、少し真面目な話をしたいんだが……」
「……何か込み入ったお話ですか?」
柊花は庵の様子が気になるのか、庵の顔を心配するように見つめながら言う。
「ああ」
「では、お茶をご用意致しますから、お部屋でお待ち下さい」
柊花はそう言うと微笑み台所にお茶を入れに行く。
――庵の部屋。
「失礼致します」
庵が部屋で待っていると襖越しに柊花の声が聞こえ、柊花が部屋の襖を開きお盆に載せたお茶を持って入ってくる。
「それは?」
お盆の上にはお茶以外に見慣れた菓子が載っていた。
「菫さんからいただきましたカステラです」
「そうか……」
庵は聞きながら何処か上の空で、柊花もそんな庵の様子に気付きつつも敢えて何も言わなかった。
「菫と会ったのは都に来てすぐだったな」
庵は気まずくなり無理やり話題を振る。
「そうですね、あの頃は私も何の力もなかったので庵様と仕事の話をする菫さんが羨ましくもありました」
柊花は言いながら庵の前に湯呑みと皿に乗ったカステラを置く。
「そうだったのか?」
庵は聞きながらお茶を一口飲む。
「ええ、それから私に水の異能の才能があるとわかっても何もできない私は家で待つ事しかできず……」
そう言うと柊花は健気に笑ってみせる。
「そんな事はない、柊花が家を守ってくれているから俺は安心して仕事ができる」
「そんな……」
柊花は滅相もないという様に首を振る。
「本当だ、柊花がいる所が俺の帰る場所だ」
「……⁉」
柊花は庵の言葉に驚き、目を見開きながら庵を見る。
「柊花、今更だが俺と一緒になってくれないか?」
柊花は庵の告白に再び驚き両手を口に添えると目から涙が溢れる。
「村で鬼から救っていただいた時から、私は庵様をお慕い申し上げております。私の様な者でよろしければ、お側にいさせて下さい」
柊花は涙を溢しながら微笑んだ。
――――
日は落ち外は既に真っ暗になっていた。
庵は部屋に布団を敷き柊花を誘う。
庵が柊花の手を取ると柊花は驚き身体を強張らせる。
「……嫌か?」
思えば柊花はあの閉鎖された村で育ってきたから、こういった知識がないのだろう。
「い、いえ、ただ、私はどうすればよいのか……、申し訳ありません」
あの閉鎖された村でその日生きるのが精一杯だった柊花にはこういった事がどういう事か詳しく分からないのだろう。
「気にするな、俺に任せて、焦らず、ゆっくりでいい」
庵は柊花の目を見ながら言って安心させる。
「……はい」
柊花は顔を隠すように庵の胸に顔をうずめる。
庵はそのまま柊花を布団の上に横にすると柊花の顔を見つめ唇を重ねた。
――翌朝。
「……ん」
庵は窓から差し込む日の光で目を覚ました。
ふと、横を見ると柊花が布団で顔の半分を隠しながら庵の顔を見つめていた。
「……お、おはようございます」
「あ、ああ」
二人は照れくさくなり目を逸らす。
「あ、朝餉の用意をいたしませんと、……も、申し訳ありません!」
柊花は朝餉の用意をしようと布団から出るが、自分が裸だった事に気づき、慌てて側にあった着物を手に取る。
――居間。
「くあ〜」
柊花が台所で朝餉の用意をしつつ庵が居間で寛いでいると琴葉が寝起きの目を擦りながら咲耶とやって来る。
「お前ら、ずっと、寝てたのか?」
昨日は日が落ちる前から寝ていた気がするが。
「昨日は咲耶と一日中遊んでいたからのう、……ん?」
言いながら琴葉は庵と柊花を交互に見て疑問の声を上げる。
「……どうした?」
「いや、何かこう、二人の雰囲気が今までと違うというか……、何かあったか?」
琴葉は二人の変化にいち早く気付いた。
前話から一気に書き上げたから二日連続投稿になった。




