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神之児戯  作者: 田澤 邑


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71/97

本気

神之児戯ep71

 だよな、なら……。


 (いおり)百合(ゆり)を追うように前に出ながら右逆袈裟打ち込む。

 百合は右側に木刀を縦にしそれを防ぐが庵の振るう木刀の力に押されて後方に浮き上がる。

 庵は右逆袈裟から流れる様にそこに上段を打ち込む。


 身体が浮いていては躱せまい。


 百合はそれを木刀の両端を持ちながら頭上に構え防ぐ。


「おおっ!」

 吉宗(よしむね)は前のめりになりながら、他の参加者たちと一緒に歓声を上げる。


 これくらいでいいだろう。


 お互いに腕が立つ事は周囲も理解したはず、百合ほどの腕の立つ者に負けたのなら誰も文句は言わないだろう。

 後はどうやって負けるかだが骨などを折られるのは避けたいな。


 百合は木刀に力を込めて庵の木刀を弾くと右側から横薙ぎを打ち子む。

 庵は百合の横薙ぎを上体を後方にそらして避ける。

 庵は百合が木刀を振り切ったところに身体を捻りながら飛び上がり左側から横薙ぎを打ち込む。

 百合は再び右側に木刀を縦にして防ぐ。

 そのまま鍔迫り合いになるとお互いに後方にすぐに離れた。


「納得いかぬ、貴様はもっと強いだろう、何故本気を出さぬ?」

 お互いに距離を取ると百合が眉間に皺を寄せながら庵に木刀の先を突きつけて言い放つ。


 百合の言葉に周囲がざわつく。


 ……気付いてたのか。

 庵が吉宗や守岡(もりおか)の表情を窺うと二人とも百合の言葉を聞いて怪訝な表情をしている。


 どうやらわざと負けるのは無理そうだ。

 ……くそっ、せっかく穏便に済ませそうだったのに、余計な事を。


「ふう、わかった。ここからは本気で相手しよう」

 正直、俺も自分の限界がどれ程か知りたいと思ってたし、いい機会だ。


 庵の言葉を聞いた百合は嬉しそうに微笑み木刀を頭の高さで両手で持ち切っ先を相手に向ける霞の構えをとる。


 それを見た庵は正眼の構えをとる。


 「……」

 その場の全員が黙り静寂が流れる。


 すると、百合が目にも留まらぬ速さで庵との距離を詰め庵の顔めがけて突きを放つ。

 庵は顔をずらしながら木刀で百合の木刀の軌道を右側に逸らし、そのまま百合に左袈裟を打ち込む。


 百合は左に移動して避けると再び庵との距離を詰め上段を打ち込んでくる。

 庵がそれを木刀で防ぐと百合は中段、下段、上段と素早く立て続けに連続で激しい攻撃を打ち出してくるが庵はそれらを全て木刀で防いでいく。


「ははっ!」

 百合は楽しそうに笑い声を上げる。


 試合場に木刀の打つかり合う音だけが響き渡る。


 ちょっ、まっ! だあぁぁ!


 庵は百合の連続した激しい打ち込みに捌き切るのがやっとで思考が追いつかない。


 すると、激しく酷使されたお互いの木刀が音を立てて砕け散った。


「なんとっ!」

 二人の木刀が砕け散ったのを見て重役は目を見開きながら驚く。

「こ、これは……、いかが致しますか?」

 言いながら重役は吉宗を見ると、吉宗は膝立ちになり呆然と庵と百合を見つめていた。

「……上様」

 見かねた守岡が吉宗に近づき声を掛ける。

「あ……、ああ、んんっ! 二人とも見事な腕前だ」

 そう言うと吉宗は座布団に座り直す。

「此度の御前試合の一番は庵と百合の二人とし褒美を遣わす。後ほど、それぞれ望むものを伝えよ」


 吉宗の言葉を聞いた庵と百合は開始位置に戻ると吉宗に向かって深く一礼する。


 すると、吉宗は座布団から立ち上がる。


「全員横に一列に並べ!」

 吉宗が立ち上がったのを確認した重役の掛け声で残っていた参加者が吉宗に向かって横一列に並びその場で膝を付く。

 全員が吉宗に向かって平伏したのを確認すると吉宗は足早にその場を後にした。


袈裟斬りの左右は斬られた者から見て左肩から斬られたら左袈裟、右から斬られたら右袈裟、斬る側から見て右上からでも斬られた者の左肩から斬ってるなら左袈裟。……ややこしい。

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