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神之児戯  作者: 田澤 邑


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一番試合

神之児戯ep70

 ふと、吉宗(よしむね)たちを見ると吉宗は満足そうな顔をしており、守岡(もりおか)(いおり)と目が合うと先程と同じ様に得意げな顔を向けてくる。


 そんな守岡の顔を見た庵は頭を抱え、庵のその様子を見た守岡は何かあったのかと狼狽える。


 ……お前が原因だよ。


「続いて第三試合勝者 佐々木重太郎(ささきじゅうたろう)殿対第四試合勝者 藤堂弥助(とうどうやすけ)……」


 重役の声が響く中、庵は呆然と試合を見つめながら考える。


 やはり、無理を言ってでも断るべきだったか。

 このまま勝ち抜いていっても、また余計な厄介事に発展しそうな気もする。

 それに既に吉宗の決定に不平不満を漏らしている不届き者を黙らせる事も、吉宗の目に狂いはなかったと証明する事もできたのではないだろうか?


 退屈な試合を見ながら呆然とそんな事を考えていると。


「それまでっ! 勝者佐々木殿!」

 

 いつの間にか決着がついて試合が終了する。


「続いて第五試合勝者 百合(ゆり)殿対第六試合勝者……」


 さて、百合の試合は……。


「始め!」

 重役の掛け声で試合が始まると同時に百合は相手との間合いを一気に詰める。

「なっ⁉」

 相手は百合の動きに対応できず慌てながら声を上げる。

 百合は相手の顔の間近まで顔を近づけると微笑み、相手の左側から素早く後ろに回り込み、そのまま相手の背中に横薙ぎを打ち込む。


「ぎゃっ……!」

 相手はそのまま前方に飛ばされ倒れた。

「……そっ、それまでっ! 勝者百合殿!」


 勝負が決まると百合は控え場所に戻りながら庵を見て微笑む。


 ……おいおい。

 最後の回り込んでからの横薙ぎは明らかに前の試合の俺の動きを真似している。


 完全に俺を挑発しているな。

 やはり、これ以上、厄介な事になる前に早々に負けるしかないな。


「続いて楠庵殿対佐々木重太郎殿! 前へ」


 さて、負けるとしてもどうやって負けるか。

 あまり惨めな負け方をしても吉宗の目はやはり狂っていたと言われかねない。


「始め!」


 ならば、いい勝負をしつつ良い所で負けなければ……。


「せあっ!」

 庵が負け方を考えていると佐々木が上段から打ち込んでくる。


 庵はそれを木刀を前に出し交差する様に防ぐ。


 ……なんと言うか、こいつは手応えがないな、動きも遅ければ打ち込みも軽い。

 試合というより自分の技術を披露しに来たって感じだ。

 藩の中ではそれなりの腕なのだろうが、実戦経験が少ないのか前の相手の隈川(くまかわ)よりもだいぶ劣る。

 たぶん、第三試合と第四試合の参加者たちは総じて技術を披露するのが目的で実戦経験が少ない者が多かったのだろう。


 これで隈川ほどではない、こいつに負けたら変な違和感を持たれるかもしれない。


 ……仕方ない。


 佐々木が下がり、今度は中段の横薙ぎを打ち込んでくると庵は佐々木の木刀を下から弾き上げ、そのまま佐々木の脇腹に横薙ぎを打ち込む。


「がっ!」


「それまでっ! 勝者楠殿!」


 負ける事が出来ないなら他の手段を探すしかないが……。


「続いて一番試合を行います! 楠庵殿対百合殿! 前へ」


 百合は前に出てくると庵を見て楽しそうに微笑む。


 ……うん、これは余計な事を考えてたら大怪我どころでは済まないな。


「始め!」

 重役の掛け声で試合が始まるとお互いゆっくりと木刀を構える。


 すると、百合は庵の顔の間近まで顔を近づけ微笑み、庵の左側から素早く後ろに回り込み、そのまま庵の背中に横薙ぎを打ち込む。


 が、庵は木刀を担ぐように背中に回しそれを防ぐ。


 こいつ、……また俺の真似を。


 庵はすぐに振り返りながら右から横薙ぎを打ち込む。

 百合はそれを体勢を保ったまま後ろに飛んで躱す。

江戸時代にはまだ決勝戦って言葉はなかったそうな

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