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神之児戯  作者: 田澤 邑


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69/97

見切り

神之児戯ep69

「……くっ!」

 境木(さかいぎ)は間髪入れずに突きや袈裟斬りなどで追撃するが百合(ゆり)は境木の打ち込みをまるで舞でも舞ってるかの様に躱していく。


「馬鹿にするなっ!」

 百合の動作を見て馬鹿にされていると思った境木は憤り、上段から力を込めて百合めがけ木刀を打ち下ろす。


 だが、百合はそれを既の所で躱すと間髪入れずに境木に胴を打ち込む。


 あの上段は一見危うく見えるかもしれないが、完全に見切っていたな。


 百合がそのまま境木から離れると境木はその場に倒れた。

「それまでっ! 勝者百合殿!」


 百合は境木の打ち下ろしを完全に見切っていた為、まるで百合がいない所に境木がわざと打ち込んでいる様な不思議な光景に見えた。


 気を失っている境木は駆けつけた者たちによって板に載せられ藩医の元へ運ばれていった。


「続いて第六試合……」


 百合は境木の身体の動きからどこに打ち込んでくるかを完全に見切っている様だった。


 俺に同じ事が出来るだろうか……。

 いや、あれをするにはもっと根本的な技能がないと無理だろう。

 それこそ身体の構造や相手の手足と持っている得物の長さまで、何にしても一朝一夕で身につけられる技術じゃない。


「それまでっ! 勝者……」

 (いおり)が考え事をしていると第六試合が終わっていた。


「続いて勝ち残り同士の試合を行います。第一試合勝者 楠庵(くすのきいおり)殿対第二試合勝者 隈川久兵衛(くまかわきゅうべい)殿! 前へ」


 隈川は体格もよく第二試合の始めに上村(うえむら)の木刀を押さえ込んだ様に己の力を活かした力業に持ち組む感がある。

  自分にも百合の見切りが出来るか試してみたいが、隈川は手数が多くない慎重派といった感じだ。


 ……さて、どうしたものか。


「始め!」

 重役の掛け声で試合が始まるが隈川はその場から動かずじっと庵を見据えている。


 やはり、動かないか、ならば……。


 庵は少しずつ隈川との間合いを詰めていく。


 後、半歩。

 後、半歩で隈川の間合いに入る。


 そう思った瞬間、隈川は木刀を上に振りかぶり前に踏み出して上段を打ち込んでくる。


 庵はそれを左に移動して躱す。


 違うな……、百合なら隈川が木刀を振り被る前に動いている。

 まるで、事前に打ち込んでくる場所がわかっているような。

 俺は隈川が木刀を振るってからじゃなければ反応できない。


「……ほう」

 百合は庵の動きを見て感心して声を上げる。


 それからも庵は隈川の間合いに入っては躱すを繰り返した。


 ……今の段階では俺に百合の真似はできなさそうだ。

 それに段々隈川の手数も少なくなってきている。


 ……潮時だな。

 庵は攻めに転じようと木刀を隈川に向け正眼の構えをとる。

 隈川も庵の雰囲気の変化に気づいたのかその場で動きを止める。


 庵は隈川との間合いを一気に詰め力を込めて上段を打ち込む。

「ぐっ……」

 隈川は木刀を眼前で横にし、それを防ぐが庵の力に押され右足を後方に下げて防いでいる木刀に力を込めて踏ん張る。

 すると、庵は隈川の左側から素早く後ろに回り込む。

「……なっ⁉」

 右足を下げていた隈川はすぐに左側に振り返る事が出来ず一瞬対応が遅れる。

 庵はそのまま隈川の背中に横薙ぎを打ち込む。


「がっ……!」

 隈川はそのまま前方に飛ばされ倒れた。

「……そっ、それまでっ! 勝者楠殿!」

「おおっ!」

「なんだ、あれは⁉」

 またもや他の参加者から一斉に歓声が上がる。


 ……なんと言うか、むず痒いな。

 吉宗(よしむね)守岡(もりおか)の手前、負ける訳にはいかないが、こうも毎回騒がれては戦い難い。

主人公は所謂チートなんだが雰囲気を壊さないためにもなるべくカタカナは使いたくないんだよな

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