鬼
異世界の管理者ep4
「ありがたい申し出ですが、あなたはまだお若い、それに鬼も馬鹿じゃありません。もし失敗すれば鬼の怒りを買いどんな報復があるか……」
村長は庵が若く未熟そうに見えるため後の事を心配する。
「……その子に囮になってもらって、俺は偶然通りかかった様に装ってはどうでしょう。鬼も村が雇った退治屋でなければ報復しようと考えないかもしれない」
確証などなければ完全に希望的観測だが、鬼退治を任せてくれるなら何でも構わない。
「……村長!」
話を聞いた娘の父親が庵に同調する。
「……骨は拾えませんぞ」
村長は俯いたまま申し訳なさそうに告げる。
話が終わり外に出ると日が落ちていたので、柊花と父親の好意で庵は数日後の生贄の儀式の日まで柊花の家で世話になる事になった 。
「俺に何かできる事はないか?」
夕食時、庵が柊花と柊花の父親と母親で食卓を囲むと庵の正面に座っていた柊花の父親が徐ろに言い放つ。
「……気持ちは理解できなくもないが、守る人数が多くなって状況が悪くなるだけだ」
実際、何の力も持たない素人がいても邪魔にしかならない。
「だっ、だが、囮くらいには……」
「お父さんっ!」
父親の発言に娘の柊花は膝で立つと両手の手の平で食卓を強く叩いて言った。
その様子を見ていた母親が父親の着物の肩の袖口を掴みながら泣き崩れる。
数日後。
生贄である柊花は手首を縄で縛られ、乗せられた神輿と繋がれたまま村人たちによって村近くの森の中まで運ばれてきていた。
庵はその近くの木陰に身を隠し鬼が現れるのを待ち構える。
どれくらい経っただろうか。
庵がもしかして鬼は現れないのではないかと緊張を解くと、突然、さっきまで静かだった森の中から物音が近づいてくる。
木陰から物音がする方の様子を窺っていると奥から小鬼が一匹現れる。
斥候というやつか。
鬼が危険がないか様子を窺わせる為に寄越したのだろう。
小鬼は柊花の乗せられた神輿を確認すると周囲を見渡した後、自分がやって来た方向に向かって叫び声を上げる。
すると、すぐに何匹かの小鬼を引き連れた鬼がやってくる。
庵はその鬼の姿を見て驚く。
設定よりだいぶ大きい。
俺が設定した鬼の身長は約二メートル。
個体によって誤差はあってもせいぜい十センチ程度だろう。
なぜこれほどの大きさに。
考えている間に鬼は柊花の乗せられた神輿に近づいていく。
「……ひっ」
今までずっと無口だった柊花が鬼の姿を見て悲鳴を上げる。
それまで無表情だった鬼はその悲鳴を聞くと嘲笑する。
庵はすぐに土の初級の異能である土壁を柊花の乗せられた神輿と鬼の間に出現させる。
突然の事に戸惑う鬼の四方を続けざまに新たな土壁を出現させ閉じ込めると刀を鞘から引き抜きながら走り出し周りの小鬼たちを斬り伏せていく。
今度は特に抵抗感はなく、柊花を守るためにも迷わずに目の前の小鬼たちを斬っていく。
全てで八匹の小鬼を切り終わると同時に土壁の中から鬼の雄叫びが響き渡り、鬼が神輿の反対側の庵がいる側の土壁を内側から殴り穴を開けると、そのままその穴を強引に破壊して外に出てくる。
鬼は倒れた小鬼たちの死体を見ると再び雄叫びを上げる。
庵は迷わず鬼に向かって右手を構え火球を放つ。
鬼は咄嗟に顔の前に両方の前腕を縦にそろえ顔を守ると両腕と飛び火した火が両肩を少し焦がし苦悶の表情を浮かべる。
さすがに倒れないか。
流石に小鬼と同じ様にはいかないと庵は横に移動し、再び鬼に向かって右手を構え今度は風の初級の異能である風刃を鬼に放つ。
構えた手の平から無数の風の刃が飛び出し鬼を切り刻む。
全身を切り刻まれた鬼は再び雄叫びを上げるとその場に膝から崩れ落ち痛みに耐えるようにうずくまる。
「終わりだ」
庵はうずくまった鬼の背中に飛び乗ると、そう言って鬼の首を刀で刎ねた。
日本の鬼の起源について個人的に思ってる事があるのだが
青鬼と赤鬼は古代に日本にやって来た白人と黒人ではないだろうか?
血の気の引いたような青白い肌と青い目で青鬼
赤黒い肌で赤鬼
実際、青鬼と赤鬼がいたという土地に残っていた古い文献には鬼は地元の人達にとても親切だったと記されているらしいし
たぶん、鬼がいる噂を聞いた近くの豪族とかが言葉が通じないのもあって勘違いして討伐に乗り出し
後に豪族の討伐が持て囃され鬼は悪いものと伝わったのではないかと
まあ、確証があるわけでもない、ただの憶測だが