中編2
「んん?」
目が覚めた。
私の部屋、4年前、15歳の時の部屋だわ。
「??王女殿下がお目覚めになりました!主治医様」
「・・・ナタリー、お前はクビ。お子様の相手なんてしてられないのでしょう?それに、ドレス返しなさい」
「へ、王女殿下・・バレたの??しまった・・」
こいつは、私の牢の前までワザワザ来て、
『ギャハハハハハ、お前みたいなお子様の相手、退屈だったわ。ドレス、持ちすぎ。だから、横流ししたわ。革命が起こってバレなくてよかったわ。お前、鈍すぎよ。だから革命が起きるのよ』
とのたまわった。
こいつの代りが必要。
私は新人のメイドの大部屋に行く。
「ヒィ、王女殿下、ここは使用人の部屋です。お間違い・・」
「アメリア、ナタリーをドレスの横流しでクビにしたわ。貴女、私付きになりなさい」
「え、え」
「お給金増えるわよ。弟さんの貴族学園の推薦書、書いてあげるわ」
「はい!」
この人は私よりも5歳年上、家計が苦しくなって、貴族学園師範科を中退して働いている。
メイドの傍ら、教師もしてもらおう。平民学校に行けない子のための学校建設を考えている。
前世の記憶では、王城前広場で晒し刑にあった私に水を渡して、処刑された人だ。
『王女殿下!お労しい。お水お持ちしました』
『おい、アメリア、悪女に慈悲を施したな!』
『だって、あんまりじゃないですか?孤児院に熱心に慰問に行かれた方ですよ。悪い人ではないですよ!』
☆近衛騎士団練兵所
「王女殿下・・・一体、何故ここに?」
「皆様の練習を拝見したいですわ。迷惑なら、下がりますけど」
「いいえ。おら、野郎ども、王女殿下の手前だ。気を抜くな!」
「「「はい!」」」
この騎士団は最後まで降伏をしなかった。
最後、私の命を質に取られてやむなく、非武装で投降。民衆になぶり殺しにされたわね。
私はこうして、敵味方になる。人物を分別して、体勢を調えた。
そして、来たる日に向け。聖女の暗殺を試みる。
☆王都内下町
私は魔族と取引のある魔道具店に行った。
文献によると、聖女は治癒能力が高く、心臓を一刺し、また、首を斬らなければ生き残る確率が高い。確実に殺せる方法が欲しい。
勇者職を殺せる毒が欲しい。
「この店が魔族と関係あるって、誰に聞いたんですか?」
「牢で聞こえて来ましたわ」
「は?意味分からねえ。聖女殺しの毒薬・・・誰をやるのですか?・・・聖王国の聖女様、帝国の聖女様ですかね。今は休戦中です。毒薬の出所が分かったら戦争再開ですから、無理ですな」
ここは死に戻りを含めて、正直に言う。
「とても、信じられねえ・・・あんた、死んでもらうぜ」
・・・ダメか。
しかし、
「待ちなさい」
店の奥から、私と変わらない年頃の女の声が聞こえてきた。
「四天王殿、こいつはこの店の秘密を知っていますよ。生かして帰してはなりません!」
「私は、待ちなさいと言いました」
「し、失礼しました」
「・・・・転生者!」
「ええ、ここでは、最弱の四天王・・と名乗っておきましょう」
明らかに肌が濃く、黒髪、黒目、転生者、転移者の特徴を持つ1人の女子が出てきた。
「その聖女・・・フランス革命みたいに王様を殺して・・と言ったのですね?」
「ええ、確かに」
「フランス革命は、その後、ナポレオンの帝政、王政復古・・・と混乱を極めましたね」
彼女は・・・
「毒は渡せません。今、魔族は、人族と協調路線を取っています。たとえ、人族の国、1つが滅んでも、関与するところではありません」
・・・他人事みたいに・・いや、他人事よね。
「しかし、聖女が騒ぎを起こしたら、聖女を引き取ることは約束できます。魔族領には、聖女が理想とする世界があります。そこまで行くプロセスは・・・まあ、今の貴女の政策を見れば大丈夫そうね」
「え、どうゆうことですか?」
「フフフ、では2年後に会いましょう。セバン、この方に本を渡して、私の国の昔の教育制度のことが大陸共通語で書かれているわ。江戸時代の寺子屋から肩の力を抜いて始めれば、いいかな」
「テラコヤ?」
・・・魔族の幹部とは、それっきりになった。
☆☆☆現在
☆王城
「エリザベスよ。聖女が転生されたぞ。辺境の女神教会で転生された。今日、王城に来る。晩餐会で歓迎だ」
「ええ、お父様、分かりましたわ」
・・・聖女の別名は、ピンクの悪魔、ピンクの服を好んできたことから、レジスタンスからはそう呼ばれた。
私は沢山シミュレーションをした。
父上を説得する。しかし、この時点では羊の皮を被り。難しいだろう。
馬脚を現し始めるまで待つ。
扇動された民衆を殺さなければならない。
しかし、民衆派の王家が民衆を殺せば、統治に難が出始める。
お父様、お兄様の統治に禍根を残す。
結果、私が聖女に近づき。暗殺をすれば犠牲者は私1人で済むと判断した。
私は、破門の後、聖女殺しの大罪で処刑よね。
いくら、聖女とは言え。心臓を突き刺せば絶命すると文献で確認したわ。
私は王女、御守刀を持つことは許されている。
さあ、来なさい。ピンクの悪魔よ。私がこの国を守るわ!
・・・しかし、時間になっても来ない。
「事故か?」
「いえ。何かトラブルが起きたようです。今、確認中です」
☆4時間後
「・・・王族を待たせるとは、いくら、聖女様でも失礼すぎる・・」
「ああ、全く」
そんな声が、反王家派の貴族からもチラホラ聞こえてくる。
貴族は待たされるのが嫌いよ。王家をダシにして文句を言っているだけでしょうが、良い傾向ね。
あ、王国教会所属の聖騎士、聖女の護衛がやって来たわ。
「陛下・・大変でございます。聖女様を拘束しました」
「・・・理由を述べよ」
「それが・・・ワケが分からないです」
「女神教会と争いになるかもしれない。見たままを説明せよ」
「御意」
「聖女タナカ様が、突然、貧民街に行きたいと申しまして、時間があるので、許可しました」
・・・ああ、前世では、ここで怪我人を無料で治して騒ぎになりましたわね。
お父様が各界に取りなししましたわ。
それが、王家の失態になりましたわね。貧民街に病人が多すぎるから、聖女様がいたたまれなくなったという理由でね。
この世界では、聖女とは言え。むやみに治療してはならない。
何故なら、民間の回復術士や医者の仕事を奪って、結果として、医療従事者が減る。
法律で、無償で治して良い場合と場所が決められている。
「貧民街で・・・その言いにくいのですが、エリザベス王女殿下がお作りになられた。救貧院がお気に障ったようで、貧民に治療を施していた回復術士に・・・難癖としかいいようのない文句を言っておりました」
『ちょっと、私が治すのよ。治療を止めなさい!スチール絵では、病人と怪我人が道端にあふれていたわ。私の活躍の場を潰すハラスメント!』
『こっちは、許可を受けてやっているよ!お給金ももらっている。こっちは仕事だ』
『まあ、貧民を治して、お金をもらうなんて、悪魔ね!』
「そして、恐れ多くも聖女様でしたので、シスターたちを女神教会から呼びお体を拘束して救貧院から、退去させました」
「確かにワケが分からない。しかし・・それで、拘束までされる理由にはならないな。他にもあるだろう。続けよ」
「御意!」
「次に、向かったのは、王女殿下がお作りになられたテラコヤベースです。
授業に乱入し」
『あなたたちはまるでロボットよ。折角の異世界なのだから学校に行かずにノビノビと過ごしなさい!』
『ウワ~~~~ン』
『聖女様、私たちはエリザベス様が大好きです!テラコヤの悪口やめて!』
『可哀想に・・・洗脳されているのね。私が、教えてあげるわ【聖女の魅惑!】』
聖女が手を広げると、ピーンと振動が教室を襲う。
子供達は、ボーとした表情になる。
「あれ、僕は・・・ゴーレム・・」
「子供はノビノビと・・・」
『聖女様、それは魅了魔法だ!ええい。聖魔法【聖者の結界!】』
「はい、その時に、ボランティアで授業に来られていたダン神父が、とっさの判断で、結界をはり子供達を助け。
聖女様を拘束しました」
「うむ・・・今日の晩餐会は中止だ。折角の料理だが、冷めてしまったな。後日、聖女の取り扱いについて、協議しよう。皆の者、帰って良いぞ」
「「「御意!」」」
・・・
「お父様、お料理がもったいないわ。悪くならないうちに、テラコヤベースに運んで、慰め会をしたいわ」
「ほお、エリザベスよ。許可するぞ」
料理人たちは喜ぶ。
「俺たちの料理が無駄にならないぜ」
「ああ、貧民のガキでも食べてもらいたいぜ」
ゆっくりと時間は掛かるが、エリザベスの施策は支持されるようになる。