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終戦 男らしさっていうのは(8)

「おかしくないだろう。何らかの仲のいい男女が時々一緒に遊んだのを見たことがある。兄弟分みたいな感じだったよ」

「そっ、そう?よかった……」


あれはきっと蒸気だ!蒸気が柳下の口からもくもくと出てくるのを見た。その体にボイラーなど取り付けられてるとか。幸い圧力放出してから相手の調子がだんだん正常に戻った。それにほっとさせられたんだな。


「安心しな、女が直接男の名前を呼ぶなんて何も意味がないよ。でないともう一度自分を男に想像し直してもいいんじゃない」

「いや、もう自分を男にするつもりなんてないぞ」

「えっ?」

「おまえはすでに俺にたとえ喧嘩が上手じゃなくても人を守ることができるし、一人前にもなれるということを証明してくれた。その証明してくれたものを永遠に心にとめて、改めて女として生活しようと思う。そして──」


発車ベルが耳元に響き、ホームにある電車は間もなく出発する。


「おまえは責任を担うことができる男になれると信じてる。俺から男らしさなんてもう学ぶ必要ねえんだよ」


まるであらゆる悩みが同時に解けたように、柳下がその言葉を言う時にっこりと自然な微笑みを浮かべた。


初めて彼女が男性意志の束縛を捨て去り、真の感情をもらしたのを見たかもしれない。あれは少女だけに属する完全無欠な笑顔で、清らかな心と優しい天性を示す、しかも柳下の顔に現れても少しも違和感を感じないし、却って珍しいと思わせるものだ。


やっと、元の性別を受け入れたんだな。


そしたら次世代人間って生来のマークから脱することもできるのか。柳下なら、必ずできると信じてる。


「マイスターの祝福のおかげで、おまえのような俺と似てる境遇のクラスメートに会えた。俺も家がヘプタ・エックスに燃やされて、車に爆弾を取り付けられるなど危ないことを経験した。両親とは何度も災難を避けてきたが、結局やはり彼らを失ったんだ。おまえが妹を失ったのと同じく」

「あれは、実は──」

「幸い、おまえは芸音が俺に示したいものをはっきりさせてくれた。まだ芸音のような親族みたいな友人がいるのを気づかせてくれた。宮部の襲撃から助けてくれた恩も忘れない。ありがとう」


柳下が目を閉じ微笑んでくれた際、そのシーンに暫く呼吸を忘れるほどインパクトを受けた。


まったく絵にしか見えない完璧な表情で、ほんの少しの欠陥もない。自分の周りにこんな宝石の如くまばゆく美しい顔立ちがあるって今に至って気づいたわけじゃないが、たださっきそんな顔立ちを柳下が持ってるって意識したんだ。


……僕は柳下を女性に扱うべきかな。


「じゃ」


まだ心のショックから本心に返ってない間に、柳下は隣のトランクケースを引いて向きを変え、改札へ移動していく。


やばい、たった今ある事を言い忘れたのを思い出した。あれは砲撃を受ける時に言うべきだったことだけど。


それに柳下は恐らく僕の過去を色々誤解してるし、このまま離れれば、一生気にかかる。


「柳下!まだ言ってないことが──」

「いやだ!言うな!言わないでくれよ!」


ぐっと両手で耳を覆い、首を縮めてゲートの前で止まった柳下。改札口の駅員のおじさんはその叫びに驚いたらしい。


何の反応だよそれは。まさか何か恐ろしい情報を聞かされると思ったわけ?今学期の数学テストはまだ一度も行ってないのよ。


「かなり普通の事だけど、どうしてそんなにビビるの」

「……かなり普通の事?」

「そうだよ、おまえにかかわ──」

「やめろ!言ったら俺どこも行けねえよ!」


確かに相手が僕に背を向けてたけど、その体が何かを恐れるように微々とぶるぶるしてるのに気づいた。


どこも行けないって?柳下が罪も犯してないし、監獄の籠も多分彼女を閉じ込めることができないし、どこも行けないなんてわけがないだろう。


言わなければ柳下は電車に間に合わない。一気に言おう!


「おまえに言いたいのは──」


相手は腰を一層下に曲げながら、首を横を振ってる。


「──もうそんなにたくさん食べないでね、おまえを引いて逃げるのが難しいから。以前のおまえはもっと軽かったのに」


…………


本来電車が発車する音はかなりうるさいと思うが、なんかあたりが突然墓地のように静まり返ったようだった。


元々震えてた柳下が凍るように硬直した。きっと周りの旅客たちが冷たい視線を彼女に投げているわけだ。

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