終戦 男らしさっていうのは(6)
ボー──
重く沈んでる汽笛音がレールの震動する騒音に伴って、遠くから徐々に近づいてきた。
電車が駅に入って来た。柳下らが乗る予定の車両かもしれない。
「もういい?じゃ俺はホームへ行くぜ。芸音を見かけたら俺もう行ったと伝えてくれ、もっと早くしろって」
顔を俯けて、トランクケースを引く柳下が前に移動し、僕は反射的に道を譲った。
相手と擦れ違う際にも、僕を見ようとしなかった。
……
あの前方のホームへのゲートを通る後ろ姿に向き、僕の口元は微々に上がったものの、投げていくのは仕方ない視線だった。
彼女は、何かを避けてるんだ。
以前の経験から、擦れ違う際に柳下は必ず上目線という饗宴を送る。僕が食べられるかどうかにもかかわらず。
が、今度は何かから逃げ出すように、相手が自分の歩調を速めて僕と触れる時間を縮めようとした。
その回避しようとするものは、彼女が黙って立ち去るのを選ぶ理由だ。ただ僕が明らかにできるかどうかによるんだ。
もう、あのコトをはっきりするタイミングだと思う。
「──あの時おまえ、橋で何かをくれるんじゃなかったの」
宛も一本の無形な手につかまれるように、ぎこちなくその場で足が止まった柳下。
向き直る方が相手になり、ただ今その向き合う表情はすでに違っていた。
平静に不満げを帯びるものの、釈然とする喜びを浮かべてる。色々な感情で混合した容貌が柳下の顔に現れ、まだその中に一時的に見分けがつかないものが入り混じってる。
どのぐらい似てる?こんなのもちろん説明しなくてもいいだろう。
かつて宮部があの娘のことを連想させたけど、結局ただのデジャビュにすぎなかった。柳下の性別の秘密を知った時、すでに橋の上の娘がずっと近くにいるのに気づいてた。
これもどうして最初柳下に蹴られて気絶させられた時に、あの夢を見たかの原因である。いつも体が主より一足早く真実を意識するんだ。
巨大なブレーキ音が瞬く間に過ぎ去り、金髪少女がしっかり立ったとたん電車も向こうに止まった。
「……いつから気づいてたの」
「始めてオフィスで横になった時かな」
「そう?けっこう早かったな。でも俺はおまえがこの学校に入る一日目から気づいてたよ」
やはり柳下もとうに知ってたよな、でないとさっきあんな唐突に止まる動作するわけが……
……あれ?それなら僕がまだ相手からの辱めを受ける間に、彼女はすでに僕のことを知ってたっていうこと?
「なら、最初からおまえどうして僕をヘプタ・エックスのアサシンだと誤解したんだ」
「誤解なんかじゃねえ、ただ色んな可能性を考えておかなければいけなかっただけだ。何せ当時おまえがあの時の小僧かどうかもまだ断定できねぇから、ずっとおまえとコミュニケーションをとってチェックしようと思ったけど、おまえの返事はいつもマイナスのほうだから、俺にこの事を忘れようとさせたんだ」
「まさか僕が学校に入ったばかりの時に、おまえがやったことを『コミュニケーション』と言うつもりか」
「そうだったよ。睨んだのはその顔をはっきり見るため、叱ったのはもっと話を出させておまえの口調をチェックするため、最後に気絶させた足蹴りは確かにちょっとやりすぎたけど、それもおまえに橋の上での出来事を思い出させるためだった」
時代の変化を経てコミュニケーションという名詞はたくさん新たな意味が増えてきたって信じるけど、明らかに柳下版のは規格外だった。
「まあいい、勝手にしろ……というか何をくれるのか」
「色んな男らしさを増す方法を教えてやる」
確かめる為、ハァって音を出たが、柳下が依然として微かにあごを上げる格好で「色んな男らしさを増す方法を教えてやる」と繰り返し言いながら、少しも躊躇しない。
「どっ、どうしてそんなことなの?どこから僕男らしさがないってことを知ったの?」
「学校だよ。以前小学生の頃に俺たちは同じ学校だったんだよ。全校一年生の皆も知ってるぞ。ある小僧が一日目に学校に行ってトイレの場所も知らねぇし、手をあげて先生に聞く勇気もねぇ、結局彼が女の子の後をついて行って一緒に──」
「ストップ!もう言うなよ!それは極秘だ!」




