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第五戦 戦略芸術(8)

「もうこんな危ないことなんてするなよ、困るから」


おい!おまえが戦う気がなかったからじゃないか!なんでそんな──


「──すまねぇ、さっきの失態はおまえに心配させたな」


相手の眼差しが話してる間に柔らかくなってた、ただ一瞬だったけど。


……あれ?あんな目を見たことがないらしい。珍しいな、僕の表現は悪くないからかな。


とりあえず、気持ちを奮い起こさせたならいいことだ。僕も主な狙いを達成した。


「プロトタイプでさえも反撃しようとしたのか。いいわ、どうせ遊びもここまで。ただ時間を引き延ばすだけよ」


ドーンードーンー


大地を揺り動かす震えに伴い、いきなりはっきりしない重い音が彼方から絶えず伝わって来る。

あの音はまるで──


──マジかよ、砲撃?


「言ったでしょ、あたしいつも万全に用意してるわ」


両腕を左右に広げて、宮部の格好は何かドグマを宣言する宣教師のようだ。


「きっとこの音は聞いたことあるでしょ。そう、移動式基地の155mm火砲、Rの会社の最新製品なの。元来この度のテストで無人の空き地に試射する予定だったけど、もう火砲を操作する部員たちにターゲットをこの分かれ道に変更してもらっておいたし、ついでに予定の時間も繰り上げたわ」

「彼らが君の指図を聞くわけない!」

「理事会のIDカードを取り出してから『これは理事会の要求』って言ったらいいわ、でも理由をでっち上げるのにたくさん時間がかかったけどね。特に彼らに時間通りにこっちに試射を行うと言いつけたし、我が部員たちはよく責任を取ってくれるわね」


後退し続ける宮部、もうすぐ下山道を繋ぐ大型つり橋に近寄り、僕たちから益々遠ざかっていく。


敵はいつでもつり橋を渡って逃げられるようにしてるんだ。


「最初発射するのは空包で、次のが本番なの。この手で君たちを仕留めることができなければ、砲弾に撃たれた時どんなふうになるか見物させて。抽象絵画にそっくりかもしれないわね」


しまった。僕も柳下も身動きがとれないし、砲撃の範囲から脱出することすらできない。


為す術もなく両手を口の側に当ててメガホンにする宮部を見ても、僕は全然手の施しようがなかった。


「……戦嵐、まだ歩ける?」

「うっ!……小股でしか……」

「今回試射用の砲弾の威力は実弾の二十分の一だけ、もしまだ歩けるなら歩け、難を逃れるかも……」

「じゃおまえは?」

「俺……俺は多分もう──」


相手がまだ言い終わらないうちに、手をその前にさし伸べた僕。


「この前に助けを受けなかったのは僕が悪いんだ、すまない。まだもう一つおまえが承諾してくれたのを覚えてる?一緒に行ってくれ!」


下に向けた両目がびくっと震え、相手はぼんやりとした。


が、ただ一瞬だけだった。


即座にその怪我してる手が僕の手をつかんだ。


「じゃ頼む!」


その場で向きを変え、柳下は胴体を地面に当てて匍匐前進の姿で動かせる腕で自分の体を動かしてる。一方、僕はその力が入れられない手を引き、できるだけ最も速いスピードで後ずさった。


ただ何歩だけ歩くと、体躯の痛みで僕は不甲斐なく涙を流すところだった。


だが手を放してはいけない。


ここで柳下を見捨てれば、自分に申し訳が立たないだけではなく、お袋の名誉に合わせる顔もないんだ。


僕はすでに柳下に自らの理念を証明した上、彼女の評価は何だって聞かなければいけないんだ。

だからこそ、僕たちは二人とも必ず生き抜くんだ。


「柳下……無事に逃れたら、おまえに話したいことが──」

「黙れ!今そんなこと考えてたらすぐ死ぬぞ!口閉じろ!」

「ど、どうして?」

「問答無用!早く歩け!」


と、再び火砲が射撃する音が響いて、僕と柳下は十メートルに至らない距離しか動けない。


こんなスピードだと、やっぱり──


ヒューー


口笛を吹くが如く音が遠くから近くなってきて、まもなく砲弾は襲って来るんだ。


だが、前方にある理解できない状況が……


元々もうすぐつり橋の中央に逃げていく宮部が何故か歩みを止めつつ、首を上げて空を見回してる。


次のコマは、彼女がすごい勢いで元の方向へ駆け戻ってくる。


ドカン!


大きな弾丸が落ち、巨大な震動は空高い土煙やほこりを揚げた。


砲弾は何発も降り注ぎ、強い音波で耳鳴りがし、一部の街灯が震動で砕けた。


しかし砲弾は分かれ道にではなく、遠くのつり橋の向こうにある下山道に落ちた。


そう、砲撃された所は逆に宮部に近い、しかも砲弾が落ちる位置が益々つり橋の橋台に迫ってきた。

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