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第五戦 戦略芸術(6)

地面から小石を踏む音が聞こえてきた。宮部の靴がこちらの目の前を通る時、一度相手が僕を蹴るかと思った。


「さあ、遺言があったら言いなさい。伝えてあげるかもしれませんよ」

「……さっき言ってた芸音にかかわることは全部本当なのか」

「ええ、そうですよ。元々ついでにあの子を逮捕する予定なので怯者に彼女を監視してもらって時間を引き延ばすつもりだったけど、あの人はまったく使えないから黒羽さんをこんなに早くいかせてしまいましたわ。他に何か」

「……もうねえ」


右腕に鮮血が滴る柳下、囁きのような声で最後の返事を出した。


完全な絶望。それは今僕がただ一つ思いつく言葉だった。


すでに宮部が柳下の面前に歩いてきて、二人の距離は二メートルもないかも。


「君はまだもっと話すと思ってたのに、本当にあたしの善意を無駄にしたわ。それなら、早めに始末した方がいい」


ゆっくり腕を上げ、宮部が銃口を相手の頭に指す。


「命令に従うだけ……恨むならあの君を開発した企業にしなさい」


カッ!


猛然と宮部の首を絞め付けた、僕のこの腕。


相手が銃を持つ手を引っ張り、本来柳下の頭を狙う弾丸はそのままそれた。


四発目。


狂った宮部が僕と掴み合い、彼女が全力で体を捻ってこちらからの束縛を脱却しようとする。


背負い投げをされないよう、自分の体を敵のそばへ動かしていく。それに乗じて宮部が銃口をこちらに向けようとするが、僕は片方の手の指をリボルバーの用心金の中にさし込んで引く。


五発目。


突然相手の力が強くなり、銃を持つ手が回りによって僕は痛くて指を用心金から抜き出さざるをえない。あっという間に、すでに宮部がすっかり真っ正面に僕に向き合うと同時、僕の腕を振り解いてしまった。


その顔がこちらを向いたとたん、自分は人違いをしたのかと思った。

恐ろしい。

凶悪で恐ろしい。


あの人はまったく宮部じゃなく、発狂する病人のようだ。


だが恐怖心を支配する神経を目覚めさせる暇がない。


両手で相手の銃身をぎゅっとつかんですぐ、力を入れて銃口を自分の肩に当てた。まだ宮部の指が用心金の中に、そしていつでもシュートすることができる。


しかし敵はそうなかった上に、却って口が半開きになっている。


相手が迷ってるうちに、この親指がその人差し指を押し最後の一発を引くと、こもる銃声が響いた。


今度は多分銃弾が僕の肩を貫通した、でも──


──六発目。


終わった。


「どうして……どうして君まだ動けるの!」

「コルトM1892リボルバー、かつてアメリカ軍に採用されてたが、結局は淘汰された……」


激痛で伏せた顔を上げて宮部と目を合わせた。一方血が肩から流れてきて上着にしみこんだ。


「……ストッピングパワーが低すぎたから。よく痛みに耐えられる人、また意志が強い人に対してはあまり抑圧することができないんだ」


これはどうやって僕が宮部が柳下を殺そうとするところが見えたのか、その原因だ──宮部が通り過ぎてから僕はとうに立ち上がった。


敵との距離が遠すぎたら、敵に自ら近寄って来させるしかない。


そのために、愚かな挙動で人をペテンにかけることが要るんだ。


「まさかさっきダッシュしてきたのは──」

「そう、君の気を緩めさせるためだ」


やっと、この怯者という名と日ごろ失敗してきた行いが活躍してたな──敵を欺く面で。


「君はかなり慎重な人……多分僕が君に向かってダッシュできるのは、この変装の中に防弾チョッキなどを着てると思ってたからだろう、だから僕の上半身にシュートしなかったよな。余計な配慮だ」


どんな時でも石橋を叩いて渡る人は、時々冒険をしたくても最初の計画通りに行うものだ。予想外のことに遭う時、形勢は有利じゃなければ、しばしばわりと保守的な策略をとって安定な状況を求める。


だがこんな思いは時に敵に尻尾をつかまれるんだ。


フィクションの空城計を引用してこんな言い方を論証したくないけど、以上はお袋が言ってくれたものだ。


「まず二発を僕に、一発を柳下に、一発がそれた、一発を無駄にした、最後の一発がこの肩に。もう君は銃弾がないぞ」


急に瞳が縮み、宮部の歪んだ冷笑はすでに人間では真似することができないほど不気味だ。


「ホントウ?まだポケットにたくさんあるわよ」

「それはありえない……」


相手の顔に浮かべる筋肉のラインが一瞬硬直した。

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