第五戦 戦略芸術(5)
「とりあえず、危ないプロトタイプは処理しなければいけないわ、でないと世間に危害を加えるもの。どいててよ」
「世間に危害を?何の根拠でそんなのを言えるんだ」
「それはあたしが言ったんじゃないわ、聞きたいならあたしの上司に……でも君多分もうチャンスがないわ!」
声が止まる、街灯の明かりが反射するものがその袖から飛び出す。
鉄鉤、鋼線を持ちこちらへ飛んできた。
僕は避けた?
なかった。
宮部が悪意に満ちるものの、直感は発動しなかった。僕もとうに知ってる。
だから本能的に自分の腕でどうにか鉄鉤を阻んだ。
激痛が腕にバウンドしてくる──鉄鉤に切られた皮膚から血が流れ始める。
「うん?避けられなかったって」
びっくりして僕を見て、鉄鉤を袖の裏にしまう宮部。
すぐさま、不安を感じさせる冷笑が再びその顔に浮かび上がった。
「どうやら、君の直感は連続発動ができないらしいわね」
やっぱり、最後の弱点も見抜かれたな。
悪意が要るという条件以外、僕の直感は発動した後しばらく再び使うことができない。
クールダウン──こんな言葉はちょっとふざけるみたいだが、とても相応しい言い方だ。再度発動までどのくらい必要かは、僕さえも知らない。
「これなら心配要らないわ。そんなに長い時間を無駄にして君たちにお喋りさせるなんて」
と、もう一つの袖を下にぐっと振る宮部、ある黒いものがその中から彼女の手に滑ってきた。
リボルバー。銃身がかなり短い。わりと広い袖なら確かに隠すことができる。
予想通り宮部は非常用の武器を持ってる、さもなければさっきの銃を失った時とうに逃げていただろう。
「一部の人が二丁拳銃を使うやつはだた格好つけたいだけって主張するけど、あたしの場合は念のためよ」
「やっ、やるならまず僕からだ!」
バンっ!
宛も爆竹を鳴らすような音が木霊し、目の前が一瞬真っ黒になった。
硬いものに刺される激痛が僕につい目を閉じさせた。
痺れる感じが脛から蔓延し、ズボンの筒が益々じっとりと濡れてきた。
敵は僕の脛にシュートし、弾が筋肉を削った。
「君からなんて簡単すぎるわ。何が必ず責任を取るって……可笑しいわ。やはりちゃんと怯者をしなさい」
身体から力が失ってゆく、僕は跪いた格好になり、まったく相手が何か言ってるのか聞こえなかった。
死ぬだろう。さっき宮部が僕の頭に撃ったなら、すぐに実の両親に会いに行くかも。
これは弾に当たる時に瀕死で徘徊する恐怖なのか。やはり映画などで描写しないことだ。
だがここで倒れてはいけないんだ。
僕の理念を柳下に証明できるまで、絶対倒れてはいけないんだ。
このまま諦めたら、僕はただの怯者だけじゃなく、まだ叛徒だ──自分が護衛の責任を裏切る叛徒というものだ。
「……貴様!」
どうにか体躯を伸ばし、僕は痛みを堪えて宮部の方向へ突進して──
「っ!」
再度響く銃声、矛に貫かれる感じが下半身に現れた。
今回は太もも。弾丸が体を貫き抜けたかもしれない。
強い痛みがこの肉体を引き裂いて、ばたっと地面に倒れた僕。
「こんなに遠い距離なのにダッシュして銃を奪う気。本当にバカね」
「宮部!あいつを傷つけるな!」
「ふふ、すべては君のせいで、怯者にブレットに当てさせるのよ。自分の存在はとても危ういってのを知ったはずね」
「……手を下したかったら、俺一人にしろ。無実の人を巻き添えにしないで……」
高ぶりから落ち込むまで、地面に倒れてる僕はただ口振りからしか柳下の気持ちを判断できない。
やっぱり使えないんだ、僕は。
こんなまったく実力もない、打撃にも耐えられない僕は、やっぱり少しも使い道がないんだ。
きっと、柳下はさっきのあんな愚かな挙動にかなり驚いてて、そして失望しただろう。
「もちろんいいよ、勝手に人を殺したりしたくないし。協力してくれたらあの人の命は見逃してもかまわないわ、ただし──」
銃声に柳下の悲鳴が混ざり込んで隣から届いてきた。
「念のため、反撃の力を失わせなければね。君の体は普通の人より強すぎるから、直接頭部を攻撃しなければ仕留められないわ」
ちくしょう。
恐らく柳下の手や体のどこかだろう。宮部は相手に反撃されないようにまたトリガーを引きやがった。
宮部のやつ残酷すぎだ──だがそれを止めることができない。
今は。




