第五戦 戦略芸術(3)
床に横座りするあのゆっくり喘いでる少女を向き、頭の中が真っ白になった。
柳下は……次世代人間?
彼女は開発されたものってわけ?移動式基地と同じ?
いけない。それは宮部が気を散らさせるためのウソに違いない。だまされるものか!
「そういえば、図書館の爆発事件、実はあたしの仕業なのよ」
「誰でも君の悪巧みだとわかるだろ」
「ふふ、まだ話しは終わってないよ。あたし、陰でリモコンを押してくれる助っ人がいるのよ」
助っ人?他の共犯者がいるっていうことか。
「その呆然とした顔がかわいいね、ちゃんと説明してやるわ。実はあたし元々単独行動をとるつもりだったけど、『あの人』が自らプロトタイプを仕留めてくれるって言って、条件は協力して隙間を作ることなの」
「隙間?」
「そう、でないとどうしてRが急に母国へ帰ったの?もちろんあたしがその会社の書類を偽造してRをどかせたの。今回の試運転の期日もあたしが理事会の名義で決めたのよ、それであの人はベストタイミングを手に取れたわ」
Rが離れることさえも宮部の仕業なのか。
ちくしょう、Rが装置を試運転する期日に休みを取るなんておかしいと思った。自分の製品をテストする間に欠席する代表者がいるわけあるか。
「まあ、いいわ。もっと洩らしたら最初の提携協議に違反してしまうの。とにかくあたしの真の目的はプロトタイプを抹殺すること」
「プロトタイプだろうか何だろうがうるさい!柳下は人だぞ!」
「そう?でもあんな人を驚かせるストレングスにスタミナにスピードなんてどう見ても人間らしくないわ」
と、宮部が口を開けてにやっとし、一対の意地悪い犬歯が見えた。
「却って化け物らしいわね」
遠く天の果てにある夜景に、稲妻一筋が前触れもなく光って、分かれ道を明るく照らし出した。柳下の曲げる姿は、閃光の照りでまるであらゆる苦しみをなめた動物みたい。
宮部からの謗りに対し、彼女は返事が全然なく、まるで黙認したようだ。
どうして?どうして柳下が声を出さず、宮部に言い返さないの?僕ならとうに罵倒語など吐き出してるだろう。
「泥棒がたぶんもう回路を持って高飛びしたから、元々ついでに犯人を捕まえようと思ったけど、やめるしかないわ。まあそれでもいい、専念してあの危険物を処理することができるから」
「またこれ以上言ったら許さないぞ!それと柳下、どうして黙ってるの、まさか宮部に言い放題させ──」
「もういい……もういいのよ」
最もオリジナルの声を使い、小声に短い言葉で僕を止める柳下。
宮部と僕は怪訝そうな顔を浮かべたが、その驚いた理由はそれぞれ違う。
「あれれ、あたしの耳大丈夫なの?君は女の子?」
眉にしわを寄せ、宮部が目の前の事実に一時馴染めなかったらしいけど、すぐに冷静さを取り戻した。
相手は柳下の真の性別に、僕は柳下の反応に驚いた。
「うーん、情報によるとプロトタイプの性別は男だったのよ。こうなったらちょっとやりづらいわね。あたしは女の子には一貫として友好的なのよ。でも確かに名前は柳下誠なら、予定通りに執行しても大丈夫よね」
広々とした分かれ道に声が格別に大きく響く。宮部が僕らと一段の距離をおいたものの、一つ一つの言葉は明確に伝わってきた。
とはいえ、こんなに極めて脅迫する意味を含む言葉なのに、柳下の反撃意志を掻き立たせないし、依然として目線は地面に向いてる。
まな板の上の鯉。
今の彼女は、まるで猟人に袋小路に追い込まれた獲物のようだ。
猟人がたった一発のシュートだけで、獲物は自ら絶望という名のわなに入って、もがいて生きるチャンスもあきらめるなんて。
彼女らしくない。
僕が知ってる彼女らしくない。
宮部が少しの悪どい冗談だけで柳下をこんなに落ち込ませるなんて。
「……あいつが言ったのは事実だ」
……
やっ、柳下、どうしておまえまでも宮部の真似をし始めたの。こんな冗談なんて言ってはいけ……
……
思いかけずはっと息を呑んで、全身の神経が一気に冷たい水に浸かったような感じた。
柳下が、自分は次世代人間っていうことを認めてしまった。
つまり、彼女は製造されてきたもので、自然に生まれた人間とは違うってこと。
最初に相手の本当の性別を気づいた時言った冗談は、なんと今事実になってしまった。
「……どんな方法で知ったんだ」
「ふーん、聞きたいの?悲しませるかもしれないよ。でもいいの、どうせ君はプロトタイプだからね」
真ん丸い両瞳がたちまち縮み、宮部が冷たく笑う。
「黒羽芸音からよ、あたしの『助っ人』ってこと」




