第四戦 プランB(14)
「そんな主張をする前に、何か証拠を提示するべきだろう。おまえの証拠は何なんだ」
「黒羽さんは自分が何かしたとしても、僕は彼女のことを信じ続けるかと聞いたから、僕は承諾した」
「それだけ?」
「それから、もしおまえさえも彼女を信じない時、僕は彼女のことが信じられるかと聞いたけど、それも僕は承諾した」
「……口先で承諾したものなんて何の証明もできねえよ。それがおまえの証拠ってわけ?」
「いや、その上、自分を変えようとしていることも言及した。おまえがきっかけでね」
柳下が何を考えてるかにもかかわらず、僕はその見開いた真ん丸い目を見ても、説明を止めなかった。
「そのきっかけというのはお宅がヘプタ・エックスに奇襲をかけられたことだと思う。黒羽さんは後見人を失った苦痛に堪られなかったせいで、ツインテールにするって演技性パーソナリティ障害が現れたと言ってたよね。僕はそうではないと思う」
「……あれは病気じゃねえのか」
「そう。彼女はただ真の自分を見せたいだけ、だがおまえは受け入れられないらしいから、あの娘がおまえに説明してなかったわけだ」
元々相手がこれではっと悟ると思ったが、間違えたようだ。
もう一度自分の世界に戻った柳下、さらに少し緊張するようにぶつぶつ言ってる。「まさかあの時ハダカで寝るのを断ったことか?」とか「それとも以前あの子がブラを盗んだ時俺が蹴ったせいか?」など怪しい言葉が聞こえてきた時、なんとか冷静さを保った。
芸音は女の方が好きらしい!この前図書館で言い及んだことは本当だったとは!
「とっ、とにかく、その性格の変化は病気と関係なく、自分の意識から作り出したわけだ。しかしその変わりがうまくできなかったせいで、他のイメージを作らなければ集中することができない。それは黒羽さんがツインテールにする本当の原因だ。真の自分を演じるために新しいイメージが要るんだ」
「だから……俺が本当の芸音を受け入れてなかったせいで、あの子をあんな風にさせたわけか」
「そうかもしれないけど……でも黒羽さんはおまえをせめる気がないと思う。ただ少し誤解を解いてなかっただけ」
「ならば一体なぜ芸音は回路を盗んだんだ」
「そ、それは……」
今ただひとつ解いてない部分は、柳下が聞いたこの問題である。
正直、芸音の動機は今すべてを握るカギだ。
この最後のパズルのピースをはめ込んだら、すべてがすっかり明らかになるんだ。
けど、言うのは簡単だが、まったく見当がつかないのもわかる。
「……わからねえか。なら無意味と同じだ。おまえはやっぱり芸音がストーカーじゃねえってのを説明できねえじゃねえか」
と、目を地面に落とした柳下、縮こまる体躯が闇により一層小さくなった。
雰囲気が一瞬氷点に落ち、さっきの努力は全部水の泡のようだ。
「いいから先に戻ろう。部員たちはおまえを待ってるよ」
「いやだ」
意地を張る子供のように、柳下はこちらの提案を却下したのに、また拗ねて……
断る原因はわかりやすいんだ──もしベースに戻っても芸音の姿がなければ、あの娘は本当に柳下から去ったのを示す。
そんなの我が部長は受け止められない。
その心のもやを取り除くことしか柳下が歩を移す可能性がないんだ。
奥の手を出すタイミングだ。この技だけは使うまいと思ってたが──こんなセリフはやっぱりかっこいいけど、今はそんな場合じゃない。
「他人の誘いを断る前にこれを見ろよ」
ずっと袋にしまってたものを、ようやく相手に見せる時だ。
それを柳下の面前に出したら、予想通りその眼差しがそれに伴って変化してきた。
「……さっき下山する時足をちょっと怪我したが、支えてくれるのか」
「もちろん、お安いご用だ」
僕の手にしたものに目を据え、しばらく沈黙が経ってからやっと口を開けた柳下。
「どうやらちょっと時間がかかるようだな」




