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第四戦 プランB(12)

柳下の傍に近付き、しゃがんで相手と同じ視線の高さを取る僕。

「何ができるのかわからないけど、おまえの部員として、ちょっと違う方法で協力できるかもよ」

「……違う方法?」

「男と女で手伝う方法は違うんだ。まあ、僕だったらな」

「……フン、ずうずうしい言葉だな。芸音を止められなかったくせに……芸音を……芸音を……」

益々声がせわしなくなり、喘いでる柳下が不意に全身をぶるぶると震わせる。

「戦嵐……手伝ってくれ……もうどうすればいいかわからねえよ……」

無力さっていう桎梏は、もうしっかりその体に巻き付いていた。

イメージの中にあの強気な部長は、こんなに不安そうな一面を持ってるなんて。

ライオンが猛々しいのは当たり前だ。本当に人をショックにさせるのは尻尾が垂れて体躯をまるめるライオンだ。

もし他の人に柳下の今の様子を見せたら、戦略部がばらばらになりかねない。

「リーダーとして、どうすればいいかわからないなんて言っちゃいけない」

「……えっ?」

その驚きの顔に目をやり、僕がさっきの厳しい表情を抑えた。

「これは母が言ってくれたんだ。母の本を何冊も読んだおまえはマジでその中身を理解してるかどうか知りたいけど」

「おっ……俺は……」

「母の影響を受けたから男性の真似をしようとするわけか」

数秒だけかもしれないけど、時が凍結されたのを感じた。

無駄に遠方の夜景を見てる柳下、ようやくそっと首を横に振った。

「マイスターの見方もその中の一つだけど、こうさせた本当の原因は芸音だ」

前回彼女がこのような口振りで話したのは、図書館で芸音のことを言及する時のことだと覚えてる。

それなのに、寂しさと切なさ以外、今回のは明らかに申し訳ない気持ちも添えてた。

「昔、俺を守ってたやつは芸音じゃなく、芸音の後見人だった」

芸音の後見人?この前芸音が言ってたあの娘を連れて軍情報部第6課へ見学に行った人のことか。

「芸音は大体五歳の頃、あの人に引き取られて育てられた。血縁関係はねえけど、芸音にとってあの人は家族のようだ。俺がまだ学校に行ってない時、芸音の後見人が俺の護衛を担当してて、元々あの人は両親のボディーガードだったから、それがきっかけで芸音と知り合った。でもその後……」

宛もねっとりとしてあまりよくないものがのどに詰まったように、声が出せない柳下が間をとってからその妨げを取り除いた。

「俺高校に入る頃、ヘプタ・エックスの連中に家の隠れ処が発見されちまった。やつらがアサシンを送り、家を滅ぼそうとした。結局俺は無事に逃げたが、芸音の後見人は……」

「うまく逃れなかった?」

「……そう、俺を守るために犠牲になった。両親も同じだ」

ぎゅっと唇を噛み、その頷く力は内心の悔しさを語る。

やはりヘプタ・エックスの仕業だ。このストーカーらを操る黒幕は最初Rが言ってた柳下を狙う国際犯罪集団のことに違いないんだ。

僕のような実の両親に会った記憶がないやつと比べ、紛うことなく柳下の過去はもっと重いものだ。

「それから、芸音が俺を守る仕事を引き継いだ。Rは芸音の後見人の友達なので、その事を知ってからこのどんな国にも属さない学校に転校して、新たな身分で生活することをアドバイスしてくれたんだ。ヘプタ・エックスがこの学校を侵犯しようとしねえか保証できねえけど、せめてRと芸音の守りでどうにか避難所を手に入れたんだ」

だから柳下誠という身分も生きるためのカムフラージュってわけか。

多少相手の背景を把握してるつもりだけど、今目の前の少女のことをまったくわかってないような気がする。

一人はただ意外を経てこの学校に転校してきた。もう一人は暗殺を避けるためにこの学校に隠れた。柳下の状況は僕と本質的には全然違うから、同じ基準で評判できない。

どうして柳下とご家族は狙われてたのか、以前芸音が話した「あるもめごとに巻き込まれた」って話しでしか推測できないし、今聞いてる場合じゃない。

「俺の護衛を引き継いで以来、芸音がそのツインテールを括る状況が現れ、さらに俺のことをユアハイネスと呼び始めた。芸音は距離をおいたつもりがないかもしれねぇけど、きっと深刻な打撃を受けて、あんな風になったに違いねえ」

頭を上げて目線を合わせる柳下、その目から強烈な意志が溢れてくるのが感じられた。

「だから人に守られ続けるなんてもう要らねえ、俺の護衛で命を落とすなんて嫌だ!俺は男になるんだ!力を持つ男になるんだ!一人前の男になるんだ!」

これこそその理由だ。

これこそ彼女が自分を男に偽る本当の理由である。

これこそ、この前ずっと彼女の護衛にするのを抵抗する真の理由ということだ。

相手の口から聞いた真実で、芸音がツインテールにする原因である「過去」は、今やっと明らかになった。

全てを一気に吐き出すと、柳下はまた落ち込んだ。

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